プロローグ 「誓った思い」
初投稿です。よろしくお願いします。
アステラ王国東部にある小さな村、リューイット村。
そこで暮らす二人の子供、アレンとリリア。
アレンは父親譲りの黒い柔らかな髪と母親譲りの蒼く優し気な瞳をもつ同世代から見ると小柄な少年。
誰にでも親切で面倒見のいいアレンは村の大人や年下の子供たちからも人気であった。
リリアは母親譲りの翠眼と村で唯一の金色の髪をもつ少女。
村では、リリアのことを奇跡の子と呼ぶ声も多く、多くの人から祝福されていた。
しかし、リリアは非常に人見知りであまり多くの人と関わろうとはしなかった。
小さな村では、同い年の子供も多くなく、家が隣同士である同い年の二人は当然幼馴染の関係にあった。
リリアの人見知りも相まって、村一番の仲良しであった。
子供たちで遊ぶ時、二人はいつも一緒に行動し、周りから夫婦とはやしたてられることも多かった。
そんな二人の関係に転機が訪れたのは、二人が10歳を迎える歳の秋であった。
15歳で成人とされ、結婚する人もいる世界で10代前半は一番異性を意識する年頃なのかもしれない。
子供たちの中でガキ大将のような立場にある少年は数年で成人を迎える。
そんな彼が異性を意識するのは当然で、中でも村一番の美少女リリアにご執心であった。
彼は遊ぶたびにリリアをよくからかっていた。
常にアレンが表に立って、リリアを守っていたものの、我慢の限界、リリアは泣きながら村の外れへと駆け出していった。
冬越しに備え、多くの獣たちが食料を蓄えるため狩に励む。
この時期は収穫していない作物や家畜が狙われるため、大人たちは警備を厳戒にし、子供たちは大人の目の届く範囲にいるよう言われる。
アレンはリリアを連れ戻そうと追いかけ、捕まえた。
村の外れにいたのは、ほんの一瞬。
その一瞬で、不幸なことに出会ってしまった。
冬越しのために、山から降りてきた一匹の狼に。
今までも狩をしてきていたのか、大きく腹を膨らませており、それでもまだ足らないとばかりによだれを垂らしながら、二人を瞳に捉えていた。
アレンはリリアを連れて後退りしようとしたが、リリアは足がすくんで動かなかった。
そこからのアレンの行動は早かった。
「誰か!!助けて!!」
大声で叫びながら、自身が囮になるように狼に向かって駆け出した。
狼はわざわざ自分から獲物がやってきたと嬉しそうに口を開けながら、アレンに飛びついた。
普通であれば、子供一人が狼に立ち向かえるわけがなかった。
リリアのように立ちすくみ、食われるのを待つだけだっただろう。
しかし、そうはならなかった。
色々な要因があるだろうが、大きなものはふたつ。
ひとつは、狩を終え大きくなったお腹が狼の動きを鈍らせたこと。
もうひとつは、アレンが戦闘において天性の才をもっていたこと。
アレンは飛びかかる狼の横に思い切り飛び込むと同時に、遊びで使っていた麻の縄を首に引っ掛ける。
その拍子に、左腕を切り裂かれ、顔をしかめるも、縄は決して離さない。
狼自身の飛びかかる勢いに加え、子供一人分の飛びかかる勢いに首を閉められる狼。
麻縄に引っ張られ、ひっくり返る狼。
奇跡的に生じた大きな隙に、アレンは狼が起き上がる前に、リリアから引き離すために、思いっきり狼を引きずる。
アレンは無我夢中だった。
リリアを守るために一生懸命だった。
そんな時、村から声が聞こえてきた。
「大丈夫か?!」
遠くから村の大人たちの声が聞こえてくる。
大人たちの気配を察知した狼は山へと逃げ帰る。
大人たちが二人に駆け寄ると二人は緊張の糸が切れたのか、抱き合うと大きな声で泣き出した。
この後、二人は村中に心配を掛けたということで、当然叱られた。
その夜、リリアは今日の出来事がまだ頭から離れないからか、アレンと二人で寝ていた。
村中が寝静まる中、未だに寝付けない二人は月明かりに照らされながら、見つめ合っていた。
「アレン、今日は助けてくれてありがとう」
「気にしなくていいよ」
「アレンは私をいつも助けてくれる。でも、私はアレンに迷惑をかけてばかり」
「いいって、妹みたいなもんだし。兄ちゃんに頼るのは当然だって」
「でも・・・・・・」
「それにこの腕の傷を治してくれただろ。それで十分」
「うん・・・・・・」
「俺はこれからもずっとお前を守るよ。大事な家族だからね。もし、リリアも同じ気持ちなら俺を支えてほしい」
「うん。支える。あなたがどんな怪我をしても治してみせる」
二人は小指を絡めると
「「一生の約束」」
世界から見たら小さな村の小さな出来事。
それでも彼らにとっては色褪せない大切な思い出だった。