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黒龍殺しの付与術師  作者: しきな かいどう
第2部 討伐遠征
92/101

聖剣の担い手

連日で明日も投稿予定です!

 さて、どうするか?


 貿易都市に到着するなり五日間の休養が設けられたがカイリは悩んでいた。

 稽古をするにしてもクラウスとサイファーはなにやらお偉いさんと話して何処かに行ってしまった。

 ソフィアは真っ先に酒場に向かい、バゼルは他の冒険者と昼にも関わらず夜の町へと消えていった。

 カイリも興味はあったが、精神がもういいおっさんだからかそれとも身体が子供だからか別に行きたいとは思わなかった。


(取り敢えず武具屋でも覗いてみるか)


 貿易都市なだけあって大きな店が建ち並び、通りには露天も多く出店していた。

 取り敢えず一番大きなお店に入ると店内は多くの武具が飾られているがどれも見るからに高そうだ。


「いらっしゃいませ」


 若い男性店員が爽やかに挨拶すると視線が下から上へとカイリをなぞる。


「……お嬢さん、今日はどういった御用でしょうか?」


「少し武器を見せてもらおうかと」


「親御さんはどちらに」


「僕一人てすが?」


「申し訳ございません。 刃物等も扱っていますのでお子さまだけの来店はお断りさせていただいております」


「これでも一応冒険者なんですが(以前に冒険者カードを作ったし嘘は言っていない)」


 腰の刀をトンと叩いて見せる。


「規則ですので、申し訳ございません」


 王都の時とは違い丁寧ながらも帰るよう促されてしまう。


(なんだろう、元日本人だからか“規則”と言われると弱いな)


「分かりました。 お時間を取らせてしまいすみませんでした」


 カイリは無理を言っても店員に悪いと思い素直に店を後にしようとする。


「あ、君は」


 すると店の奥から声がして振り替えるとそこには同じ討伐隊の“冒険者”が立っていた。


「ルーク様のお知り合いてすか?」


 店員は驚きながらもルークという男性に確認をする。


「ああ、今“行動を供にしているんだ”」


 その言葉の意味を知ると驚きと信じられないという目をカイリに向ける。


「その子にも見せてやってくれないかな?」


「畏まりました」


 店員は頭を下げるとカイリに商品の案内を申し出る。

 申し出られると買わざるえない気分になるので一人で見て回る旨を伝えるとすんなり店員は下がってくれた。


 店員と入れ替わるようにルークという冒険者がカイリに歩み寄る。

 カイリは一方的にだが彼を知っていた。

 サイファーに稽古をつけてもらうようになり“餓虎”のファミリアとの交流が増えた。 そこで冒険者について色々と教えてもらったのだ。

 その中でルーク、“聖剣の担い手”の異名を持つ冒険者の事も聞いていた。


 冒険者や王国民に最強の冒険者は誰かと聞くと“討伐本隊”のサイファーを含めた三人のSSランク冒険者の名が上がる。

 では10年後、いや5年後なら?という質問に対してサイファーと並び最も名前が上がるのがルークだ。

 ルークは現在19歳にしてSランクに上り詰め、ランクのさらに細かい区分けにおいてS+の評価を得ている。

 今回の遠征で結果を出せば冒険者最高ランクであるSSランクに最年少で昇格し、22歳で昇格したサイファーの記録を抜くこととなる。

 実力だけでなく人柄や指揮能力も高く今回の遠征道中は本隊の6人は目的に集中出来るよう騎士団からはヴァネッサ、冒険者からはルークが指揮官として選出されていた。


「ルークさん、ありがとうございます」


 カイリが頭を下げるとルークは人懐っこい笑みを浮かべる。


「あはは、そんな畏まらなくていいよ。

 同じ遠征隊の仲間なんだからさ」


 カイリは笑うルークを見ながらつくづくこの世界は美男美女が多いなと変に感心してしまう。

 実際目の前にいるルークも透き通る金色の髪をやや短く切り上げ、湖のような青い瞳持つとても端正な顔立の物語に登場する王子様のような容姿をしている。


「ところでカイリちゃんは」


「えっと、あの」


「ん?」


「僕、男でして、すみません」


 なぜか謝るカイリ。


「あ!僕の方こそゴメンね! さっき店員にお嬢さんって言われてたからやっぱり女の子かと思って」


(やっぱり?)


 カイリはどうせ一度しか合わないだろう人間には性別の訂正をしないのでそれはある種の悪癖となり、周囲にさらなる勘違いを与えていた。


「カイリ君も遠征隊に入って3ヶ月経つけどどうだい?

