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黒龍殺しの付与術師  作者: しきな かいどう
少年期 ~王都編~
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第51話 副団長ユハナ

 

 ~魔法師団執務室~


「で、この報告書にカイリの名前はあるが、あのバカたれの名前はないねぇ」


 机には騎士団団長とは見た目が正反対の華奢で知的で妙齢の女性が腰かけていた。


「導師、ソフィアちゃんは今日はずっと宿に閉じ籠ってたらしいよ」


 その報告に導師キッカは顔をしかめる。

 彼女を魔法師団団長でなく導師と呼ぶのは魔法師以外の者からすれば騎士団団長と区別しやすいからというのがあるが、魔法師からすれば“導師”とは数多くの魔法師を育ててきたことへの敬称だ。

 実際、キッカにソフィアの怠惰を報告している男性、魔法師団副団長ユハナもその一人だ。

 彼は魔力量こそソフィアに及ばないものの、魔力操作の緻密さ、そしてオリジナル魔法を編み出すセンスにあっては王国随一と言われている。


「王都郊外とはいえ派手に魔力を撒き散らして大精霊まで召喚してやってきたと思ったら引き込もってるだあ?

 おまけに弟子には一人で買い物に行かしてかい」


「ソフィアちゃんらしいねー」


 ユハナの間延びした声にキッカはさらにイライラする。


「らしいじゃないよ!

 弟子を取れば少しは変わるかと思えばあの娘はっ!」


「ははっ、ソフィアちゃんがそんな簡単に変わるわけないって。

 あ、あとこれはヨーゼン君から聞いたんだけどソフィアちゃんの弟子が一人で買い物に行ったのは本人の意思らしいよ。

 だから言っとくけど何も知らない土地を一人で行くようにソフィアちゃんが指示した訳じゃないから」


「カイリの?」


 キッカとカイリは何度か通信魔道具を通してやり取りしたことがある。

 確かに子供にしてはやけにしっかりした子だった。


「うん、弟子君は一人で行くからその間に寮の部屋掃除するようにってソフィアちゃんに」


 その言葉を聞いたキッカはうなだれた。


「はあ、情けない」


「まあまあ。

 ところでなんでソフィアちゃんこんな時期に弟子君連れてきたんだろ」


 キッカも一番気になっていたのはその部分だ。


「あんた、ヨーゼンの坊主んところ行ってきたんだろ。

 なんか聞いてないのかい?」


「特には。

 ヨーゼン君も暴れた冒険者の件で忙しかったからね」


 既に日は沈んでいるがおそらくヨーゼンはその処理に今日は追われて帰れないだろう。


「明日朝一に使いをやって二人を呼んどくれ」


「それなら僕が行くよ」


「あんたが?」


 こんな雑用、副団長の仕事ではないし、何よりユハナが進んで何かするときは大抵は研究に関することだ。

 仕事に関してはまともなユハナだが研究が絡むと途端に暴走ぎみになる。

 どうせ駄目だと行っても行くだろう。

 魔法師団は騎士団と違って派閥争いがない。

 その理由の一つがNo.2のユハナ、No.3のソフィアが御輿として担ぐには自由過ぎて担ぐ者の行きたい方向に行けないというのがある。

 担ぎ手が振り回されて終わりだろう。

 他を担ぐにしてもその二人が別格過ぎて派閥を形成したところで組織内での影響力などたかがしれている。


「そんな雑用べつにあんたが行かなくてもいいじゃないか」


「可愛い妹弟子を迎えにいくのは雑用じゃないよ」


 そんね事をのたまうユハナを胡散臭そうな目でキッカは見る

 ユハナは最もらしいこと言っているが建前なのはキッカにバレバレだ。

 もっともユハナも別に本気で誤魔化そうとしているわけではない。


「勝手にしな。

 正午までには連れてくるように」


「了解」





 翌日、明朝。

 カイリは昨日のいざこざがあったことから武具屋にはソフィアと一緒に午後行くつもりで午前は魔法の修練に充てるつもりでいた。


「師匠、今日の午前中は何するんですか」


「うーん、午前中だけじゃあ大したことは出来ないし講義の時間にしよっか。

 何か聞きたいことある?」


「あーそれじゃあこれなんですけど」


 カイリはヨーゼンからもらった腕輪の魔道具を見せた。


「あー昨日言ってたやつね。

 そうだね、売ると大体……」


「いや、売る前提の話じゃないですよ」


「そうなの?

 けどその腕輪の効果、君の付与魔法に比べたら大したことないよね?」


「まあそうなんですけど」


 今日の早朝、自身の付与魔法と魔道具の効果を調べたところ付与魔法の方が効果が高い上に魔力効率が大きく違った。

 魔道具を通して発動する方が魔力消費が多いのだ。

 これは一概に魔道具が悪いのでなく、カイリ自身のユニークスキル“付与術師”による強化魔法の魔力効率が良すぎるだけの話だ。


「自分で使うことはなさそうですね。

 師匠も……無詠唱ですから必要ないですよね」


「え、そんなことないよ。

 可愛い弟子からの贈り物ならあたしは何でも嬉しいし貰っちゃうぞ☆」


 ぞ☆の部分でやけに可愛らしく言ったけど、これ絶対売る。

 あとちょっとイラっときた。

 なので代わりに雑巾を渡した。


「え、何これ?」


「可愛い弟子からの贈り物です」


「いや、え?」


「取り敢えず昨日の晩酌で散らかした部屋掃除してください」


「いや~それじゃあ講義出来ないし一一」

「掃除しながら講義してください」


「……はい」




 ユハナがソフィアの泊まる宿屋の前まで来ると二階の窓に銀髪三編みの少女が見える。


(あれはたしかソフィアちゃんの弟子君か。

 報告書で知ってるけど、女の子にしか見えないな)


 どうやら魔法の講義中らしく、魔道具などの単語が微かに聴こえてきた。


(おお、あのソフィアちゃんが弟子にちゃんと教えてる!

