手掛かりの発見
食糧調達の日。迎撃用にニトログリセリンセットを持たせ、食糧部隊が出撃する。使い方が分からないと話にならないので、経験者である我々のうち私を含め何人かが同伴した。最も近いスーパーにはもう既に殆どのものが無い。恐らく誰かが取っていったのだろう。だから今回は更に南のスーパーに向かう。徒歩では少し遠いので、自転車で向かう。銀輪部隊だ。銀輪化による機動力向上はかなりのもので、業務用スーパーから多くのものを持ち出せた。幸か不幸か、誰も居なかった。この町にはもう殆ど生存者は居ないのだろうか。それともどこかに逃れているのだろうか。帰路、またムツデと出会った。どうやらこいつは1体だけでなく複数居るらしい。銀輪の機動力なら逃げ切れるのだが、サンプルが欲しいと言われている以上、死なない程度に戦う。先に食糧部隊の一部に全ての食糧を任せて迂回帰還させ、残りの5人で倒す。流石に2体以上は相手にしたくないので、監視役を2人。そして準備役は私とAがやり、オトリ役が走り去る。ムツデは人並みに足が速い。つまり走るのをやめれば、もしくは近道をされれば殺られる。オトリ役は準備地点が準備し終わるまで、そこを通らずに追われ続ける必要がある。準備が終わってオトリ役に合図を送る。同じようにはいかないかもしれないので、すぐに自転車に乗って退避し、逃走準備をする。轟音が響く。それと同時にムツデが砕け散る。成功だ。残骸を自転車のカゴに載せ、帰還する。まだ2度目ではあるが、手慣れているように見えたらしい。慣れた頃が危険だから次からはやりたくない。そう思いながらも科学部まで持っていく。するとこのムツデの特徴が掴めてきた。首筋にまたしても紅い石があったのだ。全く同じ形であったため、埋葬したものを掘り返して顕微鏡で調べると、観察できる限りは同じものだという。しかし何故。何かの連絡装置だろうか。だとするとマズイのだが、それよりも重要な事は、明らかに人為の痕が見られる事だ。つまりこれは人災だと改めて証明されたようなものだ。しかし一体何故?この石は取り敢えず生徒会室に置き、観察を続ける事とした。生体エネルギーを動力源とするなら、ムツデの体から切り離した時点でもう大丈夫だ。しかし鉱石ラジオのように電波に反応されると困るので、気休め程度にアルミホイルで包んで保管した。