 本当はもっと早く話してみたかったんだけどなかなか話す機会が無くてね。

 君は移動は本隊と一緒で、夜営や食事の準備は率先してやってくれるけどその時は餓虎のファミリアが周りにいて、休憩や消灯前はサイファーさんやクラウス様と訓練しているから中々話し掛けられなくてね」


「そう、なんですか?」


 別に気にしなくて良いのでは?と不思議そうにカイリは首を傾げる。


「僕の立場だとすぐに君に声を掛けるとパーティーへの勧誘とか変に勘繰られそうでね。

 ある程度落ち着いてからの方がいいかと思って」


 ルークは王都冒険者パーティーにおいて2番目の勢力を誇る。

 No.1勢力の餓虎ファミリアと懇意であるカイリに不用意に接触して余計な波風が立つのを避けたのだった。


「カイリ君はあのクラウス様の弟子なのに冒険者カードも持っているんだね。

 いや、正式に騎士団に入るまでは冒険者で経験を積む人も多くいるけども」


「いえ、僕はクラウスさんの弟子では無いですよ?

 正式には魔法師ソフィアの弟子になります」


 するとルークの顔が好奇心で輝き出す。


「あの“破壊の青”の!?」


「破壊の青?」


「それはスゴいな! あの英雄や餓虎だけでなく破壊者の正式な弟子なんて!」


「えっ、あの“破壊”とかその物騒な名はなんですか?」


「あ、知らないか。 君の師匠は僕やサイファーさんらが出払ってて冒険者ギルドで手の回らない高難易度クエストをたまにだけど代わりにこなしてくれるんだ」


「……それ、いいんですか?」


 公務員の副業みたいなものだ。


「んー、駄目だよねー本当は。 けどサブマスは青エルフに依頼した方がピンはねして安く済むし、冒険者ギルドの評判も上がるからこっそりモグリでやってるみたいだよ。

 あっこの話は一応内緒ね!」


(何やってんのあの二人……)


「それで高ランク冒険者になると厄介な魔物の情報はいろんなツテで入ってくるから他のクエストの帰りに冒険者ギルドで受注する手間を省いて直接討伐に向かうことがあるんだ。

 その時に何度か青エルフが既に討伐したあとだったことがあってね。

 その戦闘跡がとにかく酷くて、山は無くなり、更地に湖が出来てたりと地形が変わっててね」


(……ほんと何してんの?)


「実際凶悪で手強い魔物ではあったんだけど明らかにオーバーキルでさ。

 しまいにはその土地の生態系が狂って後処理が大変なんだよ」


(………)


「それでついた名が“破壊の青”」


 カイリは色々と申し訳なくなった。

 静かに頭を下げた。


「ああ!別に攻めてる訳じゃないよ!

 ただ彼女の破壊の跡、魔力痕が凄まじいから一方的に尊敬しているんだ」


「尊敬ですか? 軽蔑の間違いでは?」


「カ、カイリ君も中々言うね。

 それに僕の知り合いが青エルフと親しくてよく彼女がどれだけ凄いかって話を聴かされてたからね」


「師匠に友達?

 ……友達?」


 ルークは苦笑しながらカイリに問う。


「カイリ君は僕の戦闘方法を知ってるかな?」


 カイリは頷く。


「魔法剣、です」


 魔法剣は剣等の武器に属性魔法を纏わせて闘う魔法である。


「そう。 そしてそれが出来る職業を“魔法剣師”と言う。

 ただし一般的に言われる魔法剣師に“魔法剣”を使える者は少ない。

 実際のところ、初級や中級の魔法、それに剣を少し扱えれば魔法剣士と言われる。

 剣士としての強靭さも魔法師としての殲滅力も無い半端者に使われる名になってしまった」


 巷で魔法剣士が軽んじらる所以だ。


「“魔法剣”自体はとても強力な魔法だ。

 属性魔法の上級以上を扱える優秀な魔法師なら魔法剣自体は作ることが出来る。

 けれど魔法師で魔法剣を実戦で使うものはまずいない。

 なんでかわかるかな?」


「剣を扱えなければ、接近戦を出来なきゃ意味がないから?」


「そうだね。

 それに近接戦闘をこなしながらの魔法剣の制御は上級魔法の比じゃない。

 けれどその効果もそれに見合うだけのモノになるんだ。

 カイリ君の選考会での闘いぶりを観て君は()()()()の人間だと思うんだ。

 もし興味があるなら僕が手ほどきするけどどうかな?」


 突然の申し出にカイリは戸惑う。


「なんで教えてくれるんですか?」


「僕も昔サイファーさんと戦ったことがあるんだ。

 選考会でサイファーさんに一歩も引かない君を見ていたら少し前の自分を思い出してね。

 そのお礼かな」


(上級魔法以上、か)


