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黒龍殺しの付与術師  作者: しきな かいどう
少年期 ~王都編~
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第48話 人を持ち上げるときは前置きが重要

 詰め所に連れていかれ事態のあらましを聞かれるがまま答えた。



「こんな子供がほんとに……」


 現場にいなかった衛兵には信じられないようだ。

 一方、現場にいた若い衛兵は興奮しながら話す。


「本当なんですよ先輩。

 Cランク冒険者を相手にボッコボコですよ!」


 人聞きの悪いことを。

 実質攻撃は蹴り一発たけだ。


「君は何者なんだい?」


 先輩と呼ばれていた衛兵は戸惑いながら聞いてきた。


「カイリと言います。

 魔法の師匠と一緒に昨日、王都に来ました」


「へー!すごいねその年で魔法なんて!

 あっもしかして“学院”に入学するのかな?」


「いえ、そういうわけではないんですが……。

 あの、とりあえず話すことは話したのでもう帰ってもいいですか?」


「ああ、そのことなんだけど。

 冒険者ギルドに今回の件を連絡したらギルド側も君に話しを聞きたいとか言っていてね。

 もうすぐ来ると思うから待っててね」


 はぁ、かれこれ二時間はつかまっている。

 いい加減怠くなってきた。


「先輩、あいつら俺らが言ったこと信じてないんですよ!

 あのごろつきどもは」


「そういう言い方はやめろ」


「だって先輩、数年前に多発した集団誘拐犯は元冒険者の集まりだって話じゃないですか。

 巷じゃあ冒険者は一攫千金の夢の職業だの魔物と戦う猛者だの言う奴らもいますけどそんなの金が絡むからやってるだけのごろつきどもで、本当に国民のことを考えて戦ってるのは俺たちじゃないですか!」


「やめろと言っている。

 子供の前だぞ。

 それにそんなことは自分で主張するものではない」


「……はい、すみません」


「まあ、そりゃあ冒険者に憧れるものも多いさ。

 俺だって子供のころは冒険者に憧れたもんだ。

 けどやりたいことがあって軍人になったんならそんなせせこましいことは言うな。

 それに王都の子供たちが今一番憧れているのはクラウス様だ。

 それは俺らにとっても誇らしいことだろ」


(あんまり軍と冒険者ギルドは仲良くないのかな?まあソフィアとヨーゼンさんは仲良さげだったけど)


 コンコン


 その時、ドアが叩かれるとともに開き、まだ17歳になろうかという兵士が顔を出す。


「あ、あの小隊長!ギルドの人が来たんですけど、」


「ああわかった。

 通してくれ」


「いや、そそそれが、っふ、ちょっ、が来ていて」


 なにやら若い兵士は焦っていて何を言いたいのかわからない。


「まさか、被疑者の冒険者仲間が乗り込んできたんじゃないだろうな!」


 小隊長の言葉に隣にいる兵士も殺気立つ。


「その仲間ですが、一応こちらで一時的に拘留してあります。

 もっとも単独での突発的な暴走であって、仲間も被疑者の癇癪持ちには辟易していたので仲間による復讐は心配いりませんよ」


 ドアがさらに大きく開き若い兵士の後ろから現れたのはヨーゼンだった。


「ギルド本部の副長……殿」


 小隊長も隣の兵士も驚いている。


「今回はうちの組織の者がすみませんでした」


「あ、いえ、あのなぜ副長殿が自らこちらへ」


「今回の被害者の武具店の店主もそちらの協力者も私の知人ですので私自身が赴くのが一番かと思いまして。

 お久しぶりですカイリ君」


 その言葉に兵士たちは驚いてこちらを見る。


「はい、お久しぶりです。

 えっと、お疲れ様です」


「今回はうちの冒険者が迷惑をかけてしまい申し訳ありませんでした」


「あ、いえ、嫌味で言ったわけでなくてホントに忙しいのにこんなことに巻き込まれて大変だと思って」


「ははっ、おっと失礼。

 巻き込まれたのは僕でなくカイリ君の方ですよ。

 ……暴れた冒険者は強かったですか?」


「いえ」


 あれなら以前戦った盗賊の頭の方が強かっただろう。


「そうですか。

 一応彼もCランク冒険者なのですが相手になりませんか」


「あれでCですか」


「ええ、本来の実力はDの中位なのですが彼の所有する腕輪が稀少な身体強化の魔道具でして、それを考慮してのCランクです」


「はあ、なるほど。

 それにしても武器を売ってもらえなかっただけでなんであんなに店で暴れたんですかね?」


「焦っていたんでしょう」


「焦りですか?」


「遠征まで2ヶ月を切りましたからね。

 冒険者ギルドからも遠征に手を貸していて実力のあるパーティーをいくつか送っています。

 遠征に加われば討伐本隊でなくてもランク考査に大きく加味されますし、凱旋した際には市民からは英雄のように扱われるでしょう。

 しかし、彼のパーティーランクはDランクで彼自身も魔道具の力を使ってようやくCランク。

 それにギルド内でも評判のよくない男ですからね。

 選考に洩れるどころか選考するに値しないので遠征メンバーに入れなかったんですよ」


「それであの武器を欲しがってたんですか?

