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黒龍殺しの付与術師  作者: しきな かいどう
少年期 ~王都編~
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第60話 鍛治職人ハーゲン

「ちょっと来い!」


 その言葉を発したお爺さんは不機嫌そのものだ。


 取り敢えず言われた通り奥の工房についてく。


「遅いぞ!いったい何日待たせるんだ!」


「はあ」


 思わず生返事になってしまう。

 このじいさんは何を言っているんだ?

 そもそも俺の事を伝えてくれたヨーゼンさんは、俺が近いうちに伺うとしか言っていないはずだが。


「で、何が欲しいんだ!?

 言え!

 片手剣か!?

 短剣か!?

 鎧は!?」


 イライラした口調で聞いてきた。


「ちょっと待ってください。

 取り敢えず魔狼の素材を卸した代金を受け取りに来ただけでここで装備を買うとは言ってませんよ」


 先日はここで買う予定だったが、この店は人の癖がありすぎて正直関わりたくないし、横柄な態度が好きじゃない。

 なにより単純にめんどくさい。


「なっ!何を言っとるか!!

 うちの店で買わずにどこで買うと言うんじや!?

 王都にうちより鍛えられた武具などない!」


 うん、出来れば性能が近い店で少し高くなってもいいからそちらに行きたい。

 そう思いユハナさんを見上げると変わらずにこにこしていた。


「店主のハーゲンさんの言う通り、戦士職の武具はここが一番優れているって評判だよ。

 まあ店主が癖ありすぎて客を選ぶから別の意味で評判は良くないけどね」


「なんだとっ!言ってくれるじゃねぇか若いの!こちとら愛想振り撒く暇あったら鎚を振ってたほうが意味があるんじゃ!

 ……ん、誰かと思ったらユハナ副団長か」


「どうもー、久しぶりです」


「知り合いですか?」


「うん、何度か探してる素材を取引したことがあってね。

 魔石は別として他の素材は魔道具店より武具店の方が種類が豊富だから」


「なんだ、こいつはあんたの弟子か?」


「違う違う、僕の甥っ子」


「違います。

 ユハナさんは自分の師匠の兄弟子です」


「……魔法師だから武具はいらんのか?」


 お爺さんは急にしょんぼりしてしまった。


 すると工房の入り口からこちらの様子を窺っていた少年が近付き耳打ちしてくる。

 あと一緒についてきた幼女が足にしがみついてきた。

 うん可愛い。


「一一ってわけなんだ」


「ん?何て?」


「いや、何で耳元で話してるのに聞こえてないんだよ」


 だって足元に可愛い存在がいるんだから仕方ないだろう。


「実は親方、あんたが来るの楽しみにしていて、あんたから直接話し聞く前から魔狼の素材で色々装備の構想を練ってたみたいなんだよ」


 楽しみにしすぎて勝手に待って、怒って、最後はしょんぼりとかツンデレか!

 老人のツンデレってどこに需要があるんだろう。

 ツンデレ……あれ?

 何か忘れてるような?

 王都に来たときまでは覚えていたんだけど……。


「なあ、ワシは魔法師関連の武具はメイスなど刃物部分しか代理で作ってないがその部分だけでも作ってやろうか?」


 そして、健気さをアピールされてしまった。

 だから誰得だよ!

 まあ癖はあるけど悪い人じゃないんだろう。

 っていうかよく見ると人じゃなかった。

 初めて見るがドワーフだ。


「いえ、メイスはいらないです」


「そうか……」


 そんなしょげられても。


「その代わり希望するのは剣と槍とあと防具をお願いします」


「!!

 やっぱりな!

 あの馬鹿たれを蹴り飛ばした動きから近接戦もやるじゃろと思ってたんじゃ!」


 急に元気になりだした。


「ちなみに魔狼の代金から差し引いて足りますかね?」


「いらん!」


「は?」


「いらん!

 あの馬鹿をワシの代わりにぶっ飛ばしてくれたし、弟子のギュンターの怪我も直してくれた。

 聞いたら孫のココに自分が食べる分のおやつ全部をくれたらしいの。

 うちのもんが皆世話になってるのに金など受け取れん!」


「いや、それはそれで申し訳ないので……」


「子供が遠慮などするな!」


「ここはお言葉に甘えとけば?

