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 目が覚めると俺は牢の中に居た。



「……は?」



 意味が分からん……なんだこれは、夢か……?

 全然理解が追いつかねぇぞ……

 


「――お? 目が覚めたか新人」

「あ? 新人? 何言ってんだテメー……つうかこれ何なんだよっ! なんで牢に入れられてんだよっ!?」

「かっかっかっ! よしよし、悪の消えてない歴とした人間で俺は嬉しいぜ……――歓迎するぜ新人! ようこそ、ヘブンスプリズンへ!!」

「………………」


 

 何言ってんだコイツ……頭おかしいんじゃねぇの……? 中二病煩わせ過ぎてるだろ……

 


「――兄貴、新人が固まっちまってますぜ……やっぱりヘブンスプリズンはダサいですよ。エデンにしましょうって」

「だからなんで二人共天国を表そうとするんだ! 私達は生きてるんだぞ! パラダイスこそが相応しい!」

「……そういう問題じゃないと思うんだけどなぁ……まあ、その方が面白いし良いかぁ」

「……いや、面白くねぇよ。おい、ここは何処なんだ、なんで俺は牢に居れられてるんだ」



 アホしか居ねぇのかよ……状況も理解できねぇし頭痛くなって来たな……

 兄貴と呼ばれた男が俺に近づいて来る……コイツがアホ四人の中でトップなのか……?

 

「新人、お前の名前は?」

「……安城あんじょう光貴みつきだ」

「光貴か。此処に連れて来られる前に、人に不快を与える様な悪い事をしなかったか?」

「…………路上喫煙か? だがその後すぐに踏みつけて火は消したぞ」

「そのタバコちゃんと拾ったか?」

「……ポイ捨てか……? 俺はそんな理由で捕まったって言うのか!?」

「かっかっかっ! そんな理由で捕まる世の中になっちまったんだなーこれが」


 

 はあっ!? ただのポイ捨てで牢に入れられて堪るかよっ!

 

 

「ふっっざぁっけんなぁあああ!!!」

「かっかっかっかっ! 良いぞ! 燃やせ! その悪の心がこのヘブンスプリズンでは必要だ!」

「……はぁっ……はぁっ…………なあ、そのヘブンスプリズンって何なんだ……」



 なんだよ悪の心って……意味が分からん。


 

「君さぁ、今の世の中で薄気味悪さを感じた事なぁい?」

「――っ! 確かに生ぬるくなった奴ばかりで気持ち悪かったが……」

「善性ウイルス……そう呼ばれているウイルスが世界中に蔓延してて、全人類が手を取り合って、争いの無い平和な世界になろうとしてるんだよぅ」

「………………はあ?」



 突拍子がなさ過ぎて信じられない……だが、急に優しくなったネット民、誰にでも挨拶をしていたエキストラ擬きを考えると納得は出来る。

 『――非感染者を発見――』

 ……非感染者ってそういう意味だったのか……?

 

 

「……仮にそうだったとして……何故牢に入れられるんだ……? ウイルスに感染させれば良いだけの話だろ?」

「ウイルス自体はこの牢の中に、外の世界よりも濃く蔓延させられてるぜい」

「私達は善性ウイルスに屈しない選ばれし者……そう! 悪である!」

「つまり、下んねぇウイルスで良い子ちゃんに成れるほど、人が出来て無いろくでなし共の集まりって事だ。光貴含めな」



 ……嬉しくない評価だな……自分が善人だとも思わないけども。

 

 

「この牢は更生プログラムだ。善性ウイルスの蔓延した中で生活させる事で、俺達をお前が見て来た薄気味悪い人形に変える為のな……光有る所に闇がある様に、善があるなら悪もある。悪無き人は善じゃない――無だ、それは人と呼べないだろう?」

「……確かに、あれは人の形をした別のナニカだ」

「だから俺達はこの牢の中で抗い続ける、悪を持ってして俺達が人間であると証明し続ける」

「……言いたい事は分かるが、その先に未来はあるのか……? ずっと牢の中で暮らすのか……?」

「もちろん脱獄を目指しているさ……集団脱獄だ……俺達が閉じ込められるのは、外の人間たちに不快感を思い出させない為の処置だ。即ち悪感情を思い出させる事は出来る! 悪を持って善を叩き潰す、悪逆の限りを働いて世界を元に戻す! 正義は俺達に有ると思わないか?」



 ……悪逆を働く正義って無茶苦茶だな……世界が無茶苦茶だからそうなるのか……?

 悪を名乗るこいつらを信用できるかと言われたら素直にノーだ。本人達も言ってるがとんでもないろくでなしな訳だしな……

 だが、薄気味悪い奴らに比べたらまだ、マシなのかもしれない……五十歩百歩の差では有る気がするけど。

 

 

「――生き難い世界の世直しをしないか? 既に壊れた世界だ、どう壊したって一緒だろう? なら――ど派手に生きたくないか」

「……最悪な誘い文句だな。世界的な犯罪者にならないかって誘われてる訳かよ――――良いぜやってやる……お粗末な結末だけは勘弁してくれよ――」



 あんな人形擬きになると考えるだけでゾッとする。俺は俺として生きて死にたいんだよ。

 俺はこの日――犯罪者の手を取り、極悪になる事を選んだ――

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