第61話 魔道具店
この後の展開で二通り考えているのですが、本筋は変わらないのでただ単にどっちを先にやるかで迷っていまして数話後に少し更新が遅れるかもしれません。
片方なら既にストックしてあるんで一気に更新出来るんですがちょっと考え中です。
すみません。
ユハナと魔道具店に行くと武具屋と同じように喧嘩の怒鳴り声が……聞こえてくることはなく、普通に買い物をした。
どっかの謎解き漫画のように毎回事件に巻き込まれてたまるか。
いかにもという外装のお店に入ると、カウンターには老婆が一人座っていた。
「店主こんにちわ~」
「お、ユハナか」
ユハナの軽い挨拶に対し、魔道具店の店主の態度も副団長に対する、というか客に対する態度にしては軽い。
まさに店主と常連といったところだ。
「丁度いい。
あんたのご要望の品入ったよ」
「おおーやったぁ!」
「状態もかなりいいからね、その分高いよ」
「大丈夫大丈夫!」
この大丈夫大丈夫の言葉の裏に“払うの僕じゃないし”という副音声が確かに聞こえた。
「おや?
そっちの坊主はあんたの弟子かい?」
「違うよ。
僕じゃなくてソフィアちゃんの弟子」
「はじめまして。
カイリと言います」
「あのぐうたらはホントに弟子とったのかい!?」
「ねぇ、みんな驚くよね。
そうだ、カイリ君は魔道具店は初めて?」
「はい。
故郷にも一つあったようですけど行ったことは無いですね」
「まあ、ソフィアちゃんが魔道具店行かないしね」
「うちは変わった品も多いからゆっくり見ていきな」
「ありがとうございます」
店主はそう言うと店の奥に行ってしまった。
「ここにはどういったモノがあるんですか?」
店の中には杖やらメイス、アクセサリー、派手な色の液体が入ったガラス管など、所せましと並べられている。
「まあ、主に魔法の補助具や回復薬だね」
「補助ですか?」
「魔法師が持つ杖やメイスのことだよ。
一応近接戦にも使えるけど本来の使い方はそうじゃない。
カイリ君やソフィアちゃんのように無詠唱の使い手には必要ないけど、普通は魔法発動の補助具として用いるんだ」
確かに杖は魔法使いのイメージとしてあるな。
「補助具を使うことによって魔法形成が速くなり全てではないけど何小節か詠唱を省くことが出来る。
それに形成が安定することによって難しい上位の魔法もやり易くなる」
「上位の魔法も……。
それなら無詠唱使いにも意味はあるんじゃないですか?」
むしろ通常のやり方では中級魔法までしか使えないカイリにすれば必須に思えた。
「ソフィアちゃんから聞いてない?
無詠唱使いはその身一つで在る意味完成された魔道具みたいなものだから、補助具を加えることは余分な部品となって逆効果なんだ」
「じゃあ無詠唱使いは補助魔道具の恩恵を受けられないってことですか」
「そう。
だから魔力操作の技能向上は他の魔法師より通常以上に求められる」
「なんか無詠唱ってそんないいもんじゃない?」
「そんなことないさ。
しっかりとした魔力操作技術があれば上位の魔法をノータイムで放てる。
相手からしたらこれほど厄介なことはない。
それに補助魔道具は駄目だけど、自分で唱える呪文は魔法形成の補助にあてることが出来る。
ソフィアちゃんも聖級魔法の際は呪文を唱えるはずだよ」
無詠唱使いにも詠唱が意味があるなんて知らなかった。
いや、俺の場合は魔法形成でなく魔力回路の“出力”の問題だから結局のところ上級魔法は使えないかか。
おそらくソフィアも呪文という補助具で魔力操作をすることにより、呪文に頼ってしまう心情になることを嫌ったのだろう。
無詠唱の意味が薄れてしまうし、なにより知らなければ頼れない。
それと補助具の説明で気になることが出来た。
「そういえばこの間ヨーゼンさんからもらったこの腕輪の魔道具で身体強化が出来たんですけどこれは補助具とはまた違うんですか?」
「この腕輪は単純に魔力を込めれば身体強化が使える“魔道具”だからね。
補助具には当たらない」
「なるほど、分かりました」
“補助具”ではなく“魔道具”は無詠唱使いでも問題なく使えると。
すると不思議そうにこちらをユハナが見ていることに気付く。
「どうしました?」
「カイリ君は新魔法を編み出してるのにこういうことは知らないんだなぁと思って」
「よくよく考えると座学より実技ばっかになってましたね」
「まぁ、補助具が使えない無詠唱使いにとっては魔力操作技術が最優先事項だからね。
ところでカイリ君は魔道具には興味あるかな?」
「あります」
即答だった。
補助魔道具は使えなくても魔道具が使えるのならそれは自分にとってプラスになるものだ。
「なら遠征出発までの間、僕のところに来れば色々教えるよ。
この分野に関しては導師やソフィアちゃんより詳しいし上手だという自負もあるしね」
「ありがとうございます。
でもいいんですか?