 王国が食料や野営の費用は持つし補助金が出ると言ってもカイリ君も他の装備やら何やらでお金は必要になるよ」


「んー分かりました。

 じゃあお言葉に甘えさせてもらいます。

 ありがとうございます」


「頭など下げんでいい!

 こちらこそいろいろ助かった。

 感謝する!

 それで早速だが槍は魔狼の骨を元に作ろうと思う。

 切れ味はもちろん頑丈さは折り紙付きじゃ!

 で防具の方はどうする?

 こういったやつがいいとかあるか?」


「あまり動きを阻害されない方がいいです。

 あとそれとは別に魔狼の毛皮でローブとか作れます?」


「うむ、出来るがあの毛皮を加工するとなると時間が掛かる。

 いつまでには欲しいんじゃ?」


「1月以内には必ず欲しいんですが……」


「無理じゃな。

 槍と剣と防具だけで本来は1月以上掛かる。

 何か理由があるのか?」


「“遠征”に行くんで、必要なんです」


「……そうか。

 そうじゃな、ローブの加工に関しては知り合いに腕が確かなのがいる。

 そいつに委託しよう」


「それじゃあ別注になるんですからローブのお金は払わせてください」


「だから気にせんでいい」


「いえ、その代わり期限の無茶を聞いてもらいますから」


「ふん、仕方ないの。

 ローブを抜いてもそれでも1月以内は無茶じゃな。

 期限に間に合わせるためには剣の加工は止めてうちの在庫から好きなの選べ。

 と言っても最近は遠征に出る騎士と冒険者の武器の注文やら整備やらで店頭用のは打っとらんしなぁ。

 魔狼の素材に勝る武器と言えば……そうじゃな」


 お爺さんが工房のさらに奥の壁に掛けられている、この間の()()の元へ向かった。


 それは緑色の鞘に収まった刀だった。


「これを使え」


「いや、でもこれ売り物じゃないんじゃ……」


「ワシの最高傑作じゃな。

 東方に住む鍛治の師匠から技を継いで、数十年掛けてやっと納得のいく刀が打てた。

 刀には剣とは違う美しさがある。

 もっと次々と打ち上げて行きたかったが素材が貴重で中々手に入らなくて出来なんだ。

 それで壁に飾り大事に飾っていた。

 ワシは満足してしもうていた。

 だがそれではいかんとやっと気付いた。

 ならば在る素材でこの刀を超える剣を打てばいいだけの話しじゃ。

 だからお前さんが持ってってくれ」


 お爺さんは何やら決心した目をしている。

 だが、

「いや、刀と剣じゃ扱い違うし、普通の剣の方が助かるっていうか正直いらな……」

「持ってけ言っとるじゃろぉぉ!!」


 血管が切れて倒れるんじゃないかというくらい真っ赤になって怒鳴られた。


「クラウス君なら色んな武器にせいつうしているから教えて貰えると思うよ。

 あとなんだったらヨーゼン君に刀の扱いに長けた冒険者いないか聞いておくよ」


「ありがとうございます。

 お願いします」


 取り敢えずここでやることは終わったかな。

 帰り際に刀と魔狼の素材の代金が入った袋をもらった。

 袋の中身は正直引くくらいの金額が入っていた。

 魔狼の外傷がほぼ無いのと(中から魔法ぶっ放したしなぁ)魔狼自体が北方の稀少種の為、このぐらいの代金になるらしい。


 よし、次は魔道具店へ向かおう。


「それじゃあ失礼します」


「うむ、期待しておれ」

「お姉ちゃんまたね」

「ま、またな!

 治療ありがと!」


 武具屋に挨拶して後にすると、しばらく歩いたところでユハナが質問してくる。


「さっきから思ってたんだけどさ、」


「なんですか?」


「なんで男の子って訂正しないの?」


「……なんかもうめんどくさくなってきまして。

 別に支障ないからほっとこうかなって」


「なんかそういうところソフィアちゃんに似てきたんじゃない?」

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