校外探索第2日 - 新しき者との出会い
探索2日目。食糧調達を兼ねて近くのスーパーから食糧を盗っていく。ここからは何も盗られていないらしく、あの日のまま時間が止まっている。そして更に西に進むと、十数人ほどの集まりが見えた。急いで本隊を脇道に隠し、偵察役3人を徒歩で向かわせた。すると向こうも気付いたらしいが、そのまま無視されたという。急ぎ偵察役を自転車に乗せ、追いかけさせる。そしてこちらに情報を提供してくれるよう要請して貰った。すると拒絶されたので、総勢150人の武装銀輪隊で威圧する事とした。いざ出会ってみると、相手は13人、こちらの十分の一の人数だ。同年代らしく見える。本拠地は?と訊くと学校を指した。どうやら我々と似たような経緯らしいが、向こうには教員も居た。どうやら地域住民と共に籠城戦に成功した後、元の生活を取り戻しつつあったが、そこにムツデが大量にやってきて大量殺戮沙汰となり、結局また籠城生活になっているらしい。では何故君達が外に?と訊くと、ムツデが観測できないために偵察として放たれた部隊らしい。ゾンビによる被害は殆ど無く、死者の殆どはムツデによるものだという。するとそこにムツデの大群が現れた。約30体は居るだろう。1体なら倒せるが、こんなに居ては倒せない。取り敢えず彼ら偵察部隊の本拠地まで案内して貰った。自転車ならギリギリ逃げ切れる。本拠地はすっかり城塞化されていた。校門には車を置き、簡易長槍などで応戦できる程度ではあった。しかし火薬を用いるという考えは無かったようで、防戦一方であったらしい。しかし彼らは彼らで火炎放射器を開発し、顔の部分を焼く事で無力化に成功していた。彼らはこれをヤポーニャの火と呼んでいた。かつてビザンツ帝国がイスラム勢力を掃った火炎放射器・ギリシャの火に対応して「日本」をギリシャ語で呼んでみたらしい。謎のセンスだ。一方でこちらはムツデ―と仮称している件の怪物、彼らはクロイヌと呼んでいる―の倒し方を説明し、実際にニトログリセリンキットを見せると、何人かがやってきて原理の説明を求めた。これを再現するらしい。しかしこれはあくまで簡易地雷のようなもの。設置しなければ使えないという点では使用は難しい。実用面上の苦難を説明すると、手榴弾の設計を行う予定らしい。しかしどういうものを。そう思っていると、考えているのはダイナマイトであった。粘土が無い、と我が校での籠城時は言っていたが、ここには粘土があるらしい。そうして出来上がったダイナマイトの導火線に火を点け、校外に迫るムツデの足許に向かって放り投げた。すると爆音とともに砕け散る。導火線が若干長過ぎたようにも感じたが、短過ぎるよりはこのくらいが丁度だろう。彼らが無力化した何体かのムツデの四肢を何とか切り落とし、共同で解剖する事とした。やはり全て、首には紅い宝石のようなものが埋まっている。他についてはよく分からないが、これを取り除いた瞬間動かなくなる事からも、エネルギー源ではないかという仮説が立った。逆にこれを付ければ、既に脳をグチャグチャにしていても、最初にピクつくのだ。しかし心臓でも脳でもない「エネルギー源」があるなら、本来食事は必要無い筈だ。これを放った者はどういう意図を持っていたのか。そしてこれが何故引き起こされた「人災」なのか。この2つの謎を共有した。
結局この日はこの学校に泊まらせて貰った。かなりムツデに殺られたらしく、新兵器ダイナマイトによって安寧を手に入れたとして大騒ぎであった。拠点を探していたのだからここでも良かったのだが、食糧をここに頼るというのも面目が立たないため、必要な時に供給して貰う、いわば寄港地の扱いにさせて貰った。こうして明日からの行き先を検討していると、北の方から火が上がっているように見える。それは何かと訊くと、彼らの火炎放射器・ヤポーニャの火を応用して北方戦線を構築し、久万川北岸を守っているらしい。となると陥落したのは中心市街地だけか。そう思っていたが、少なくとも隣県も同じような状況らしい。インターネットが不通となったのはあの光柱の出現とほぼ同時だったらしく、北の山地を越えてきた人々がそう言っていたらしい。つまり、同じような惨劇が他の県でも繰り広げられているらしい。この学校にはマッドサイエンティストが居るらしい。その名もD。ヤツデの四肢をもぐと言い出したり、頭だけ焼けば良いという方法を発案したりした英雄らしい。今は無力化したヤツデに様々な実験を施し、研究結果を発表しているという。