それって自分の成果を他人に分け与えるようなものじゃないですか」
「君は真面目だね。
大丈夫。
カイリ君は妹弟子の弟子だし、それに新魔法の発想力を持つ君に意見を貰えると魔道具研究の役に立つかもという算段もあるから」
「んんー、役に立てるかわかりませんがそういうことならよろしくお願いします」
自分の性格上、相手にもメリットがあるなら無償で施しを受けるよりもその方がやり易い。
すると店の奥から店長が小さい木箱を持って戻ってきた。
「ユハナ、ほれ。
さっき言ってた品だ」
木箱を受け取って蓋を開くと中には赤色の石が入っていた。
「魔石ですか」
横から覗き込みながら疑問を口にする。
魔物を狩った際に魔石は何度か見たことがあるが赤色の魔石は見たことがない。
「色彩魔石だよ」
「色彩、ですか?」
「魔物からでなくダンジョンや魔力濃度の高い山脈からとれる天然ものの魔石のこと。
魔石そのものに特殊な効能があって魔道具の加工に使われやすいんだ。
まあ珍しいからその分高いんだけどね。
そうだ。
カイリ君も何か買ったら?
奢るよ」
「いえ、領収書の宛名を考えると後々別の形で元取られそうなんでやめときます」
「はははっ、ヨーゼン君のことよくわかってるね。
店主、確かに受け取ったよ。
また何かあったら頼むねー」
「あいよ」
店主に挨拶し二人で店を後にした。
ユハナは目当ての物が手に入って満足そうにニコニコだ。
「僕はこの後仕事に戻るけどカイリ君はどうするのかな?」
「一端宿に戻ります。
夕方からクラウスさんが稽古をつけてくれるらしいのでまた出ることになりますけど」
「そっか、明日も導師のところに来るんでしょ?
それじゃあまた明日ね」
「はい、今日はありがとうございました」
カイリはユハナと別れ王都の正門近くにとってある宿に向かう。
ユハナはその後ろ姿を見送ると、さて、と一言呟き目を閉じた。
意識を集中し、外に向け魔力感知を作動する。
本来魔力感知は自身に流れる魔力を感じとる技術であり、外部に向けて放つのは高等技術とされ、一流の魔法師が出来て数メートルと言われている。
人や魔物は各々大きさの違いはあれど魔力を内包している。
これを感じとるのだが、ユハナの魔力感知は集中すれば数百メートルは探れる。
「もしかしたらなぁと思ったら、一人か。
……へぇ、これに気付くんじゃたいしたものだ。
情報局も良い人材を飼ってるね」
ユハナから数キロ離れた民家の屋根に一つの影が立っていた。
その小柄な影には耳と尻尾が生えており、時おり風にあおられなびいている。
「……化け物か」
影は一言呟くと足音もなく姿を消した。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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