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黒龍殺しの付与術師  作者: しきな かいどう
少年期 ~王都編~
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第73話 試合開始

ちょっと期間が開きすみません。

今晩か翌朝に続けて投稿予定です。


今、王都編を書いていますが、リアルが少しばたついているのと書き溜めをしたいと思うので区切りのいいところで一旦休止予定です。

自分でも、これから!という所なのでエタるつもりはないので気長に待っていてもらえればありがたいです。


それではもうしばらくお付き合いお願い致します。

 試合はA・B・C・Dブロックの4つに分けて行われる。

 最後の1人になるには5試合勝たなければならない。

 バゼルはBブロック、カイリはCブロックに入れられ、当たるとしたら決勝戦だった。


 開会式が終わり一度時間を挟む。

 この時間が最後の賭け札購入時間だった。

 観客達は窓口に殺到した。


「おい!あれ“餓虎”の若手の奴だよな!?」

「ああ!間違いないバゼルだ!」

「前情報に名前無かったのに!?」

「いいから購入した札戻してバゼルに買い直さねぇと!」


 そんな様子を観客席でのんびりと眺める親子がいた。


「ねぇパパ」


 赤色の髪の男の膝には8歳くらいの少女が座る。

 その少女の髪もまた赤かった。


「なんだい?」


「あの獣人さん強いの?」


「うん、そうだね。

 今日の試合に出てる選手の中じゃ一番かな」


「わたしより強い?」


「そうだねぇ、まだ彼の方が強いかな」


「むー」


 少女は頬を膨らませ、父親の顔を見上げなから睨む。


「ははっ、そんな睨まないでくれ。

 可愛い顔が台無し……にはならないな!

 ああ!ほんと可愛いなぁウチの娘は!」


 そう言って両頬をぷにぷにする。

 少女はそれをくすぐったそうに笑う。


「このまま彼と同じ歳になったときは君の方がずっと強くなってるよ」


「ほんと!?」


「ああ、もちろん。

 ただし、きちんと稽古を続ければだけどね」


「でもパパ今月には出掛けちゃうんでしょ?」


「うっ」


「それに最近は仕事終わってもなかなか帰ってこなくて稽古つけてくれないし!」


「うぅごめんよぅ」


「もしかしてパパ浮気してるの?」


「なっ、そんな言葉どこで覚えたんだい!?」


 すると男の隣から声があがる。


「あらあらあら、あなた」


 その声は美しいさと共に涼やかであり、そして男の肝がキュッとなるには十分だった。


「大変ですわね?」


 声の主は金髪ブロンドの美女でにっこりと微笑みかける。


「ち、ちがうから!というか君も“知ってる”だろ!?」


 両親の会話を聞いた少女が目を細める。


「やっぱりママもパパが仕事終わったあと何してるか知ってるんだ!」


「あっ」

「ふふっ」


「パパ、知ってる?

 最近王都ではね、()()()()()が出来たって噂で持ちきりなんだよ」


「……」


「パパの一番弟子はわたしだよね。

 で、英雄の弟子《浮気相手》はここにいるの?」


 くりっとした瞳に睨まれ今度はタジタジになる


「あそこ、かな?」


 指差された方向を見る少女。

 その先には面を着けた子供がいた。


「なにあの子?

 子供じゃん!」


 少女は父の弟子とは騎士団の部下だと思っていたが、それが自分と同じ子供。

 しかも顔は分からないが三つ編みの女の子というのも気に触った。


「どうした?」


 少女は心情を全く理解しない父に苛立ちが積もる。


「……あの子とわたし、どっちが強い?」


「現状だと、うーん難しいな。

 けど剣を扱うセンスなら君の方がずっとあるよ」


「ならパパは何でそんな子に教えてるの?