 しかも午前中に起きて!?)


 魔法研究にばかり関心がいってしまうようなユハナにさえそれは衝撃的な光景だった。

 しかし、そのあとさらに衝撃的光景が待っていることを魔法師団副団長はまだ知らない。


 ユハナはソフィアを驚かせよう思い風魔法でそっと浮かび上がる。

 さりげなくユハナはやってみせたが、これは実はとても高度な技術だ。

 自分の体を浮かせるにはそれなりの魔力を要する。

 そして必要魔力量が多いほど収束及び方向性を持たせるのは難しくなり、ましてやそれを周囲の人間が見ていなければ気付けないほどの静かさでやってのける。

 それを難なくこなしてしまうのが魔法師団副団長ユハナという男だった。


 窓を覗くとそこには、まだ幼く女の子のような少年が腕を組みながら足元を見下ろし、その足元にはハアハア言いながらひざまづくソフィアの姿があった。


(…………)


 妹弟子が変わり者だとは思っていたけれども、まさか変態だったとは知らなかったなと神妙な顔になるユハナ。


「誰ですか?」


 カイリは窓の外に浮かぶ美男子に気付き誰何する。

 そこで魔法で浮きながらもこちらに魔力を感知させなかったことに気付き、さらに警戒心をあげる。


「ああ、これは失礼。

 僕は君の足元でハアハア言っている変態の上司で兄弟子のユハナというんだ。

 よろしくね」


 この言葉にソフィアが床からバッと顔を上げる。


「げっ!ユハナ!?」


「久しぶりだねソフィアちゃん。

 流石にグータラでほぼニートのソフィアちゃんがいつの間にか子供の足元でハアハア言う変態になっていたとは知らなかったよ。

 大丈夫。

 お兄ちゃんはそれでもソフィアちゃんを見捨てないから。

 導師と協力して社会に顔向け出来るような真人間になるよう矯正してあげるから」


「誰が変態か!

 これは床掃除していただけだし!

 あとお兄ちゃん言うな!

 兄弟子というだけで兄貴ぶるな!」


 雑巾を片手に立ち上がるソフィア。

 カイリはソフィアの知り合いとわかり取り敢えず警戒心を解く。


「あの、取り敢えず中へどうぞ」


 ユハナを部屋の中へ案内する。



 取り敢えずソフィアに掃除させて綺麗になったテーブルに飲み物を出しおもてなしする。

 するとユハナはマジマジとカイリを見る。

 流石に居心地が悪く何ですか?と訊ねるとユハナごめんごめんと笑いながら答える。


「いや、君があまりにもしっかりしてるからさ」


「そうですか?」


「あのソフィアちゃんの弟子だからとんでもない子かと思ってて」


「お言葉ですがさすがに失礼ですよ。

 一緒にされちゃあ」


「え、そっち!?」


 兄弟子と弟子、二人のやりとりに思わず声をあげるソフィア。


「で、何の用なのユハナ?」


「導師が会いたがってるよ」


「うげっ」


「怒られると思ってるんでしょ?

 導師はなんだかんだソフィアちゃんのこと気にかけてるからね。

 会えば内心喜んでるんだよ。

 ……それとこれとは別に怒られると思うけど」


「結局怒られるんじゃん!

 ってか何ユハナがわざわざ来てるの?

 逃がさないようにってそんな怒ってんの?」


「ああ、違う違う。

 ちょっとソフィアちゃんの弟子のカイリ君を見てみたくて」


「なんだ一一」


「カイリ君、無詠唱使うのかな?」


 その言葉にソフィアとカイリは驚きを隠せない。


「なんでですか?」


「だって、この部屋に魔法発動を補助する道具、杖やメイスがない。

 いくら部屋の中だとしても魔法師にとっての武器を魔法の袋にしまっておくほどソフィアちゃんもボケていないでしょ?

 それにカイリ君は僕を発見して警戒すると同時に魔力全体の流れが発動直前の動きにまで引き締まったからね。

 ソフィアちゃんの無詠唱のときとそっくりだし、ああ、いざとなったらすぐ発動出来るんだなと思ったんだよ」


 カイリにも他人の魔力を関知することは出来るが、ユハナのように正確に魔力の流れを把握することは出来なかった。


「あとそれとは別に、君の魔力の回路はどこがいびつなんだよね。

 いや、魔力の流れ自体は洗練されていてとても綺麗だ。

 毎日基礎訓練をしているのがよくわかる。

 ここまで綺麗なのは魔法師団でも少ないよ。

 ただ流れる筋道がね、なんか普通と違うんだよね。

 カイリ君、特殊な系統魔法が使えるんじゃない?」


 カイリは驚き思わずソフィアを見る。


「相変わらず気持ち悪いくらいの観察眼ね。

 どっちみち導師には話す予定だったしいいわ。

 導師のところでまとめて説明するから」


 二人は午後の予定を変更してユハナと魔法師団へと向かった。

 “神様の交換日記”という別作品を書き始めました。

 そちらは黒龍殺しの付与術師とは全く関係ない話になります。

 しょーもないことが書きたくなったら更新される作品なのでメインで書いてるこちらの執筆速度には支障ありません(もともと速くはないですが)

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