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黒龍殺しの付与術師  作者: しきな かいどう
第2部 討伐遠征
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大森林の探索 4

後書きにてお伝えしたいことが……

 日も暮れ、森の中で見付けた大樹の枝に腰をおとす。ここなら地上からの襲撃はない。

 取り敢えず鳥系の魔物に警戒しておけば大丈夫だろう。


「アウラ、見張りをお願い」


 カイリは精霊を呼び出すと早速寝る体勢に入った。


「おいっ」


 カイリにバゼルが待ったを掛ける。


「何?毛布はあるけどいざというとき動きが鈍るから掛けない方がいいよ?」


「そうじゃねぇよ!なんでのんびり寝ようとしてんだよ!マレ…なんちゃらとかいうの倒しに行くんじゃねぇのかよ!?」


「マレプラントね。

 倒しに行くけどその前に体力を少しでも回復させよう。

 あくまでも仮眠を三時間とったら行動する。

 見張りはアウラにまかせるから安心して寝てていいよ。まあ魔物の襲撃があった場合は起きて僕らで対処するけど」


「お前今までそうやって休憩してたのか?」


「じゃなくちゃ身体が持たないよ」


「ちっ」


 バゼルはどこか納得いっていないような顔だ。

 アウラは一瞬バゼルのそんな顔を一瞥して飛び立っていった。


「おい」


「何?」


「あの精霊は戦わないのか?」


「ん?」


「選考会の時もアレ補助魔法みたいなのだけで攻撃はお前がしてただろうが」


「アレじゃなくてアウラね。

 あの娘は攻撃魔法を使えないから」


「精霊って普通術師の代わりに戦わせるもんだろ。

 なんでそんなのと契約してんだよ」


「普通がどうだか分からないけど、まあ色々とね」


「攻撃魔法が覚えられねぇのか?」


「さぁ?みたいだよ」


「みたいだよって……他人事みたいに言うかお前」


「別にアウラに戦ってほしいと思ってる訳じゃないしね。

 本来なら補助を頼まなくていいくらいの余裕を持てればいいんだけど」


「それは別にアイツが望んだわけじゃないんだろ」


「まあそうだけど、戦える者が戦えばいいし、それにアウラに本当は戦う理由もないしね」


「っち、やっぱりお前はいけすかねぇ」


 バゼルはなぜか怒ってそのまま寝てしまった。


 カイリとしては意味が分からなかったが取り敢えず休むことを優先して眠りについた。








 そしてまもなく三時間が経とうという頃、貿易都市の外れの酒場に蒼髪のエルフと虎の獣人の青年がテーブルを囲っていた。


「……おい、くそエルフ」


「急に何?それと人の種族名の頭に変な言葉付けないで!」


「お前、ボトル一本のはずだったよな?なんでテーブルの上に空ボトルが三本も転がってんだ?」


「だってボトル一本で何時間もお店にいたら迷惑じゃない!」


「さも自分が常識人のように言うな!人の金で酒呑んでるやつが言うな!」


 すると入り口に一人の青年が入ってきた。


「あれ?何か聞いたことのある声がすると思ったらお二人ですか。けど二人で呑むなんて珍しい組み合わせですね」


「あ、S級イケメン冒険者だ」

「ルークか」


 入ってきたのは“聖剣の担い手”の二つ名を持つ青年だった。


「サイファーさんこんばんわ、ソフィアさんその呼び方は勘弁してください」


「えー、けど世論の調査では結婚したいイケメン冒険者一位じゃん」


「そんな世論調査聞いたことありませんよ。

 もしかして、そう言ってる人が――」


「ポコナは言ってないわよ?」


「そうですか……」


「なんだ、お前ら話すような知り合いだったか?このグータラエルフはお前らの世代の冒険者と関わりはそんな無かったと思ったけどよ」


「いえ、共通の知人がいまして」


「その子を口説いてるところにあたしが出くわしたってわけ」


「いや、口説いていたわけでは、それより水晶の魔道具なんて持ち出して何かしてるんですか?」


((あ、話題換えに来たな))


 ソフィアとサイファーは同じことを思ったが顔が真っ赤な青年の話題に乗ってあげた。


「ちょっと弟子と不愉快なプラスαの様子を観ていたの」


「おい」


 サイファーがツッコミを入れるがソフィアは無視をする。


「ああ、カイリ君とバゼル君ですか。二人の課題は聞いてますけど、もうすぐ時間切れですよね」


 ルークは窓から外の様子を見る。

 空には丸い月二つが浮かんでおり、間も無く日付が変わろうかという頃。

 あと五時間もすれば太陽が空の役者に入れ代わるだろう。


「今は“休憩”してるみたい。最後の決着前に準備中ってとこね」


「“休憩”に関してはウチの馬鹿のせいだな。あいつが思ったより消耗してやがる」


「バゼル君が?あの森にそこまでの魔物いましたっけ?」


「“マレプランテ”がいるらしい」


 ルークの顔つきが変わる。

 流石S級冒険者でありすぐに異常に気付いた。


「“アレ”は王国よりもずっと南方のダンジョンモンスターですよね。たまたま外に出たしてもこんなところにいていいモノじゃないですね」


「ああ、だから今遠征隊の幹部らが話して王国とギルドの方に報告書を作成している。

 “何があるにせよ”どっちみち俺らは北上していくしかないからな。あとは残された奴らで何とかしてもらうしかない」


「“共和国”が何か仕掛けてくるってことですか」


「かもしれねぇな。あそこは自分から戦争仕掛けといて逆恨みがひでぇからな。情報規制を掛けて国民には王国が戦争を吹っ掛けてきたことにしてやがるし、しまいには共和国上層部が国民から食料を巻き上げて自分たちの食い扶持を確保してそれすら王国に引き渡すから仕方ないって嘘を教えてるしな」


