悪役令嬢とヒロインの間違い探し【ヒロイン版】
これは、【悪役令嬢とヒロインの間違い探し】のヒロイン版なので、本編のほうも見ていただけると、より理解が深まるかと思います。
見なくても、作品としては成り立ちます
ヒロインに転生した!
しかも、あの乙女ゲーム『四つ葉のクローバー』のヒロインに!
ゲーム通り、私は学園に転入し、多くの男性を虜にした。けれど、私が狙うのは、第二王子!
ゲームでは、第一王子と第二王子しかプレイしてなかった。もともとは第一王子が好きだったけれど、プレイしてみて第二王子の方が好きになった。
あのさらさらの金髪!ブルーの瞳!優しくて甘いマスク!全てが私のタイプだったの!
だから、私は彼を攻略することに決めた。
私には友達がいらなかったから、誰の助けももらわず、男子達と共に生活することにした。
そして、私の敵はあの悪役令嬢、ローズ・リリアン。私は、悪役令嬢を見つけては何かやられるだろうとびくびくしながら過ごして気付く。
あれ?悪役令嬢が何もしてこない。
ダメ、それはダメ!出会いイベントは確かにできた。あの庭で、第二王子の名前を呼んで、道案内してもらったもん。
悪役令嬢が何かしてくれないと、好感度が上がらないじゃない!
そこからは、もう、色んなことを仕組んだ。まずは、私は無理やり彼女のそばで池に落ち、彼女が嫌がらせをしてきたと第二王子に報告した。
「ローズがやったの?」
「はい‥‥‥。近くを通ったら、話したこともないのに、いきなり池に突き落とされて。周りの友達の方々と私を笑いながら通り過ぎて行ったのです。」
「そうなんだ。」
「ライヤ様、でも、ローズさんには伝えないで下さい。彼女も思うことがあるのだと思うので。」
本当は、真実を確かめられたくないだけだけど。
「そうだね。」
そのあとはもちろん、男子共にローズが嫌がらせをしたという嘘の噂を流した。
男子達は良いよね。何にも知らずに味方になってくれるんだもの。
私は、男子の味方を少しでも多くするため、第二王子のことが好きなんて言おうとも思わなかった。第二王子が好きなんて言ったら、好意を持って接してくれる男子が減っちゃうし。
そんな思考が馬鹿げたことに繋がるとは、思ってもいなかった。
「ライヤ様。あの、私、ライヤ様。私、ライヤ様のことを愛しています!」
好感度が充分に上がっているだろう時に、私はゲームのシナリオと同じ、学園の庭で告白をした。卒業パーティーの前に告白しないと、悪役令嬢を断罪できないしね~。
もちろん、彼の返事は
「嬉しいよ。」
という言葉だった。それは、ゲームと同じセリフで、それを言われた瞬間、私の心は舞い上がった。
やっぱり、ここは私の世界だわ!
「あの、私。ライヤ様からドレスを贈られたいです。」
もちろん、ゲームではライヤ様からドレスを贈ってもらえることなんてなかったけれど、これくらいなら、あんまりゲームのシナリオとは狂わないでしょう?
「もちろん、じゃあ、ライヤ・カッセンのドレスを君に贈るよ。」
少し今の言い方に違和感を覚えたけれど、私は何も気にせず、はい、と答えた。
思えば私、この国のことを全然しらないなぁ。王妃教育もやらないといけなくなるだろうし、せめて卒業パーティーが終わったら4人の王子の名前くらい覚えないと。
まずは、ライヤ・カッセン王子でしょ~?
そして、えぇと、随分前にプレイしすぎて第一王子の名前を忘れちゃうなんて。一番プレイしてたのになぁ。
私はその日、何も考えずに眠りについた。
もし、その時点で誤りに気付いたのなら、まだ取り返しがついたかもしれないのに。
───卒業パーティー当日
「おはようございます。お嬢様。」
侍女のレイナが私を起こしてくれる。
「第二王子からドレスが届いています。」
「あぁ、ありがとう。優しいよね、ライヤ様って。」
「?」
「なんでもないわ。」
レイナが取り出したのは、ライヤ様の髪と同じ金色のドレスだった。
やっぱり、殿下の独占欲がドレスに表れるものね。私、愛されてるわ~。
「お嬢様は、ライヤ殿下のことが好きなのですか?」
「そう。だってかっこいいし。」
「そうですね。ライヤ殿下はハヴィー殿下とは異なるタイプですね。」
そうなの、第一王子と第二王子は同じ血統とはいえ、タイプが全然違う。私は、俺様よりも優しい王子に惹かれたのだけれど。
「では、行ってくるわね。」
「行ってらっしゃいませ。」
会場に着くと、ブルーの綺麗なドレスを纏った悪役令嬢、ローズがいた。
なんか哀れに思えてくるわ。
私が彼の髪のドレスを贈られたのに比べ、彼女には瞳の色なんて。そんなにも思われていなかったのね。
けれど、私は最後のとどめを刺す。
「ローズ様は、彼の瞳の色のドレスなのですね。私にも、彼から贈られてきたのです。なんと、これからの流行のために、髪の色なのだと。」
彼はもう、私のものになるのよ。
けれど、彼女は、あまり良い反応を見せなかった。特に気にしていない様子というか。ムカつくけど、後で後悔するのを見るのは楽しみだわ。
そして、卒業パーティーの途中でライヤ殿下は舞台に立って言う。
「皆、今日は大きな発表があるんだ。」
来たわ。断罪の時間!