 腕輪の魔道具みたいに自分の価値を高められるって」


「彼は10年ほどDランクでしたがたまたまダンジョンであの魔道具手にいれてCランクに上がりました。

 なので己の力でなく道具さえあればと勘違いしたのでしょう」


「なるほど」


「カイリ君はこのことをどう思います?」


「どう思うとは?」


「道具に頼るということです。

 こういう話を聞くと大概の人は不快感を覚えたり、小馬鹿にしたりするのですが君にはそういう雰囲気を感じなかったので」


「ええと、まあ道具も本人の力の一部だとは僕は思いますので。

 それを使いこなせるならいいと思いますよ。

 使いこなすには結局は本人の技量も必要になると思いますけど」


「なるほど、そう考えるのですね。

 なら今回の迷惑料としてこれを受け取ってくれませんか?」


 そう言って渡してきたのはあの冒険者が着けていた腕輪の魔道具だ。


「これは」


「彼から回収したものです」


「え、僕がもらっていいんですか?

 普通こういうのは軍に押収されるんじゃ……」


「ええ、ですがギルドの規則で冒険者が何らかの犯罪行為、それに準ずる行為をおこなった場合、使用した武器等をギルドが押収出来るという取り決めがあるんですよ」


「それはギルドのルールであって王国の法律じゃないですよね」


「まあそこはギルドも王国ももちつもたれつですから。

 それに今回の主要凶器は片手剣ですから王国が押収したのはそちらです」


 そう言ってヨーゼンは微笑んだ。


(腹黒!ちょっとひくわ。

 ソフィアが俺とヨーゼンさんは似てるって言ってたけど俺ここまで腹黒くないし)


「まあカイリ君の場合、身体強化の魔道具なんていらないかもしれませんが売るだけで大金になりますからとっといてください」


「わかりました」


 腕輪を見るとビー玉ほどの大きさの透き通った石がはめられていた。


「これは魔石ですか?」


「ええ、そうですよ。

 魔物にも魔石はありますが、魔道具に使われるのは主に自然に発生した結晶の魔石、ダンジョンなどから発掘される場合が多いです。

 天然モノの魔石を見るのは初めてですか?」


「そういえばないですね。

 魔道具の袋にはこんな石ついてなかったし」


「先輩の袋は特製ですからね。

 素材そのものが特殊なので魔石がついてないんですよ。

 普通の容量の袋は魔石ついてますよ」


「知りませんでした」


「ところでその先輩は?」


「多分まだ宿で寝てますよ」


「もうお昼過ぎてますよ?」


「だって師匠ですよ?」


「「……」」


「カイリ君、よかったら明日僕が武具屋を案内しようか?」


 気を使われてしまった。

 しかもとても忙しいとても偉い人に。


「いえ、大丈夫ですよ。

 それに今日、僕が一人で行動してたのは自分の部屋をちゃんと掃除するように師匠に言い渡して置いてきたからであって……」


「「……」」


 なんだか言ってて頭痛くなってきた。

 ヨーゼンさんもなんとも言えない顔をしてる。

 いや、ソフィアにだって良いところはあるのだ。

 遠征の時は身を案じて反対してきたし、宿に一緒に泊まったり買い物についてこようとしたのだってなんだかんだで弟子を心配してのことだと思うのだ。


「いや、そんな師匠ですけど尊敬してますよ!」


 ……なんだろう、はしょりすぎたせいか尊敬の言葉が薄っぺらく感じる。

 駄目だ話題を変えよう。


「あの、そういえば武具屋で例の素材売却したの僕だって店の人知らなかったんでそれだけお店に伝えてもらえますか?

 証明書見せる間も無かったんで」


「わかった。伝えておくよ。

 あと一週間後なんだけど本部に顔だしてくれるかな?

 前に言ってた指導員を紹介するから」


 ああそんな話もあったな。


「ありがとうございます。

 けど魔法に関しては師匠から教わるつもりですので」


 ソフィアと同じ魔法師団の人ならともかくギルドの人間に魔法を教わるのは弟子の立場としては良くないと思うし、やはり魔法師としてのソフィアは尊敬している。

 ……別に無理してソフィアを上げているわけではない。


「その点は僕も先輩に失礼だと思って用意してないよ。

 指導員は近接戦闘の戦士職と盾職の二人に頼んだから。

 戦闘面だけでなく冒険者としての心得や知恵も聞いておくといいよ。

 冒険者にならなくてもきっと役立つと思うから。

 特に戦士職の獣人は優しいから頼るといいよ」


 なんかヨーゼンさんの最後の笑みが気になったがありがたい申し出だ。

 遠征中に実力をつけるのもそうだけど知識の面で不足しているのは否めない。

 その申し出を受け、話も終わり今日は一旦宿に帰ることにした。


 その際、小隊長に「君の師匠って何者なんだい」と聞かれたので「尊敬する魔法師団幹部ソフィアです」と答えて宿に帰った。


 部屋の扉を開けると朝と変わらぬ態勢でソフィアが寝ていたのでとりあえず思いっきりベッドをひっくり返した。


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