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黒龍殺しの付与術師  作者: しきな かいどう
少年期 ~王都編~
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第54話 クッカ導師

 ~3日前 魔法師団団長室~


「こんのばらガキが!

 アタシの酒返せ!」


「はぁ!?

 知らないし!」


「嘘つけ!

 お前が王都に帰る度にちょっとずつコレクションから減ってるんだよ!

 結界を一応張っておいたら破られてるし、この結界破れんのはあんたかユハナぐらいなんだよ」


「知りませ~ん!

 じゃあユハナでしょ!」


「ユハナなわけないでしょが!」


「はい、差別入りましたー!

 ソフィアちゃん傷付きました~!」


「何がソフィアちゃんだ!

 いい歳して!」


「なんだとばばあ!」


「やるかこのボケナス!」


 見た目20歳と30歳半ばの女性が取っ組み合いの喧嘩をしていた。

 リアルで見ると結構引くわ。


「あの、ユハナさん止めなくていいんですか」


「まあじゃれあってるだけだからね」


(確かに、いつもよりソフィアの言動が幼いような?)


「あ!そういえば、」


「どうしたのカイリ?」


 ソフィアの問いを無視して導師に近づく。


「なんだい?」


「これ……」


 バッグからソフィアから以前没収した酒瓶を取り出す。


「「あ、あたしの!?」」


「お前のじゃないだろ!」

「カイリなんで持ってるの!?」


「師匠が酔い潰れたとき没収したんですよ」


 そう言って導師に酒瓶を渡した。


「な、う、裏切り者!」


「裏切ってませんよ。

 師匠の身体を心配してです。

 第一、自分がどのくらい飲んだか把握してないんじゃ酒辞めた方がいいですよ」


「うっ」


 ソフィアを説教している間、導師は腕に抱いた酒瓶によく帰ってきたと言いながら頬擦りしている。

 あれ?この人も駄目な人?


 俺の考えを読んだのかユハナさんが導師をフォローした。


「あ、カイリ君、誤解しないでね。

 導師はソフィアちゃん以上に酒好きだけど酔っ払って人に迷惑掛けることは滅多にないから。

 導師も孫弟子の前なんですからちゃんとしてください」


 導師、ソフィアともにうなだれる。

 なんだかんだ似た者同士なのかもしれない。

 ……いや、きちんと仕事してる分導師に失礼だな。

 ってか、


「ユハナさん、導師ってお若いんですね。

 師匠がよく、ばb……じゃなくてご年配扱いしていたので」


 それを目敏く聞いた導師はこちらに笑顔を向けながら


「カイリ、なかなかわかってるじゃないか!

 あんたは賢いし良い子だね。

 どっかの馬鹿弟子とは大違いだ。

 おい、馬鹿弟子覚えてろよ」


 口笛を吹いて誤魔化すソフィア。

 ふーふー言ってるだけて吹けてないけど。


「カイリ君、導師は人間族のご両親を持つんだけど数代前にエルフの血が入っていてね。

 先祖返りでエルフの血が濃く現れたんだ。

 だからああ見えて実は結構一一」


「ユハナ~。

 あんたの研究費申請、アタシまだ決裁押してないんだわ」


「おっとカイリ君、僕はこれから日課の魔道具研究に入らなければ!

 あ、そうだ。

 もし魔道具に興味があるならいつでも訪ねてくるといいよ」


 そう言って団長室を出ていってしまった。


 残されたのは俺とソフィアと導師。

 ってかそもそもなんで呼ばれたんだ?


「おい、馬鹿弟子」


「なによ」


「その子、なんで連れてきたんだい?」


「ああ、丁度よかった。

 召喚魔法をこの子に教えて欲しくて。

 あたしのはちょっと変わってるから」


「わかった、いいよ。

 ついでにあんたが遠征に帰ってくるまでの間、色々仕込んどいてやるよ。

 学院への入学もやっといてやる。

 これでいいんだね」


「あー、召喚魔法だけでいいよ」


 その言葉に導師の表情が変わる。

 さっきのじゃれあいで怒ってたのとは違う凄みがある。


「どういうことだい?」


「言葉通りだけど?」


「あんたはあと二ヶ月足らずでこの王都を出るんだ。

 2年近くは帰って来れない。

 この子はどうするんだい?

 故郷に帰すのかい?」


「連れてくけど」


 次の瞬間机が宙を舞う。

 ソフィアに当たる直前に間に入り受け止める。

 導師は振り上げた足をゆっくり下ろしながら、こちらを冷めた目で見きた。

 とても先ほどまでと同じ人物とは思えない。


「連れてってどうするのさ」


「そのまま修行を続けるのよ」


「はぁ?遠征は子供のお守りする場所じゃねぇぞ馬鹿弟子が」


「師匠は弟子の面倒みるもんでしょ?」


「1人弟子とったくらいでわかった風な口聞いてんじゃねぇぞ」


「……」


「今回のは本気でヤバい遠征だ。

 足手まといがいたら全体に迷惑が掛かる。

 迷惑が掛かれば命を落とすやつも出るんだよ」


「本隊に入れるつもりはないわよ。

 あくまでも道中の護衛部た一一」

「当たり前だ馬鹿たれ!

