表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/8

2.女子高生 p.2

 私は頭を振り、小さく息と吐くと、気を取り直して、運転席へと乗り込んだ。


「どちらまで行きましょうか?」


 後部座席へと振り返り、そう声をかけると、ご婦人は、行先の書かれたメモを渡してきた。


「これから、孫の結婚式でね。結婚式場までお願いしたいの。でも、式場の名前がよく分からなくて。そこへ行って下さる?」


 メモへ目を落とすと、式場の名前と案内図が印刷されていた。ここからだと少し距離があるが、最近新しくできた結婚式場で、人気があるのか、これまでにも何度か乗客を乗せたことがあった。


 式場の最寄り駅は、もう少し先だが、そこはあまり、大きな駅ではなく、タクシーを捕まえるには、少々不便な場所なので、タクシーを利用しようと思えば、多少遠くても、こちらの駅から乗車した方が良いのだろう。


「かしこまりました」


 目的地はわかっていたが、念のためカーナビをセットしてから、メモをご婦人へと返す。それから、シートベルトをカチリと嵌めると、ミラーで安全確認をしてから、私はゆっくりと車を発進させた。


 最徐行で駅のロータリーを抜け、大通りに出ると私は前を向いたまま、バックミラー越しにご婦人へと声をかける。


「お孫さん、ご結婚なんですね。おめでとうございます」

「ふふ。ありがとう。もう、急に式場が決まったとかで、連絡が来たから、困っちゃったわ。私にも都合があるのに……」


 乗客の中には、無駄に話しかけられるのを嫌う人もいるので、普段は、極力話しかけないようにしているのだが、慶事と聞いたからには、お祝いの言葉くらいと思い、声をかければ、思いがけず、しばらくご婦人の愚痴を聞くことになった。


「……それでね、何とか予定を調節して、こうして来たわけなの。でも、朝早くから動いたから、少し疲れてしまったわ。しばらく、眠ってもいいかしら?」

「ああ。はい。お休みください。あと20分程かと思いますが、到着しましたら、お声をかけさせていただきますので」


 ミラー越しにご婦人が目を閉じたのを確認して、私は、ゆったりとした気持ちでハンドルを握り直すと、軽く車窓へ視線を流しつつ、車を走らせる。


 窓の向こう側では、何気ない風景がゆったりと流れていく。


 ベビーカーを押す人や、友達同士で楽しそうに話しながら歩く人、その間をすり抜けるようにして自転車が走り抜けて行ったり、慌ただしそうに懸命に走っている人がいる。


 そういえば、あの女子高生の膝の怪我は大丈夫だっただろうか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