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黒龍殺しの付与術師  作者: しきな かいどう
少年期
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第39話 ヨーゼン

 ソフィアの誤魔化しに乗るわけではないがヨーゼンさんがスタッフに声を掛けお茶と菓子を持ってこさせた。

 本来はすぐ出させるのだが今回は話が話だけに他の者の立ち入りを禁じていたようだ。


「そう言えば師匠は副ギルド長を名前の略称で呼んでますけど親しいんですか?」


「なになに、嫉妬?

 大好きな師匠に男がー!みたいな?」


「いえ、全然。

 むしろこの間師匠に男がいないことを心配したじゃないですか。

 しかも僕がレイラと出掛けるとき子供でもデートしているのに私は異性と付き合ったことがないって子供の前で発狂してたじゃないですか。

 しまいにはポコナさんにまで“ないです”って振られて一一」


「ごめんなさい、ごめんなさい!

 調子に乗りました!

 っけど最後のは捏造よ!

 あんたらが……ってゼンあんた本気で引いてんじゃないわよ!

 最後のは違うからね!?」


「僕はどんな形であれ恋愛は自由だと思いますよ。

 えーとそれで僕とソフィアさんの関係ですが一一」


「ねえ!?なんであんた達はそんな理解がいいの!違うよ!?あたしちゃんと男の人が好きだから!」


 ガチャ


 お茶のおかわりをメルヴィとは違う受付嬢が運んで部屋に入ってきたが、中にはポンコツエルフが男が好きと叫び、かたやそれをシカトして話すギルド幹部と子供。

 そのシュールさに彼女の顔はひきつり、お茶を置くとそそくさと部屋を出ていった。

 ここに来て我が師匠の株が暴落しているがまあもともとが紙切れのようなものだ。

 気にはすまい。


「ソフィアさんとは一時期、冒険者として同じパーティーを組んでいたんですよ」


「へぇーそうなんですか」


「そうよ!ゼンなんかその頃は私のこと先輩先輩って言ってあとついてきて可愛かったんだから!」


 先輩先輩?


「あのもしかしてヨーゼンさんの方が師匠より年下なんですか?」


 外見はヨーゼンさんが20代半ば、ソフィアが見た目は18歳くらいだが20歳と言っていた。


 ん?


「あと師匠は僕と出会ったとき20歳と言っていましたけど、この間たしか22歳になるって言っていましたよね?

 師匠と会って丸3年は経過してるんですけど?」


 またソフィアから魔力が吹き出してきた。

 先程支部長に向けたときよりもずっと重いプレッシャーだ。


 ガチャ


 その時、またもやタイミング悪くお茶請けを持ってきた受付嬢が部屋に立ち込める魔力とプレッシャーにガクブルしお菓子をお盆から落とした。


 それを笑いながらヨーゼンさんは拾い上げお盆に戻す。


「ソフィアさん、この町に美味しい高級ケーキ屋さんがあるんだけど何か食べたいものあります?

 奢りますよ?」


 するとたちまち魔力が霧散した。


 なるほど。

 一緒に冒険者していただけのことはあってソフィアの扱いを心得ている。


「カイリ君も好きなの言って」


 そう言って懐からお金を取り出すと受付嬢に渡す。


「君も好きなの選んで。

 ついでに荷物持ちとして男性職員も連れていきなさい。

 余ったお金で職場のみんなにも買ってきてあげて」


 受付嬢はカクカク頷き、ソフィアからケーキの種類を頼んでいる間、ヨーゼンさんと目が合う。


 “あとで教えてください”


 “いいよ”


 会って間もないがこの人とは気が合いそうだ。

 アイコンタクトを交わしている間に注文を終え、受付嬢は急いで部屋を出た。

 あの娘、今日は厄日だな。

 受付嬢を憐れんだ目で見ているとヨーゼンさんの方から質問があった。


「最初の会話で遠征のことでカイリ君が怒ってたって言ってましたけど……」


「ええ、この子も知ってるから大丈夫……ってか見抜かれたんだけど」


「そうですか。

 確かに子供とは思えないくらい鋭い子ですね」


 いや、ある意味ヨーゼンさんの方が鋭いわ。


「遠征の間はお弟子さん二人はどうするんですか?

 もしよかったらギルドの指導員をつけましょうか?」


「大丈夫よ。

 ってか随分この子のこと気に入ったのね。

 けどポコナをつけるから大丈夫よ」


「ポコナさんですか。

 確かに彼女は優秀な冒険者ですけど……指導者としては大丈夫なんですか?」


「ああ、ゼンはポコナとはあまり面識無いものね。

 大丈夫よ、あの子は魔法に関しては論理的だから」


「それはソフィアさんが感覚的すぎるんだと思いますよ」


「仕方ないじゃない。

 術式構築の呪文なんてわざわざ描いたり唱えたり面倒だし必要ないんだから」


「相変わらずですね」


「カイリはそれでもついていけてるんだから問題ないよ。

 まあ術式の説明が難しい召喚系は来月王都に着いたらうちのババァに教えてもらうつもりだけど。

 召喚系はやっぱりあの人の方があたしより上手いしね」


「導師にですか?」


「ええ、この子も“遠征”についていくから」


「それは……」


「そんな怖い顔しないでよ。

 私だって置いていくつもりたったけど行くってきかないし、それにあくまで現時点では“同行”よ。

 討伐戦にはもちろん参加させるつもりはないわ」


 一瞬鋭い目でこちらを見る。


「わかってますよ。

 足手まといになるのなら置いていってください。

 けど戦力になると“周り”が判断したのなら討伐戦に加えてください。

 それまでは遠征軍の行軍の露払いとして動きますから」


「そういうことでしたら討伐に参加する冒険者にカイリ君の指導をお願いしておきますよ」


 その言葉にソフィアが驚く。


「どういうつもり?」


「はい?純粋にカイリ君に協力しようと思っただけですよ」


「ギルドに引き入れたいのなら討伐戦には参加しない方が“確率は上がる”わよ」


「それとこれとは別です。

 これは職員としてではなく個人としての協力です」


「……ふーん、そう」


 急に雰囲気が険悪になった。


「ところでカイリ君、この近辺の山で魔狼が目撃されたという情報がありましたが討伐したのはあなたですか?」


 ん?討伐の情報が出回ってない?


