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貸しつくる

トイレが見えて来たので、急いで駆け込み個室に入る。

 

 

「……うぷっ……おげぇぇ……」



 なんとか間に合ったが、やっぱり胃の中にあったのはパスタだった……夕食は別の物を食べよう……

 

 吐き出して、看守を思い出してまた吐いた。

 志保さんの話を聞いて、嫌な奴に抱かれる事を選んでまで、出所したくないモノだろうかと、内心思っていた部分があった。

 だが、あれは駄目だ……あれは意思を持った生物じゃない……人の形をしたナニカだ。

 

 ああなった人間が元に戻れるかは分からない……もしかしたら此処のウイルス濃度が濃すぎるせいでああなっただけで、無表情になるだけの外なら、悪感情を芽生えさせる事は可能かもしれない……

 脱獄したからって元の世界には戻らないかもしれない……けど、少なくとも、人間と言う生物がAIの家畜に成り下がる未来は、否定したい。

 

 これはもう正義云々じゃねぇ……死よりおぞましいナニカに成り果てるかどうかの話だ。

 

「――ちょっと、終わったんなら早く出て貰って良い?」

「ああ…………ちょっと待て、なんで此処に居る?」

「やっぱり気付いて無いんだ……此処、女性トイレだよ」

「――――――――」

「私が居なきゃ、アンタただの変態だと思われると思うけど、それでも良いなら私戻るよ?」

「ま、待ってくれ! すぐに出る!」


 百人程度しか居ない狭い環境で、女性トイレに侵入する変態だと思われるのは辛すぎるっ!!!

 キチガイや頭おかしいと思われるよりずっと辛い……性的な蔑みはホントに洒落になんねぇ……

 

 

「……酷い顔」

「……ほっとけ……」



 それは表情の話か? それとも素顔の話か? ディスられてないよな……?

 

 幸い他に使用者は居なかった様で、俺が変態認定される事は無かった。

 男性トイレの場所も教えて貰った……女性トイレより奥に入口があったのか……

 

 

「あーあ……休憩時間の半分以上が過ぎちゃった……返してよ、私の十分」

「…………すまなかった。あと助かった……」



 これに関しては完全に迷惑掛けた側だからな……文句は言えん。

 そういう事言われると感謝したくなくなる物だが、今回ばかりは礼を言う。

 

 

「貸し一ね」

「……っ! 何を要求するつもりだ……」

「さー? なんだろうね? その時になったら言うよ」



 ……かなりめんどくさい奴だぞ、これ……

 くそぅ……看守め。いや、この場合状況を作り出したAIを恨むべきか?

 

 

「……体力は付けた方が良いけど、発掘は適当にやった方が良いよ」

「……なんでだ?」

「採れた金属で、こういう施設やロボットが作られてるかもしれないじゃん」


 

 ……なるほど、確かにそうかもしれない……

 俺達の働きが敵の増加に繋がってる可能性か……

 ……だとすれば、他の施設って全部鉱山に建ってる可能性があるのか?

 

 

「東京にマンガンが取れる鉱山なんてあったか……?」

「知らないけど……使われ無くなっただけで、鉱山自体は幾つもあるって隆司さんが言ってたよ」



 鉱山にあるとなれば場所を絞れて、他の監獄探しも少し楽になるな。

 ただ……登山な訳だから、やっぱり体力付ける必要があるな……はぁ……

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