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黒龍殺しの付与術師  作者: しきな かいどう
少年期 ~王都編~
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第52話 暇人、依頼を受ける

 カイリとソフィアが魔法師団を訪ねてから3日が経つ。

 その際、多少のいざこざ(もちろんソフィアとクッカの)が起こったがなんとか今は無事宿に戻っていた。

 いざこざの内容はあまりにくだらないのでここでは一旦割愛する。


 王都の宿屋でソフィアが昼寝(といっても朝からずっと寝たままなのだが)していると部屋がノックされた。

 現在部屋にはソフィア一人である。



 カイリは相変わらず夜抜け出しては修行を続け、そのあと気分転換に夜の散歩、そのままクッカ導師のところへと修行に行っていた。

 しばらくクッカ導師がカイリの修行をつけてくれることになったのだ。

 カイリは夜抜けてからは宿に戻らずに導師のいる魔法師団に向かう。

 時刻はまだ日が登り始めたところ。

 向かうには早すぎるのだがそれには理由がある。

 世話になる日は自主的に雑用をこなしにいっているのだ。

 この点だけでも魔法師団関係者からは驚かれた。

 あのグータラの弟子がこんなまともなんて、と。

 一番喜んだのは導師だ。

 魔道具越しに喋ったことはあったが、実際会うまでは信用していなかった。

 あの馬鹿弟子が連れてくるので才能はともかく性格は難ありに違いないと思っていたのだ。

 しかし実際に会ってみると礼儀正しく、真面目な少年だった。

 若干子供らしからぬすれたような達観した発言もあるがその程度あの馬鹿弟子に比べればなんでもない。


 そんなわけで現在魔法師団の中でカイリの評価はうなぎ登り。

 逆にソフィアの評価は「弟子はこんなしっかりしているのに」とだだ下がりだった。

 弟子が評価されれば師匠も評価されるというのは真面目にやっているものに対してであり、怠けて評価上がるほど世間は甘くなかった。



 話は宿屋に戻る。

 部屋のドアをノックしても返事がないことから来訪者は1つため息をつくと部屋の中へ威圧を放った。

 一流の者ならこれで起きる。

 いや、一流以前に普通ならノックで起きるのだが。




「……」





 起きなかった。

 仕方ないので威圧の中に殺気を混ぜ混むとようやく部屋の中から物音が聞こえた。


「う~、うっぷ……気持ち悪い。

 で、何?」


 扉が開き二日酔いのソフィアが顔を出した。


「ひどい顔ですよ先輩」


 そして来訪者はヨーゼンだった。


「殺気混ぜないと起きないのやめた方がいいですよ」


「威圧の時点であんたの魔力だって気付いたから二度寝しようとしたの」


 理由を聞いてさらにヨーゼンはため息をつく。


「で、何?

 殺気までわざわざ混ぜるんだから大切な用事あるんでしょ」


「先輩が遠征前で、お金とか色々入り用かなと思ってクエスト持ってきたんですけど二日酔い辛いみたいですし帰りますね!」


 ヨーゼンは満面の笑みで踵を返す。


「お金!?お金待って!」


「お金じゃなくてクエストです」


「入って入って!まだ空けきってないワインとつまみあるから!」


「そこは出来ればお茶にしてください。

 あとすぐ本部に戻らないといけないのでいりません」


「うへー、相変わらず忙しそうね」


「ええ、なんで内容を単刀直入に言います。

 ここから200キロ離れた北の渓谷にAランク魔獣7体が目撃されました」


「200キロって結構近い上にAランクってちょっとヤバくない?」


「ええ、黒龍による北での異常で流れてきたんだと思います」


「それにしてもAランク7体は多いわね。

 国は?」


「遠征の準備で今てんてこ舞いですから。

 冒険者ギルドで何とかしてくれって依頼が来たんですよ。

 というかなんで魔法師団の幹部のあなたが知らないんですか?」


「それはゆゆしき事態ね!」


 勢いで誤魔化すソフィア


「まあ僕には関係ないことなのでいいですが。

 肝心の魔獣の種類ですが飛行型です」


「あー、確かに面倒なやつね」


 面倒どころか飛行型は対処が難しく、パーティー構成によっては高ランク冒険者でも一方的に壊滅させられることもある。


「先輩には4体を討ってもらって、残り3体は遠征に出ないSランク冒険者とAランク冒険者のパーティーを出します。

 何人くらい必要ですかね?」


『いらん』


 部屋に渋い男性の声が響く。

 しかし部屋にはソフィアとヨーゼンの姿しかない。


「あら、珍しいわねそっちから声掛けるなんて」


「……この声はカエサル様ですか」


『ほう、大きくなったな。

 いつぞやの少年か』


「お久しぶりですカエサル様」


『そのクエストだが応援はいらんぞ』


「え?ちょっ、あたし一人でやるの!?