 わたしがいれば弟子なんて要らないじゃない!」


「弟子にとったつもりはないんだけどなぁ」


「じゃあなんで?」


 なんで、か。


「カイリ君と剣を交えると楽しいからかな」


「たのしい?」


 父の思わぬ感想に戸惑う。

 自分が上手く剣を扱えたとき父は笑ってくれる。

 しかしそれは上達を喜んでくれているのだ。

 楽しいから、それは父自身の為ということだ。

 そんなこと少女は言われたことがなかった。


「…………」


 少女は完全にふて腐れた。

 あらあら、と母親は理由を察するが父親は相変わらず鈍い。


「し、失礼します!」


 そんな微妙な空気の中、男の部下が観客席に小走りで寄りながらも気まずそうに声を掛けてきた。


「ヴァネッサ、どうした?」


「はい、副団長にもバゼル少年の件を連絡しておこうと思いまして」


「ああ、どうせマルコさんだろ?」


「はい、それで参加申し込み期日を過ぎているのにおかしいと苦情がありまして」


「苦情はどこから?」


「冒険者ギルド所属の選手を推薦した各支部長達です」


「なるほど。

 なら苦情はマルコさん、ギルド本部長に言えと。

 それで試合開始までに本部長が非を認めたのなら棄権させると伝えなさい」


「いいんですか?」


「冒険者ギルド内のゴタゴタなど知らんよ。

 勝手にやっててもらいなさい」


「わかりました。

 あといくつか確認をお願いしたいことが――」


 クラウスはヴァネッサの報告を受けながら適切に指示を出していく。


「わかった。

 私も行こう」


「よろしいのですか?」


「ああ、そんなに時間は掛からないだろう」


 そう言って「すぐ戻るから」と娘の頭を撫でクラウスは席をたつ。


「せっかくのお休み中にすみません」


 ヴァネッサは恐縮して頭を下げる。

 クラウスにはまだ幼い子供がいるので周囲が気を聞かせて遠征前にと今日は完全オフだったのだ。


「いや、やはり周りが働いてる中に休んでいるというのは落ち着かないからな。

 気にしなくて良い」


 少女は父親を見送った後、手すりに顎をつけてつまらなそうに()()に目をやる。


「ほらそんな格好して、はしたないわよ」


「ママはあの子知ってるの?」


「ええ知ってるわ。

 けど直接見るのは初めて。

 パパにもあの子を家に招いてはと言ってるんだけどパパもカイリ君も忙しくてね。

 あの子はママの親友の甥にあたるの」


 少女は驚いて母親を見る。


「え、ママに友達いたの!?」


「なっ!?いるわよ! 失礼ね!」


 そして開会式いう名の最後のベットタイム。

 オッズはバゼルがダントツの一番人気になり、それまで賭けるものが少なかった高額配当のエキシビションマッチにもバゼルに賭けるものが現れた。



 そして、試合が始まった。

 第一回戦が消化されていくと一際大きな歓声があがる。

 Bブロックのバゼルだ。

 対する相手は同じく冒険者の男。


「くっ、なんでバゼルが」


「あっ?誰だお前」


「俺はお前と同じ冒険者で――」


「あーあーいい、いい」


 相手が名乗ろうとしたところをめんどくさそうにバゼルが遮る。


「どうせ、すぐ終わるし、すぐ忘れる。

 お前の名前なんざ必要ない」


「なめやがって!

 構えろ!」


「はっ?」


 剣を構える相手に対して怠そうに立ち、両腕の籠手の埃に息を吹きかけるバゼル。

 審判が開始の合図を出すのに戸惑っているとバゼルが顎で促す。


『は、始め!』


「うぉぉぉ」


 合図と共に剣を振り相手が間合いに入る。

 するとバゼルはその場から動くことなく右腕をふるって籠手で剣を軽く振り払う。

 そのまま相手の顔面に一発、二発と拳を叩き込む。

 首が後ろにのけ反るも、かろうじて留まる。


「ちっ」


 そこではじめてバゼルは身体を相手に向けると左アッパーを顎に打ち込む。

 対戦相手は糸の切れた人形のように崩れ落ちた。


『勝者バゼル!』


 カイリはじっとバゼルの試合を観ていた。


(徒手による格闘スタイルか、強いな。

 相手だってBランク冒険者。

 それをあっさりと……。

 この選考会の中でも明らかに頭1つ2つは抜き出ている)


 その感想は自分を含めてなお、だ。


「強いわね、あの襟足」


 一方ソフィアの表情もすぐれない。

 カイリの実力を知るソフィアから見てもステータスの面でバゼルに劣る。


「どうした?

 さっきまでの大口は?

 それとも俺とは逆で、弟子が負けても遠征にコネで連れていくのか?」


 サイファーの挑発には“そんな奴はただの足手まといだ”という意味が含んでいる。


「ばばあとの約束だからね。

 カイリが負けたら連れていかないわよ」


 そしてカイリの第一試合が回ってくる。


『次の試合、デニス選手対カイリ選手!』


 バゼルの時とは違う意味で観客がどよめく。


「やっばり子供だよな?」

「小人族じゃない?」

「お面着けて前見えるのかしら」

「女の子よね?」

「相手はデニスは確かB-の若手だったな」

「あの娘、プロフィールだと“無所属”ってなってるぞ」


 試合のパンフレットには冒険者なら所属する冒険者ギルド支部名が、騎士団なら騎士団と名前と共に表記される。

 無所属というのは冒険者でも軍属でもなく、いわゆる浪人に使われる文句である。

 主に闘技大会で実力をアピールして、どこかの貴族に雇われる為に参戦する者が多い。

 しかし、今回の選考会は遠征の為のモノであり“無所属”というのはカイリのみである。


「なあ、お前小人族か?」


 デニスは向かい合ったカイリに問いかける。


「いや、人間族だけど」


「わけがわかんねぇ。

 それなら子供だろ?