 カイリは自分の魔力出量に欠陥があり、上級魔法()()の生成が出来ない。


「……魔法剣は僕には難しくてルークさんに無駄手間を取らせてしまうかもしれませんが、よろしくお願いします」


 魔法剣に関してはカイリも以前から関心を持ち試してはいた。

 何か身になるものがあるかもしれないと思いカイリは頭を下げる。


「こちらこそよろしく」


 そう言って手を差し出すルークの手を握る。

 その後、二人は魔法剣士の立ち回りや売られている武器について談義したあと店の前で別れた。


 ルークはカイリの背を見送ったあと空を見上げる。


「…………」


 その首を横に傾げる。


「う~ん……、あのあたりかな?」


 ルークは闘気を足に纏う。


 すると地面を蹴った。


 一足で数十メートル先の屋根に飛び乗る。


「気配の乱れはない、か」


 更に数歩複数の屋根の上を跳ぶ。

 高速で移り行く景色のなかで一つの影が動き出すのが見えた。

 その影もルークに負けない早さで移動するが彼の表情にはまだ余裕がある。

 ルークが徐々に距離を詰めていくとルークの視界に動く影の後ろから黒い尻尾がなびいているのが見えた。


 ルークは追尾のスピードを落とす。


「なんだ情報局の犬、いや()か」


 ルークは屋根の上からスタンと着地すると周囲の通行人がぎょっとするも持ち前の人懐っこい笑みを浮かべながら「失礼」と言って微笑む。

 すると近くにいた女性達はぽーっと見とれてしまう。

 女性達が惚けて囲まれない内にルークはそそくさとその場を後にしながらさっきの“影”のこと、でなく尻尾のことを思いだしていた。

 より正確に言うなら別の尻尾を。


「ポコナ元気かなぁ」




 一方、追われていた影はルークが追うのを止めた後も数キロ走り続けてから路地裏に降りて足を止めた。


「……フゥ、…………フゥ」


 静かに肩で息をする。

 小さな額には汗がびっしりと浮かんでいた。

 この程度走ったところで本来は肩で息をすることのない彼女だが運動による発汗ではない。

 “聖剣の担い手”のプレッシャーによるものだった。

 追う行為以上に、存在によるプレッシャーを意識的に飛ばすことによって影の出方を窺っていた。

 気配に敏感な彼女にとってそちらの方がキツかった。

 つい言葉を噛んで言い直す程には


「……フゥ……ハァ、……もういにゃ……イヤ……」







 カイリはルークと別れ街中を歩いていると怒鳴る獣人の声が響いていた。


「離せよ!」


「ったく、うるせぇなぁ。 いいから黙ってついてこい」


 その声はどちらも聴いたことがあった。

 後ろ襟を捕まれ引きずられる獣人の少年と、一回り大きな体躯の引きずる獣人の青年は周囲の注目を浴びていた。


「サイファーさん、バゼル君、何してるんですか?」


「おっ、探す手間が省けたな。 ちょっとお前も来い」


「てめぇ、カイリ助けろ!」


「なんでバゼル君は暴れてるんですか?」


「反抗期だ」


「ふざけんなサイファー! 人が待合室に居るところ拉致りやがって!」


 バゼルはどうやらお楽しみ前に引きずり出されたようだった。


「てめぇが女買うなんざ10年早いんだよ」


「るせぇ、それにどこ連れてく気だ!?」


「女なんざより刺激的なところ連れてってやるよ」


 サイファーは口許を弧にする。

 バゼルは何かを感じ取ったのかさらに激しく暴れる。


「カイリ!助けろ!お前も悠長についてきてんじゃねぇ!聞いてもはぐらかして笑うサイファーは大概ろくでもないこと考えてんだよ!」


 今までの経験からかバゼルの声はさっきよりも緊迫していた。


「ちっ」


 サイファーはバゼルの襟足から頭に掴み変える。


 ミキメキッ


 頭から鳴っちゃいけない音がする。

 バゼルは諦めたのか急速に大人しくなった。


「お前は行き先聞かないのか?」


「それって修行になります?」


「なるなる」


「分かりました。ではもう少し急ぎましょう」


 そう言って懐からロープを取り出すとバゼルの足首を縛って肩に担ぎ上げる。

 その様子をサイファーの指の隙間からバゼルは驚愕の目でカイリを見る。


「じゃあ走るか」


 サイファーとカイリでバゼルを旅籠の籠のように運びながら貿易都市を出て大森林へと向かって行った。


 森の入り口に到着するとサイファーはバゼルを乱暴に投げ捨て腰に手を当て宣言した。


「というわけでバゼル、カイリお前らはここから東の大森林で魔獣やら魔物が大量発生してるのを解決してこい。

 ちなみに期限は5日後の日の出までだ。

 出来なかったら、置いていく」

……あれ?

おかしいな

話が進まない



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