絡まれる
ようやく、ようやく四時間に及ぶ労働の時間が終わりを告げた。
もう、へとへとだ……寝たい気持ちもあるが、とりあえず飯が食べたい……一回全部吐き出しちゃってるし。
労働時間以外は自由時間って聞いてるから、何をしてても良い筈だ。
飯だ、飯を食おう。食堂が俺を待っている!!!
「――よう、新入りぃ……ちょっと付き合えよ」
「………………」
ファイティングを取っているマッチョメンに絡まれた……勘弁して欲しい。
剛毅さんほどじゃないけど、鍛え抜かれた筋肉だな……つうかコイツ、ヒャッハーって言いながらつるはし振ってた奴らの内の一人じゃねぇか……
「漢なら! 拳で語り合ってこそだろ! なぁあっ!!!」
いいえ、人間には口が付いてるんだから、言葉で語り合うべきだと思います。
そんな思いも虚しく、問答無用でマッチョメンは殴りかかって来た――
「――おい、こらぁ、茂明ぃ。あからさまに弱そうな坊主に殴りかかってんじゃねぇ」
マッチョメンの拳を俊和さんが片手で受け止めていた……
見た目子悪党なのに、滅茶苦茶かっこいいじゃねぇか俊和さん……!
「テメーが暴れ足りねぇって言うんなら――俺が相手してやるよっ!!」
「ふははははっ! 相手にとって不足なぁし!!!」
殴り合いの喧嘩が始まった……ヒャッハーと叫びながらつるはし振り回していた奴らは、全員観客に回って野次を飛ばしている。
これが日常風景なんだろうか……世紀末だな……
と言うか、俊和さんめっちゃ強いな……マッチョメン相手に圧倒してるぞ、見た目子悪党なのに。
……俺がこれ、最後まで見る必要は無いよな? もう、なんかそういう集まりなんだろうし……
今度は人に見つからない様に食堂に向かおう……新入りってだけで悪目立ちするんだから――――
「――ひひっ、光貴ちゃん今一人ぃー?」
「……一番合いたくない奴に遭遇しちまったよ……」
「えぇー、酷いなぁ」
とりあえず気配無く、背に立つの止めて貰って良い?
首に手を添えられた事、若干のトラウマなんだけど。
「初めてのお仕事で疲れたんじゃなぁい? 僕と一緒にご飯にしょうよぅ」
「……飯は食べるが、お前と一緒じゃ無くても良いよな?」
「一緒でも良いよねぇ?」
嫌だって言ってるんだけど、理解はして貰えないみたい。
というか、絶対にわざとだろコイツ。
「……なんで俺なんだよ……他に飯食う奴居ないの?」
「高英と隆司ちゃんの二人はぁ、脱獄計画に向けて色々動いてる時間だからねぇ……俊和も仲の良いお友達たちと遊んでるからぁ、僕一人なの」
こいつはヒャッハー組では無いって事か……こいつはこいつで変わってると思うけど。
「光貴ちゃんもどうせボッチでしょ~? 一緒に食べようよぅ」
「ぐっ…………分かった……食えば良いんだろ……」
ボッチって言うんじゃねぇ……基本的に孤高なんだよ……