 なんでそんなガキが選考会出れてんだよ?

 怪我したくなかったら棄権しろ」


「しないけど?」


「はぁ、忠告はしたぞ?

 じゃあ怪我してもしらねえからな」


 そう言ってデニスは両手剣を構える。

 対してカイリはその場で軽くぴょんぴょん跳ねると腰を沈め刀を構えた。


『始め!』


 合図と共にデニスは距離を詰めると上段から剣を振り下ろす。

 それをカイリは右に一歩跳びかわし、逆に斬りかかろうとするもデニスは素早く剣を横に薙ぐ。

 カイリはそれを刀で防ぐと勢いに圧されて後ろに軽く飛ばされる。

 辛うじて両足で着地すると大きく息を吐く。

 デニスは軽く驚き、カイリは軽く笑う。


「避けたのはまぐれかと思ったが、二撃目はまぐれじゃねぇな。

 お前本当に子供か?

 俺はこれでもBランクだぞ?」


「どうでしょうね?」


 デニスに対しカイリの口数は少ない。


(かたいなぁ)


 カイリの笑いは余裕からくるものではなく自分の緊張に対する苦笑だった。

 お互いにすでに身体強化は掛けている。


(やっぱりBランク、強いな。

 余裕はない)


 もう一度その場で軽くぴょんぴょんと跳ねる。


「行くぞ」


 デニスが宣言すると連続の攻撃が始まる。

 カイリはそれをかわしたり、防ぐので精一杯だ。


「おいデニス~!いじめてないでさっさと終わりにしろ~」

「真面目にやれー」


 観客から野次が飛び、デニスはイラッとする。


(この節穴が! こっちはとっくに真面目にやってるわ)


 カイリはひたすら防いだり避けたり防戦一方となる。


(ちっ、的は小さいし、要所要所できっちり防いできやがる。

 やりずれぇ!)


 デニスは攻めながらもチャンスを作れないことに焦りを覚える。


(選考会は一日での連戦、こんなところで体力を使ってる場合じゃねぇ!)


 デニスはさらに圧を強め、カイリは次第に後ろに下が始め場外が近くなる。

 それを勝機と取りデニスは一気に距離を詰めると横に逃げられないように剣を右から左へ振り払う。

 これを刀で受けたとしても場外に飛ばして勝敗は決まるはずだった。

 カイリはデニスの踏み込みに合わせて床に膝が擦るほどしゃがむと同時に股の下を潜り抜け、後ろからデニス突き飛ばす。

 よろけたデニスが場外に片足を踏み外す。


『し、勝者、カイリ選手!』


 審判の宣告と共に観客から笑いと罵倒が起きる。


「なんだそりゃあ!ははっ」

「てめぇ、デニス何やってんだ!?」

「おい、アイツあんな子供に負けたぞ」

「おいおいデニスそりゃねぇだろ?」

「つまんねぇ試合してんじゃねぇぞ!デニス!ボケ!」


 うつむくデニス。


「くっだらねぇ。

 あんなレベルのガキの為におれぁこんな大会出るはめになったのかよ」


 その試合を観ていたバゼルは興味を無くし、選手控え室に戻っていた。

 一方、クラウスの娘も退屈そうに試合を観ていた。


「つまんな。

 あの子より全然わたしの方が強いし。

 なんか試合も地味だし」


 父親がなんであんな子との稽古が楽しいと言ったのか少女には理解出来なかった。


 カイリは観客の罵声に耐えるデニスと目が合う。


「おいおい、俺に勝ったんだからもっと嬉しそうにしてくれよ。じゃないと立場ないぜ」


「デニスさんはすごいですね」


「何がだ?」


「こんな野次の中、元凶の相手に気を使えるんですから」


「まあそもそも賭け試合なんてこんなもんだ。

 賭けいる奴ほど騒ぐ。

 お前も気にすんな」


「でもちょっとこの観客ムカつきますね」


「はは、まあな。

 まあその観客もほとんどはバゼルに賭けてるだろうけどな」


「デニスさん、ならそいつらの賭け札、僕がゴミに変えますから」


「おお、言うね。

 そうすれば俺の面子も保たれるから頑張れ」


 デニスはカイリが調子に乗っているのではなく、自分を気遣っていることにいい奴だなと思う反面、さすがにバゼルは無理だなと内心苦笑していた。


 そして試合は2回戦、3回戦と続き、バゼルの試合は圧倒的で、それに対しカイリは似たような試合展開で辛うじて駒を進めていた。

 第一試合の時点でバゼルはすでにカイリに興味を無くしていた。

 それもその筈で今日カイリは一度も相手にまともに攻撃を当てれていない。

 子供にしては能力が高いが、この大会で勝てる実力はなく、偶然による勝ち星と見なされていた。


 そして試合は準決勝の舞台へと進む。

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