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さっさと魔王を倒します

作者: そら


皆さま、御機嫌よう。


私はカリナ・イグリーヌと申します。



実は私、転生者ですので、前世の記憶がしっかりございます。




前世の私は独身キャリアウーマン・・・と聞こえは良いですが、ただの社畜アラサーでございました。




朝、通勤途中に頭が割れるように痛いと思いましたら、目の前が暗転。

気がつきましたら、今の両親でもあるイグリーヌ夫妻の娘として生まれ変わっておりました。




家は男爵位ですが、騎士家系でございます。


それ故に、幼い頃から女子であるという事は丸々無視され、かの戦で英雄と言われたお祖父様と騎士団団長のお父様から、上の兄2人と一緒に剣の稽古をつけられて参りました。




時には厳しく、時には更に厳しく・・・・




ええ、それはそれは骨が軋むような(物理的に)、それこそ血反吐を吐くくらい(物理的に)の日々でございました。




けれども私は女子。そう、男爵位とはいえ貴族令嬢。




私が7歳の誕生日を迎えた頃、それまで思う所はありましても、お祖父様とお父様のなさる事に一切の口出しをした事のないお祖母様とお母様が突如として猛抗議をなさりました。



簡単に言えば堪忍袋の緒がキレたのでございます。



「ようやく、ようやく女の子が産まれたというのに着飾ってやる事も出来ずにっ!

このままでは良いご縁どころか嫁ぎ先すら見つからなくなってしまうではないですか!!」



「それはそれでいいではないか。騎士になればいいだけの話・・・そのように騒ぐで

「いいかげんになさいませっっ」・・・・はい、ごめんなさい。」



そんなやり取りもありましたが、

「才能は一番ある」

とお祖父様がのたまいやがった・・・いえ、頑なに譲る事なくおっしゃったので、剣の稽古も今までよりは減ったものの、なくなる事はなく、

剣の稽古の時間にあてていた大方の時間は淑女の時間となり、

それはそれで今までを取り戻すべく、血の滲むような(やはり物理的に)日々でございました。





前世より染み付いた社畜精神の私はそんな家族の愛の鞭に耐え、16歳にはどこに出ても恥ずかしくのない立派な淑女にして、お祖父様を上回る剣の使い手(これは家族の中だけの秘密)になったのでございます。



そうしてそんな私が今、なぜここにいるのか。



そう、ここ。




鬱蒼と木々が生い茂る森の中。

うっすらと漂う霧の中。



目の前にいるのは、年若い男女達。




「この森を抜ければ魔王の城に辿り着く。今までより一層気を引き締めろ。」



そう士気を高めるのは勇者。

名はユーリ。18歳。王都から遥か遠くの領地の更に外れにある小さな村の青年でございます。

顔は整っており、社交界デビューの際に見かけた、今世紀No. 1と名高い王太子に匹敵する程の美丈夫。




「何かあれば私が回復魔法で皆さんを治します!

魔王の浄化は任せてください!」



胸の前に両の手で小さな拳をつくり、可愛らしいお顔に気合を入れているのは聖女。

名はサーシャ。16歳。産まれてすぐに教会の前に捨てられいたところ、現代の教皇様に拾われ、聖女教育を幼い頃より受けていた事もあり、皆に平等、慈悲深く、ヘーゼル色の髪色と瞳は神々しささえ感じます。




「城に入ったら私の攻撃魔法と防御魔法で道を開けましょう。」



「俺たちが魔物を抑えている間に、勇者と聖女は魔王のところに行ってくれ。」



「その時は勇者と聖女を頼みましたよ、カリナ。」




そう言って私に目線を送るこのお2人は、王宮魔術師様と近衛騎士様。

アレク・ディスガイア様、イアン・ディスガイア様。

ディスガイア公爵家のご兄弟でいらっしゃいます。

お兄様のアレク様が20歳、イアン様は一つ下の19歳でございます。



お2人ともさすが王宮勤めでいらっしゃいますから、そうして並ばれますとまるで一枚の絵画を観ているよう。




これは青春映画のワンシーンなのかしら、と。

前世の私が申し上げております。



「カリナ?どこか具合でも...」



さすが清廉潔白聖女様。


この魔王討伐の旅は、聖女中心のため、空気よりも存在していなかった私にまで優しくお気遣いくださいます。



「これから魔王城に行くんだぞ!気を引き締めろ!」



イアン様が険しい顔をしていらっしゃいます。


空気と思っていた相手に先程の返事してもらえず、無視という形になり機嫌を損なわれてしまわれたようです。


というか、私の事見えていたのですね。

てっきり空気のように見えていらっしゃらないと思っておりましたのに。



「大丈夫です。少し緊張しているようですわ。」



そう言って、淑女よろしく笑顔を顔に貼り付ける。



まったく緊張などしていないけれど。




「ふん。役に立つかどうかもわからんお前を国王と騎士団団長がどうしてもと言うから連れてきたが、邪魔にだけはなるなよ。」



「イアン様!女性に向かってそんな言い方ひどいです!」




ぷん!っと効果音が聞こえるように、頬を膨らませていらっしゃるお顔も可愛らしいサーシャ。


慌てて、サーシャを取りなすイアン様。




ナニコレ?10代のしゃべり場かよ。


これから魔王倒すんじゃねーの。


どこの青春ドラマかよ。




あぁ、いけませんわね。


前世の私が、脳内で暴言吐き出しましたわ。


なにせ中身はアラサーですからね。


10代のウフフキャッキャッは目が死....コホン、私には眩しいんですの。




そもそも、なぜ私がここにいるのか。


全てはお祖父様とお父様が国王様に、


「俺の孫(娘)すごいんだぜ」自慢を毎日のようにしていたら、


「だったら魔王討伐行っちゃえば?」という軽いノリ的な事で、あれよあれよという間にこの勇者パーティーメンバーに組み込まれてしまわれたからなのでございます。



お祖母様とお母様に、嫁ぎ先が見つからなくなると困るからと、あれ程、剣の事は公言を避けるようきつくきつく言われていたお二人は、旅の出発の朝、どなたか分からない程、お顔の原型が留まっておりませんでした。



胸ヤケを起こしそうなこの青春ドラマの旅の私の精神的ダメージは全て、お祖父様とお父様が原因。



私も家に戻りましたら、お顔の原型留めないだけでは済みませんわよと心に固く誓っております。











そうして溜まりに溜まったストレス解消のごとく魔王を瞬殺したカリナ。


そんな彼女の姿に惚れた、勇者が勇者チート全力で囲おうとしたり、アレクとイアンが公爵家の力で強引に婚約を迫ってきた挙句、カリナを巡って起こした激しい兄弟喧嘩に巻き込んだり、嫉妬にかられて本性を出した聖女に恨まれたりとするのだが。



これはまた別のお話。












恋愛要素欲しかった。無念。

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