楽しみで、胸が高鳴ってくる。
彼は、ローズを舞台に上がらせると、言う。
「私は、今日までローズ・リリアンと婚約してきた。それも今日で婚約をやめようと思う。」
さあ、くるわ!
「そして私は、ローズと3日後、結婚しようと思う。」
・・・は?
周りの人達も驚いている。
恐らく、私と婚約するものだと思っていた人が多いのだろう。
私は、頭にカチンと来て、殿下の前に出る。
「待ってください!!殿下!私は、彼女にいじめられてきました。それなのに、彼女を正妻にするなんて、反対です!」
思ったことが、口にしてするすると出る。
私の言葉に、男子達も味方してくれる。
そうよ、私が正しいの!
「ほぅ。私はその証拠がないと信じられない。」
「なぜ!?私を愛してくれていたのではないの!?」
「なぜそう勘違いしたのかな?」
「だって、あなたは、私が名前を呼んだ後愛していますって言ったら、嬉しいよ、と言ってくれたではないですか。」
「言ったよ。
じゃあ、もう一度言ってくれるかな?」
私は、やっぱり私のことを選んでくれるつもりだったんだ、と思い直す。
そしてはっきり、大声で言った。
「ライヤ・カッセン殿下!私はあなたを愛しています!」
会場中がしんと静まる。
ん?なんで皆、そんなにも変な顔をしているの?
「嬉しいよ。兄上のことをこんなにも熱烈に愛してくれるなんて。」
「え?」
何を言っているの?兄上?どういうこと?
「私は、ライヤ・カッセンではないからね。私の名前を言ってくれるかな、ローズ。」
「ハヴィー・カッセン殿下ですね。」
「兄上。どうやら、彼女が兄上のことを愛してくれるそうです。」
そうして、私の前には第一王子が表れる。
そうだ、思い出した!彼がライヤ・カッセン王子!第二王子は、ハヴィー・カッセン王子!
私は、さあぁ、と血の気が引いていくのを感じ取った。そして、気付いたらその場に座り込んでいた。
「ありがたいな。だが、俺には愛しい愛しい婚約者がいるんだ。お前の愛には応えられない。すまないな。」
違うわ!始めから俺様王子を呼んでない!
「そして、シュシュ嬢。あなたは、私の知らないところで色々やらかしてくれたそうだね。調べはついているんだ。じっくり話を聞かせて貰うよ。
衛兵。連れていけ。」
なんで、なんで、なんで
「なんで、なんで悪役令嬢のあんたが選ばれるのよぉぉっっ!」
私はそのまま、衛兵に連れていかれ、牢に入れられた。
───数年後
私の家は、爵位を剥奪され、ふらふらと町を出歩いていた。
私の今から行くところには、友人がいる。
「あ、シュシュ!いらっしゃい!」
顔は整ってないし、身分も高くない。
けれど、私の境遇を知っても優しく接してくれた彼。
私は、来年この人と結婚する約束をしている。
イケメンではないけれど、私はとても幸せ。
この世界は、私だけの世界ではない。
だけれど、私の幸せを求めることはできる。
世の中はこんなにも優しい人々がいるんだな。
こんなことになってしまったけれど、別に悪くはない。
朝の新聞がそこに置いてあり、私は、適当につかんで読む。
【ローズ様、第4王子を出産】
「ぶっ!」
「ちょっと、シュシュ。汚いよ。」
「あぁ、ごめんごめん。」
第4王子って、まだあれから三年ほどしか経ってないじゃない。あの黒王子、ローズにどれだけ発情してるのよ。
「別に、謝りはしないけど、応援はしてあげるわ。ローズ。」
幸せになりなさいよ。
私はあんたよりもっと幸せになってやるんだから。
「シュシュ?」
目の前の彼が、私を心配そうに見る。
「シュシュ?大丈夫?」
「大好きよ。」
「えっ!いきなり!?
お、俺もだよ。」
あぁ、幸せだわ。
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