 本隊じゃなかったとしても力のない奴は邪魔だし、そもそも子供の行く場所じゃあない」


 ソフィアは黙ってしまう。

 不味い、ソフィアはそもそも俺が遠征に参加するのを反対していた。

 あくまで賭けに勝ったからという条件と師弟という関係でごり押ししたのだ。

 このままだと白紙に戻ってしまう。


「ちょっとちょっとー。

 うるさいよー。

 研究室まで響いてきてるよ」


 すると部屋を去ったはずのユハナさんが戻ってきた。


「ユハナ、あんたからもこの馬鹿に言っとくれ」


 するとユハナさんはソフィアでなくこちらを向いた。


「カイリ君は遠征行きたいの?」


「はい」


 ユハナさんはこちらの目を覗きこむ様にじっと見てくる。


「ふーん、いいんじゃないの?」


「あ?」


 導師の眼光がユハナさんに向く。


「だから、いいんじゃないの?」


「てめぇ、研究ばっかでソフィア並みにボケたのか」


「ソフィアちゃん並みにってひどいな導師」


「いや、あんたら二人が酷いからね!」


 この空気でよく突っ込めたな。

 いや、空気読めてないだけか。


「ボケてないさ。

 足手まといじゃないって証明すればいいんでしょ?

 それならヴァネッサちゃんが企画してるヤツに出ればいいさ」


「ユハナなにそれ?」


「今王都で話題になってる遠征隊参加への選考会さ。

 戦士枠と魔法師枠で別々に選考するんだ。

 国が大々的に行うから国民からはある意味お祭り騒ぎだよ。

 ソフィアちゃん、引きこもってばかりいるからそういう情報も入ってこないんだよ」


「うっ」


「師匠、少しは世間に興味持ってください。

 ってか日の光浴びないとカビますよ」


「がふっ」


「てめぇはまず仕事しろ」


「うぅ」


 三者三様に説教されうなだれるソフィア。


「ってか今のカイリのが一番キツイからね!」


「選考会ですか、それに受かれば認めてくれます?」


「シカト!?」


「そうだね。

 考えてやってもいいよ」


「いや、そんなあやふやなのじゃなくて確約してください」


「っち、そういうところは子供らしくないね。

 なら選考会で残ると遠征隊員と試合が出来るらしいからそれに勝てたら認めてやるよ」


「選考会で残ったら参加確定じゃないんですか?」


「軍とギルドからは大方の目星の奴は遠征に組んでるし、あとの有力者は国防や組織運営で外せない奴等さ。

 あたしやユハナみたいにね。

 それ以外の奴等が出る選考会じゃあ残ったとして実力に疑問が残る。

 その為の遠征隊員との試合さ」


「遠征隊員は討伐本隊から出るんですか?」


「討伐本隊の連中は軍では役職持ち、冒険者ならパーティーを率いてるんだ。

 暇にしてるのはそこのぐーたらエルフだけだよ。

 道中の護衛や援護する同行隊から出すって話さ」


「わかりました。

 受けます」


「カイリ君いいのかい?」


 ユハナさんは心配して……いや、してねぇなこの人。

 楽しそうな顔して確認してきた。


「ええ、足手まといになるつもりはないですから」


 どっちみちこれに残れないようなら本当に足手まといにしかならないだろう。

 別に俺はソフィアと一緒にいたいからただついていくわけじゃない。


「なら騎士団の窓口や冒険者ギルドで申込み受付けしているから行ってくるといいよ」


「ユハナさん、ありがとうございます」


 そう言ってユハナに頭を下げ、次に導師に頭を下げる。


「話は済んだ。

 もう帰っていいよ」


 その言葉で部屋を後にしようとすると導師に呼び止められた。


「ああ、あと明日から召喚魔法教えてやるから来な」


「いいんですか?」


「二度は言わないよ」


「ありがとうございます」


「……ありがと」


 ソフィアと二人でお礼を言って部屋を後にした。










 ~魔法師団団長室~


「導師、いいんですか?」


「何が、いいんですか?だ。

 ふっかけてきたのはお前だろ」


「ははっ」


「ふん、まあまず選考会で残るのは無理だろう。

 何せあの坊主じゃあ魔法師枠で参加出来ないからな」


「あ、やっぱりその規定知ってました?

 魔力量がBクラスに満たないものは魔法師選考に参加資格なしって。

 ならはじめから認める気ないんですか?」


「別に魔法師枠じゃなくてもあたしは構わないさ。

 戦士枠だろうとね」


「あと3年、いや2年あれば魔法師枠行けたかもしれないですけどね。

 あの年で魔力量Cランクの下位は大したものですよ」


「ああ、だから馬鹿弟子が出払ってる間はきっちり面倒みてやるさ」


「過保護ですねぇ」


「はあ?」


「ソフィアちゃんに弟子が死ぬような経験させたくないんですよね」


「遠征に足手まといだからだ」


「いやいやまたまた~」


 ユハナは得意気に笑う。


「それに何よりソフィアちゃんが命を落とすことが無いように心配して一一」


 導師は、「ユハナ」と言って遮る。


「決裁」


「では、失礼しまーす」


 部屋にはクッカ1人になる。


「ふん、この歳になれば弟子の方が先に死んでも別におかしくないわ。

 つたく、長生きはするもんじゃないね」


 導師は懐からパイプを取り出し深く吸うとゆっくりと煙を吐く。

 白い煙が揺らめく様を遠くを見るように見つめていた。




今日は、あといくつか投稿予定です

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