笑われる
四十五分って長いなー……四十五分ってこんなに長かったのかよ……
まだあと二回もあるんだよなぁ……これが……
「……はぁぁぁっ……はぁぁぁっ……はぁぁぁっ……」
「……さっきよりも、増してキツそうね」
「……はぁっ……だれのっ……はぁっ……せいだとっ……」
「アンタの体力が、足りないせいじゃない?」
……その通り過ぎてなんも言えねぇ……
体力だ、体力さえあれば、こんな事には……いや、みぞおち殴られてるわ。
「それと、さっきの発言セクハラだから」
「……お前っ……俺を……殴った上で……それ言う……?」
「それとこれとは話が別」
「なんだ……謝れば、良いのか……? それとも、慰めか……? 励ましか……?」
「……もしかして喧嘩売ってる……? 今の状態なら、絶対私が勝つよ?」
売ってない、全然売ってないから、拳構えるの止めて貰って良い?
今の状態で喰らったらマジで洒落になんねぇ……口から粉砂糖パスタが出て来るぞ。
「……褒めたのになぁ…………」
「……何? 貧乳はステータスとでも言いたいの? アンタロリコンなの? 私、性行為NGだから」
貧乳って自ら認めたぞコイツ。
それどころか、自身をロリ認定したぞ。墓穴掘ってる自覚あんのかなぁ。
「……顔だよ、顔……顔の話だ。お前、適当に笑ってれば、クラスの男子とかが寄って来るタイプだろ。人生イージーモードって顔だ」
「…………イージーだったら、こんな所に居ないよ…………」
「……あん?」
「アンタはハードを通り越して、クレイジーモードに入りそうねって言ったの。とても堅気には見えない」
「……ほっとけ」
ベリーハードだったともよ。
お前ぐらいの歳の奴らにヒソヒソされ続けたとも。
俺は至極真っ当に、真面目に生きて来たって言うのに……世界はおかしいぜ。
……おかしくなってるんだったな……世界。洒落になんねぇわ。
「狂人によって世界がおかしくなったから、俺は怖がられずにJKから話しかけられる様になったのか……世界がおかしくならないと話しかけられないとか、悲し過ぎる……」
「…………狂人……? 何の話してるの……?」
「……は? 善性ウイルスを世界中にばら撒いた、頭のおかしい奴が居るんだろ?」
「――――ぷ、ぷぷぷ………あははははっ! 想像力豊か過ぎっ! なに? 悪の組織とでも戦うの~? あははははっ!」
え………………え? 違うの?
腹抱えてまで笑う事か……? なんか恥ずかしくなって来たんだけど……
しかし……癪だが、笑うと可愛いなコイツ……中身はクソガキの癖に。
「――はぁ……お腹痛い……そもそも、充満してるウイルスにばら撒く方が耐えれる訳ないじゃん」
「それは……ウイルスって言うからには、抗体とかあるんじゃねぇのか……?」
「それは知らないけど……根本から違うんだよ。この施設の管理者は人間じゃない」
「――は?」
「AIの搭載された人型ロボット……つまり世界は――――AIに乗っ取られたんだよ」
…………………………マジで?
「私達はみんなロボットに捕まって、この監獄に来たけど……アンタの時は違ったの?」
「………………そう言えば業務的な話し方だった様な……」
「…………ぷぷ……」
「ち、違う! 周りが薄気味悪い奴ばっかで、気が動転してたんだよ!」
「……そうして、今はキチガイの森の中な訳ね」
「……そうだな」
薄気味悪い外に比べると、キチガイの森の方が落ち着ける気がする、不思議。
AI……AIかぁ……
AIは何を思って善性ウイルスなんてばら撒こうと思ったんだろうな……
人間から悪性を排除すべきだと思われたんだろうか……
監獄で暮らす囚人達を見て、脱獄計画を知って、AIは何を思うんだろうか……
何でも良いが、敵が人では無くロボットだと言うのであれば……少し気が楽だな。