閑話 『視るもの』
カエサルは精霊の中でも最上位にあたり、彼に並ぶ精霊はほんの僅かしかいない。
そんな大精霊が今地に膝をつけ頭を垂れている。
彼の前には山のような通常ではあり得ない一本の大きな木と、枝と呼ぶにははばかられる程太い幹に一羽の金色の梟がとまっていた。
「久しいなカエサル」
「はい、お久しぶりです。
こうして直接お会いするのは200年振りになるかと」
「そうか、もうそんなに経つか」
カエサルと話す声はとても綺麗で、それは純情な少女のようであり、また艶を放つ女性のものでもあるようだった。
それらに共通しているのは響きに憂いを帯びていることだ。
「今日お前を呼んだ理由はわかるか?」
「はい」
「なら聞くが、今回お前はあの契約者のエルフの娘側に付くのだな?」
「契約に従うまでです」
「お前たち精霊の契約は己が利益を得るため、若しくは守るためのものであろう。
悪魔ども程の強制力は無いはずだが?」
「……」
「ふふっ
お前は変わらんな」
「今回の件、関与されるおつもりですか?」
「まさか!
私がアレの側につくとでも?
安心なさい。
私はあくまで観察者です。
手は出しませんよ」
「……」
「不満そうですね」
「いえ」
「“視てもいいんですよ”」
「……もう、よろしいのでは?
出過ぎた真似であることは承知しています一一』
『私はこれでいいのです』
『ですが一一』
『私はいいと言ったのですよ?』
すると金色の梟から魔力が溢れ出す。
それは契約者のエルフより、また大精霊のカエサルよりも遥かに濃密なもの。
『失礼しました』
『いえ。
あなたを呼んだのはその確認と今回の件について関与はしませんが全ての顛末を視ることにしたのでその事を伝えようと思ったのです』
『それをわざわざ』
『普通のものは気付きませんがあなたは気付くでしょうからね。
精霊はあまり好みませんがあなたに対しては敬意を持っています。
“中”まで視るのですから一言断っておこうと思いまして』
『恐縮です』
『よいのです。
ではまた会えることを楽しみにしていますよ。
出来れば今のあなたと』
すると梟は枝から飛び立つとぐんぐんと空へ向かい姿は小さくなっていく。
カエサルは彼女が見えなくなるまでただじっと見つめていた。