 やだよ!ダルいじゃん!」


『たわけ。

 我だけで十分だと言っている』


「え、なんで!?」


『今回の遠征で余を召喚しないのならかまわんが、いきなり召喚して久しぶりの急激な魔力の減少でバテられてもつまらんからな。

 それとこちらも全力でやるのなら多少動いておきたい』


「やった☆

 働かずして報酬だー!」


「……」


『……』


 不労所得を喜ぶエルフを呆れた目で見る一人の青年と精霊。

 そして☆にイラっとくる。


「……カエサル様」


『ああ、3匹は契約主に譲ろう』


「ちょっ、いや、いらない!」


「なら報酬はカエサル様に」


『そうだな。

 我には人の世界の金など要らんが貰っておくか』


「わかったわよ!やりますぅー」


「それじゃあ詳しいクエスト内容はこちらの紙に記載してありますので」


「ちょっと待った!」


「はい?」


「報酬はあたしとあたしの魔力で現界した精霊で終わらすんだからあたしの総取りよね?」


「先輩、これは本来国が対処すべきところを冒険者ギルドが請け負ったのです。

 なので魔法師団という王国の組織に所属する先輩に報酬を払うのはお門違いです。

 そうですね……王国、いえ導師に報告すれば国からの今月分の賃金と特別手当てくらいは出るかもしれませんよ?」


「だめ!絶対冒険者の報酬より少ないじゃん!」


「そうですね、先輩がこれを他言しなければ私らも黙って報酬をお渡しします」


「なら王国から冒険者ギルドへの依頼金の8割で一一!」


「先輩……本来ギルドの取り分は3、冒険者が7です。

 決して冒険者をないがしろにしてはいけないとギルドより冒険者の取り分を大きくしています」


 ヨーゼンのその言葉に対しソフィアは小さな声でつぶやく。

「……ランク別の上納金やクエスト失敗時の罰金があるくせに」


「聞こえてますよ。

 それも必要な措置です。

 先輩は元は冒険者ですが今は違います。

 これを見過ごすリスクをギルドが犯すのですからギルドの取り分は7、先輩が3です」


「さん~!?

 それは暴利よ!」


「先輩の8の方が暴利です。

 嫌なら他へ持っていきますよ」


「ふん、そんな脅ししたって!

 あたしがいないとクエスト達成出来ないから持ってきたんでしょ」


「SSクラスの実力者で暇そうにしているのが先輩しかいないから持ってきたんです。

 今討伐に向けて本隊に参加する“鍛治師”も“弓姫”も”餓虎”もみんな忙しいんです。

 けど僕が頭を下げて無理を言えば動いてくれます。

 どうします?」


「うう~っ!

 6・4!」


「3・7」


「5・5!」


「3.5・ 6.5」


「4.5・5.5!」


「決まりです。

 先輩が4.5、ギルド側が5.5です」


「あっ、違うの間違って逆!逆!

 言い間違えたの!

 わたしが5.5!

 あっやっぱり6!」


『もうよいであろう。

 人の金勘定に付き合うつもりはないぞ』


「それでは先輩そういうことで」


「むぅ」


 ソフィアは不満顔でヨーゼンを見送ると部屋の一角、カエサルの気配のするところへ一瞥した。


「どういうつもり?」


『なに、貴公もたまには力を出して勘を取り戻しておいた方がいいだろう』


「そうじゃない。

 何かあったの?」


「…………」


「話すつもりがないならいいけど」


 ソフィアがカエサルから視線を外す。


「明日、喚ぶからね」


「ああ」


 一言返しカエサルの気配が部屋から消える。


 ソフィアは何かを考えるかのように目を閉じた。





いざこざは後日投稿予定です。


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