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黒龍殺しの付与術師  作者: しきな かいどう
少年期 ~王都編~
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第53話 ソフィア&カエサル無双

 翌朝、ソフィアは王都西部郊外に乗り合い馬車で20キロメートル程進むと何もないところで降車を告げた。


「嬢ちゃん、目的地の隣町はもっと先だぞ。

 こんな森の中で降りても何もない無いし、人拐いに連れてかれちまうぞ」


「あー、大丈夫大丈夫。

 ここから知り合いの乗り物で行くんで」


「こんなところでか?

 気を付けなよ。

 最近また人拐いの事件が増えてるらしいからな」


「わかった!

 ありがとねおじさん!」


 心配する気の良い御者に礼を言い、馬車が見えなくなるまで見送った。


「まあ、ここまで来ればいっか」


 ソフィアはそこでカエサルは召喚する。


『こんなところでなんだ?

 目的地は北の渓谷のはずだが』


「王都の中であんた喚んだらババアに気付かれるじゃん」


 ソフィアはガチでクエストの報酬を取りに来ていた。


『はあ。

 なら行くぞ』


「待って。

 ちょっと野暮用でここから南に運んでくれない?」


『……』


「すぐ済むからそんな顔しないでよ」


 カエサルはまた一つため息をつくと周囲に風を集め一人と一体は宙に浮かぶ。

 そのまま南に30分程進むとソフィアが「ここ」と指示する。

 降り立った先は色鮮やかな花畑だった。


 ソフィアは他の花を踏まないように歩くと赤色の花を一輪だけ摘み袋にしまった。


「じゃあ行こうか」


 カエサルにはその花がいったい何を意味するのか知らない。

 カエサルとソフィアの付き合いは長い。

 それこそ導師と出会う前からの縁だ。

 それでもソフィアはエルフでカエサルは精霊。

 住む世界が違うし、お互いに進んで深入りする性格ではない。

 そんな性格だからこそ一輪の花は彼女にとって意味のあるモノだということがわかった。


『もういいのか?』


「ええ、充分」


 ソフィアは魔道具の袋を上から撫でながら笑う。






 再び上空に飛び目的の渓谷へと向かう。


「そろそろ高度を上げようよ」


 目視で敵の魔獣に見つかるのを嫌いソフィアが提案する。


『何を言っている。

 不意打ちでは勝負になるまい。

 それにこちらから探すより向こうから見つけさせた方が手間が掛からん』


「それもそっか」


 他の者が聞いたら呆れるほど傲慢な会話だ。

 そんな会話をしていると下の森から体長3メートルを越える鳥形の魔獣が飛び立つのが見えた。

 数は3体。


「足らないね」


『大方様子見か、もしくは3匹で充分と舐められているかのどちらかだな。

 まだ手は出すなよ。

 一方的にやり過ぎると姿を見せずに逃げられる』


「はいはい、一気に出てくれば終わるのに」


 魔獣は大きく鋭い嘴を向け、高速飛行で迫ってくる。

 それを難なく避ける。

 魔獣はそれで終わると思っていたのか予想と外れ激昂し、大きな翼を広げた。

 すると羽一枚一枚がざわめき立ち、風の刃を無数に発生させる。

 ソレを見たカエサルが顔をしかめる。

 一見表情の変化はわからないが契約者で付き合いの長いソフィアはカエサルが機嫌を損ねたのがわかった。

 ソフィアは風の刃が迫ると風属性の上級魔法【風壁】で迫る刃を弾いた。

 カエサルに至っては右手を一振りでより強力な風の刃を放ち、魔獣側の攻撃を喰い破って一体を真っ二つにした。


「ちょと、最初は受けにまわるんじゃなかったの?」


『こんなお粗末な風を我に向けるなど不愉快だ』


(あーやっぱり怒ってるわ。

 まあ風の大精霊にあの攻撃じゃあね)


 難なく攻撃を退けたソフィア達だが決して魔獣の攻撃がお粗末だった訳ではない。

 ソフィアが【風壁】で弾いたが、これを他の魔法師、例えばBランクAランクの魔法師が同じ様に【風壁】で防いだならばたちまち無数の刃に喰い破られ致命傷は避けられなかっただろう。

 同じ魔法でも魔法の威力や効果は魔力量だけでなく魔力の“質”で異なる。

 その変化は下位、中位の魔法程顕著に現れる。


 カエサルの攻撃で一体が血を吹き出しながら落下していくと下の森から殺気が溢れ出す。

 並みの冒険者ならこれだけで戦意喪失してしまうだろう。

 4体の魔獣が飛び立とうとするが内2体は木の“枝”に絡まれ身動きは取れなくなる。

 そして枝は太くなり、獲物は押し潰されて破裂した。

 エルフが使える木属性魔法だ。

 エルフにとって森は比喩でなく本当に武器になる。

 その光景にぎょっとする上空の二体と飛び立ったばかりの二体。

 カエサルが空中で“足踏み”した。

 端から見たらペタペタという擬音がしてきそうな可愛らしい仕草だ。

 だがそれだけで空に見えない巨大な“壁”が出来る。

 その“壁”は落下し飛び立ったばかりの二匹にのし掛かるとそのまま地面を押し潰して深さ3メートルの四角いクレーターを作った。


『むっ、やり過ぎたか』


 既に残りの2体は敵意を無くし別々に明後日の方向に逃げた。

 少しでも生存確率を上げるためだろう。


 一体はカエサルが体を動かすために追い、もう一体にはソフィアが魔法を試し打ちする。


 結果、猛スピードで逃げた魔獣の前に回り込んだカエサルが右手を上から下へ振り下ろすとそれは左右に分かれ落下した。


 そしてソフィアが試し打ちしたのは一つの【火球】だが、もちろんただの火球ではない。

 質だけでなく大量の魔力量が練り込まれ圧縮したものだ。

 火球は魔獣を通り過ぎるとソフィアが“えい”と一言。

 すると当たってもいないのに弾け、空中に半径10メートルの丸い爆発を作る。

 昔カイリが川原で放ったモノに似ているが、威力、範囲が違うし、何より弾けた際に球体状に範囲固定された空間から炎が漏れていなかった。


『ほう、面白い魔法だな』


 カエサルがソフィアの魔法に興味を示す。


「カイリが似たようなのやっててちょっと“改良”してみたの」


 軽くやって見せた改良はまだカイリにはとても真似できない芸当だった。


「ってか何であたしの方が周りに気を使って魔法放ってるのよ!

 あのくぼみ見たら私かカエサルってバレるじゃん!?」


『……我は報酬を破棄するのだからアレはソフィアが直しておけ。

 エルフは土木作業が得意だろう』


「土木言うな!」


 そう言いながらソフィアは土属性魔法で地面をならすと、木属性魔法で草や木を再生させる。 


「取り敢えずクエストクリアね!」



 活動報告にある通り本日複数投稿予定です。

 次はお昼頃にあげます。

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