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黒龍殺しの付与術師  作者: しきな かいどう
少年期
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第45話 狐娘と狸娘(狐娘視点)

 私は何も言えなかった。

 ソフィアさんにカイリさんがついて行くと行ったとき私もと言いたかった。

 けどカイリさんとポコナさんの勝負を観て私では足手まといにしかならないのがよくわかった。





 魔狼に襲われたときカイリさんは命がけで助けてくれた。

 あのとき、私は嬉しかった。

 助かるかもしれないことがじゃない

 自分の為に傷付き命をかけてくれる人がいたことが。

 そんなことを嬉しく思うなんて嫌な奴だ。

 最低だ。

 けれどそれ以上に嬉しいことがあった。

 独りで生きていこうとしていた私をカイリさんは家族として迎えてくれた。

 居場所をくれた。

 それと同時に得たもの。

 失う恐怖。

 今でもカイリさんが魔狼に殺されていたらと思うと怖くなる。

 嫌だ

 一緒にいたい。

 カイリさんと一緒に。


 カイリさんと暮らすようになってわかったこと。

 カイリさんは自身を虐めるかのように鍛練をする。

 それは剣技であったり魔法であったり弓であったりと。

 朝昼晩ずっとだ。

 食事の時や家の手伝い、ギル君達の面倒、あとは眠るときくらいしか家に居ないんじゃないだろうか?


 ある日の晩のこと。

 獣人族は人間族より聴覚や嗅覚が優れている。

 夜中御手洗いに行く時に裏口のドアが開く音が聞こえた。

 泥棒かと思ってこっそり見てみるとそれは外に出掛けるカイリさんだった。

 こんな時間に?と疑問に思い後をつけることにした。

 十分に距離を開けて足音をたてないように暗闇の中をついて行く。

 すると裏の林のなかで木剣を振るカイリさんを見つけた。

 その様子を隠れながら見ていると2時間3時間とさらに時間が経ち、カイリさんは全身汗を流しながらも鍛練を続けた。

 気付くと日が登り、今度は自宅に戻りゲインさんと稽古を始める。

 翌日は魔法の修行。

 さらに次の日は徒手による型というやつだろうか?

 見たことのない足さばきで一人で何時間も繰り返していた。

 朝食の時さりげなく何で剣や魔法を頑張るのか聞いてみると本気で考え込んで黙ってしまった。


「う~ん…………後悔を減らすため、かな?

 あとは、うん。自己満」


「自己満足ですか?」


「そう」


 私はてっきり何か高い目標があるのかと思っていた。

 ゲインさんのような尊敬される軍人さんになるだとかソフィアさんのようなすごい魔法使いになるとか。

 けれどカイリさんは別に軍人になるつもりも魔法使いとして生計を建てていくつもりも無いらしい。

 私は混乱した。

 ただそのときカイリさんは小さな声で「そうだ………」と独り言を言っていた。

 最後の言葉はあまりにも小さく私の耳でも聞き取れなかった。


 カイリさんは優しくて強くて、よくわからない人。

 この人の横にいるためには今のままじゃ駄目だ。

 私も強くならなくちゃいけないと思った。

 多分気付くとこの人はいなくなってる。

 そんな予感がした。


 それから私はソフィアさんに魔法を、ゲインさんに剣を教わった。

 正直剣はなかなか上達しなかったけど魔法は少しずつ上達していった。

 そんな中、ポコナさんが現れソフィアさんとカイリさんが遠征の為に町を出ていくことになった。


 ああ、私 間に合わなかったんだ





 それから話はトントン拍子に進んでいき二週間後にカイリさんとソフィアさんは王都に行くことになり、私はポコナさんから引き続き魔法を教えてもらうことになった。


 けど私は何のために魔法を覚えるのだろう。


 カイリさんと一緒に居たくて

 ソフィアさんに誉めてもらえるのが嬉しくて


 その二人がいなくなってしまう。


 翌日、ポコナさんから呼び出されていた。

 場所はいつもの修行してる山の中。

 けれど私は行かなかった。

 家の庭先で薬に使う植物をすり鉢で朝から磨り潰していた。

 途中アイリさんやアリスちゃんに話しかけられた気がしたけど……うまく頭の中に入ってこなかった。

 カイリさんは今日はソフィアさんと隣町のギルドへ昨日手続きしたギルドカードを受け取りに行ったっきりまだ帰ってこない。


「おい」

 ごりごり←(すり鉢の音)


「おいこら!」

 ごりごりごり


「シカトこいてんじゃねぇぞ!」

 ごりごりごりごり


 なにやら声がする。

 ごりごり


 ふと見上げると目の前には顔を真っ赤にしたポコナさんが息を切らして立っていた。

 ごりごり


「あ、(ごりごり)おはようございます」


「おはよう(ごりごり)こざいます、じゃねぇよ!(ごりごり)

 今何時だと思ってんだ!」


 回りを見渡すとお日様が沈み、空が赤く染まっていた。


「あれ?(ごりごり)」


「ったくふざけんなよ(ごりごり)」


「(ごり)ナさん、何をそんな(ごりごり)してるんですか?」


「誰がゴリナだ!?あとカリカリな!ごりごりしてんのはお前だから!(ごりごり)

 っつかごりごりうるせぇな!!!」


 手を止めるとポコナさんは少し落ち着いたのか声量を落とした。


「で、なんで来なかったんだ?」


「……私、行くなんて言ってません」


「あ?」


「行くなんて言ってません!

 みんな勝手です!

 勝手に決めて勝手に進めて!」


「お前それは何のこと言ってんだ」


「……」


「はぁー、勝手なのはお前ら師弟だろうよ。

 姉御に急に呼び出されたと思ったら弟子の指導よろしくとかこっちの都合も聞かずに決めて、いざ弟子を呼んだら来ねーしよ」


「……」


「こっちは現役の冒険者なのに他の弟子を育てるとか意味分からんわ」


「なら辞めたらいいじゃないですか!

 幸いカイリさんはソフィアさんについきますし、ぱっとしないやる気の無い方が残ったんですから」


「お前本気で言ってんの?」


 するとポコナさんは呆れたようため息を吐く。


「お前、わかってねぇわ。

 私が呼ばれたのはお前だよ」


 私?


「姉御が言ってたよ。

 あたしじゃ教え方が悪くてククルの為にならない。

 自分で教えたいのに教えられないもどかしさを感じたのは初めてだ、ってよ」


「それは私の覚えが悪いから」


「ちげえーよ。

 姉御から修行の進捗状況は聞いてる。

 言っとくけどお前の習得速度は十分速いからな。

 姉御とあのガキが異常なんだよ。

 あとこれも言ってたわ」


「?」


「言いふらすようなことじゃないから黙っとけよ。

 姉御は家族と暮らすってことがなかったからお前といると妹ってこんな感じなのかなって毎日が楽しかったんだとよ」


「そんな風に……」

 思ってくれてたなんて知らなかった


「置いていかれたと思ったんだろ?

 置いていく方にだって思うところはあるんだよ」


「でもっ!」


「ああ、そうだよ。

 置いてかれたことには変わりねえんだよな。

 なら次はついていけるように力つけるしかねえだろ。

 見返すしかねえだろ」


 ポコナさんを見ると真っ直ぐとこちらを見下ろしていた。


 ああ、そうか

 この人も


()()()、どうすんだ?」


 その言葉で私は足に力を入れ、立ち上がりった。

 彼女から目を反らさないまま。


 うん、そうだ

 見えなくなったのなら追えばいい

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