「はぁ、本当にあの国は……。まあそのせいで出入国規制が厳しく貿易も滞って復興が遅れたって話ですもんね」


「まあ実情が知られたら国民が逃げ出すからな」


 キナ臭い流れにサイファーとルークの眉間に思わずシワが寄る。



「おじさーん!ウィスキーボトルもう一本!それと『パリパリウインナーのチーズ焼き』と『酒漬けレーズン』を一皿ずつ!」



 そんな中、ニコニコで追加注文する蒼エルフがいた。


「てめぇ、何また勝手に頼んでんだよ!?」


「いや、何か難しい話してるし」


「いや、理由になってねぇからな」


「あ、イケメン君も何か頼んだら?」


「いや、僕はお酒呑みませんし、夕飯も頂きましたから、そろそろこれで」


「おう、宿に戻るのか?」


「いえ、軽く剣を振ってこようかと」


「真面目だな」


「はは、カイリ君ほどではないですけどね」


「何だ、カイリのボウズのことも知ってんのか?」


「今回の遠征で最年少ですし、何たってあの“蒼エルフ”と“英雄”の弟子で、この遠征では“餓虎”に稽古をつけてもらってますからね。道中の露払いも常に出ますし、夜営の準備や雑用も進んで取り組んでいるんで“同行隊”の方でも評判はいいですよ」


「えへへぇ」


 まるで自分が褒められたかのように喜ぶソフィア。


「けど、それとは引き換えに“こんな幼くて良い子を連れてくなんて”とソフィアさんに対する評判は悪いですけど」


「解せぬっ!

 何でよ!?」


「まあ、実力面でカイリ君をまだ認めていない者もいるので“マレプランテ”を倒したとなれば見方も変わるでしょう」


「それをこれから観るんだけどいいの?」


「僕も同行隊で満足している訳じゃありませんので」


 ルークはサイファーを見た。


「お前は今でも十分つえーよ。本体に入っても良いくらいには。ただ同行隊にも“最後は気張って貰う必要がある”。その時にお前がいて欲しいって理由だよ。だから同行隊にお前は外せない」


「ずるいなぁその言い方は」


 ルークは自分が一番尊敬する冒険者に思っていた以上に認められていたことを知り思わず頬を掻く。


「事実だしな」


 サイファーは何でもないように酒を煽る。


「あ」


 その時にソフィアが声をあげた。


「カイリが起きた。動き出すみたい。稽古も大事だけど“コレ”見ていかなくていいの?」


「?」


「たぶんウチの子は面白い事してくれると思うんだよねぇ。あたしでも把握してないことやらかしてくれるから」


 そう言ってソフィアは笑う。


「ソコは把握しておけよ」


 サイファーはそう言いながらもソフィアが何を指しているのかわかった。

 カイリとサイファーの戦いの最後。

 “一度放った魔法を回収して再編”

 サイファーはあんな魔法は見たことがなかった。


(()()()()()()()()()()()()()()()()())


 “奥の手”の魔法だ。

 生きるか死ぬか、というときに活きる手だ。

 そしてそれが活きるのは魔物だけではない、死をもたらすモノには人も含まれるのだから。

 それにも関わらずあれだけの衆人環視の前で使った。

 けれどあの少年はそれを理解していたとサイファーは思う。

 実質、水晶の向こうで休憩を取っているのも万全を期すため。

 タイムリミットが近いというのに、子供とは思えない判断能力だ。

 そんな判断がくだせるのにそれでもあの魔法を使ったということはそれだけの意味が()()()()にあの少年にはあるのだろう。

 そして、バゼルもついソフィアと同じく笑った。

 が、意味合いは違う。

 力の差は歴然だったとはいえバゼルにとっても久々に楽しめた闘いだったのだ。


「それに、今なら特別情報も教えるよ?」


 ソフィアがテーブルに届いたソーセージにフォークを刺し、それを顔の前でチッチッチッと言いながら振る。


「特別情報?」


「ポコナの居場所」

「マスター!ミルクを一つ!」


 スッと座ってルークが注文した。


「あーもっと良いお酒が呑みたいなー」


「てめっ、人の金で呑んどいて――」

「マスター!追加注文でこの店で一番のお酒をお願いします!」


 ルークはキリッとした顔で人差し指を立て追加注文をする。


「やった!」


 さっきまで真面目な話をしていたはずなのに、さっきまでの有望冒険者がただの青年のように、そしてその原因は目の前の蒼エルフだった。


「はぁ~」


 サイファーもなんだか気が抜けてしまう。


「おやじ!俺にもエールと適当にツマミくれ!」


はいっ!

と言うことでね!

えーとね、

終わりませんでした!

なぜか蒼エルフ絡むと話が脱線してしまって……

次で終わります!多分!恐らく!

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