諭される
粉チーズと思ってかなりの量振り掛けちまったじゃねぇか……どうすんだこれ……
「普通に食事して、普通に満足してたら、貴方出所コースに入るわよぅ?」
「――っ!」
「何時いかなる時も悪意を忘れては駄目よ。負の感情……怒り、悲しみ、妬み、憎しみ……何でも良いわ、一つでも持っておきなさい。こういった他人へのちょっとした悪戯でも良いのよぅ、それすら難しいなら血の気の多い男共と殴り合いでもしたらいいわ」
……心弾ませてる場合じゃ無かったな……危うく人形に近付く所だったのか。
「……すみません、助かりました」
「あらぁ、律儀なのね。その性格は少し向いてないかしら……怒りを溜めるぐらいの方が生き残れるわよ。私は可愛い悪戯程度だけど、他は互いに生き残る為だからって過激な事をする子も多いわ。お互いに嫌い合って喧嘩するなんてしょっちゅうよぅ?」
俺は可愛い悪戯で済ませる気は無いですけどね、粉砂糖。
助けてくれた事は感謝するが、食べ物の恨みは忘れない質なんだよ。
「……良い目ね。案外大丈夫そうかしらぁ? 貴方名前は?」
「……光貴だ」
「私、志保って言うの。よろしくねぇ~」
「……よろしくしたくねぇ……」
「あっはっはっは! 性欲処理の受付もやってるから、私にお世話になるかもしれないわよぉ?」
性欲処理……? もしかして隆司さんが言ってた女を抱いても良いって奴か……?
「詳しく聞いて無いのねぇ……女性の囚人は性行為オーケーの人と、そうじゃない人に別れてるの。男性はオーケーの人に申し込んで性行為に及ぶって訳……もちろん女性側から男性に申し込む事もあるわ。中には一部の人のみオーケーって子も居るけど、私は全員オーケーにしているの」
つまりビッチか……いやでもこのおっぱいは捨てがたい。
顔も綺麗だしやりたい男は多そうだな。
「もし女に興味が無いならぁ、この剛毅に頼みなさい。受けも責めもどっちもしてくれるわよぅ?」
「んぐんぐ……んん! 何時でも待ってるわぁよん」
「け、結構です……」
「そうねぇ~。お兄さんずっと私の胸見てるものねぇ~」
ベベベベ、別におっぱい見てねぇし! 言いがかりは止して貰いたい!
違う! 俺は悪くない! 視線を向けざるを得ない程大きいおっぱいが悪い!
「誰を指名するのも自由だけど……相手は道具だと常に思う事ね」
「……道具……」
「本気で恋しちゃダメよ、快楽に溺れちゃダメよ、それが原因で出所する事だってあるんだから」
「もぐもぐ……んん! したい事を色々出来る環境ではあるけれどぉ、したく無い事を見つける事も大事だったりするのよぉん。したく無い事をしてウイルスに抗い、したい事をしてストレスを発散する、このバランスを保つのが大切だわぁん。しほちーなんかわぁホントは同性愛者なのに、男に抱かれる事でバランスをとってるのよぉん」
「したい側がいて、したくない事をするべき側が居た……利害が一致しただけよ……貴方は出所するのと剛毅に抱かる二択ならどっちを選ぶぅ?」
「……他にしたく無い事を探します」
この美人おっぱい、レズだったのか……ビッチとか思ってごめん、ウイルスに抗う為だったのか。
したい事が出来る環境って言うのがまた厄介だな……したい事やりたいのが人間だし、したくねぇ事ばかりしてるとストレスで頭がおかしくなる。
ストレス発散に性行為を選ぶって人は多いんだろうな……三大欲求の一つだし……したく無い事をせずに済むなら、悪意が必要だが、悪意なんて長続きするもんでもねぇしなぁ……喧嘩が絶えないって理由も分かる。
楽なんだ、誰かを嫌い、そいつを叩くのが……俺なんか周り嫌いな奴ばっかだった。
「まあ、程良くしたい事したら良いと思うわよぅ。悪い事してもある程度なら許される環境なんだから、盗賊団に入った気分でいたらいいんじゃないかしらぁ?」
「盗賊団か……言い得て妙だな」