「……」


「警戒しなくても大丈夫ですよ。

 魔狼の目撃情報はあれど被害は手配のかかった元冒険者くずれの盗賊団と子供1人、そして子供以外はみな死亡と報告書がありました。

 しかしその後は被害も目撃者もなしと。

 カイリ君が被害者とわかり、さらにソフィアさんと師弟関係と知ったときはソフィアさんが討伐したのかと思いました。

 けれど市場に魔狼の素材が出回った形跡がない。

 不思議に思っていました。

 けれど今日カイリ君の能力解析結果を見て得心がいきました。

 あなたのステータスはその歳でBランク相当と異常です。

 が、それでも魔狼討伐は無理です。

 しかし僕も見たことのない“付与術師”というユニークスキル、この効果なら通用するかもしれない。

 違いますか?」


「討伐したのは僕ですけれど、スキルの力を用いてたまたまです。

 もう一度やれと言われても“今の時点”ではかなり厳しいです。」


「やはりそうですか。

 それでもあなたは傲らないんですね。

 現状を正しく認識する能力も冒険者に必要不可欠な能力ですよ。

 あと討伐したことが周りに知られていなかったのはあなたへの配慮だと思います。

 騎士団への勧誘が凄いことになりますからね」


「そんなですか?」


「ええ、あなたのお父さんのゲインさんは何も改革派というわけでは無かったんですが派閥争いに巻き込まれた感じですね。

 特に昨今の改革派はトップが引退してしまいましたので何かしらの強力な駒が欲しいんですよ。

 そこでその歳で魔狼をも倒したカイリ君は是非とも仲間に引き入れたいでしょうね」


「正直騎士団に興味はありませんし、今の話でますます興味が無くなりました。

 それに父も今の生活の方がのびのびやってるようですし」


「ええ、なのでカイリ君を派閥争いから守るために魔狼の件についても黙っていたのでしょう。

 それにもしカイリ君が騎士団に入るとなればそれに合わせてゲインさんも王都に呼ばれるでしょう。

 他の同僚もゲインさんのような上司を王都に持っていかれたくないでしょうし、本人が王都復帰を望まないのならばますますみんな黙りますよ」


「ゼン、君はそれとなくカイリの選択肢狭めてきてない?

 まあ騎士団の派閥争いは本当なんだけど」


「そんなつもりはありませんよ。

 まあ入るなら身分差別のない魔法師団か冒険者がいいとは思いますけど」


「魔法師団は純血派とかないんですか?」


「ないよ。

 そもそも実用にまで昇華出来る貴重な魔法の才を血の色なんかで差別してらんないよ。

 逆に魔法師団はバリバリの実力主義」


「まあ、二分するような大きな派閥もありませんしね。

 というかNo.2とNo.3が変わり者でついていける者がいないというのが現状ですかね?

 ソフィア先輩?」


「おおっと、その軽口乗ったぞゼン坊」


「え、師匠偉いんですか?」


「知りませんでしたか?

 ソフィアさんは魔法師団のNo.3ですよ」


 いやいやいや


「だって仕事していませんよ」


「うっ」


「そうなんです。

 そんなんで給金を出すのは他の団員に示しがつかないので導師が働かないものには給金なしと判断し、現在ソフィアさんは毎月の稼ぎはゼロです」


「うっわ。

 師匠、働かなくてお金も稼いでないってそれ実質無職って言うんですよ」


「む、無職じゃないもん!

 王国魔法師団の幹部という肩書きがあるし!」


「ソフィアさん、肩書きじゃあパンは買えませんよ?」


「くっ、なんでそんなこと言われなくちゃいけないのよ!」


「「働かないからじゃないですか」」


「君らには迷惑掛けてないし!」


 “君らには”ということは同僚には迷惑掛けてる自覚はあるわけだ。

 だが、


「ソフィアさん、懐が寂しくなると僕になんか美味しいクエストよこせって言ってきますよね?」


「もし自分が魔法師団に入っても師匠が働かないから弟子も働かないとか偏見で見られたり、師匠の分も働けっていじめられますよねこれ」


「あーそれはキツイですね。

 実際僕がギルド長の分も仕事押しつけられてますし」


「あ、え~と、ゼン、この子にスキルのこと教えて欲しいの!」


 無理くりな話題転換だがもう十分楽しんだのでそれに乗ってあげる俺とヨーゼンさん。

 この人も人畜無害な顔してなかなかの性格してるな。


「あー師匠たしか自分と似たスキルを持つ人知ってるって言ってましたね」


「僕の“あのスキル”のことですか?

 いいですよ」


「ありがとうございます。

 でもいいんですか?

 能力の情報は広めない方がいいんじゃ……」


「これでも僕も有名人ですからね。

 最近は自身がクエストに行くことは無くなりましたがある程度ベテランの人や高ランクの冒険者は知ってますしね」


「ありがとうございます」


「うん、カイリ君のユニークスキル“付与術師”の効果名称に一一一っていうのがあると思うけどこれは成長するスキルなんです。」


「スキルが成長するんですか?」


「成長するといっても自身の肉体や魔力を鍛えて成長する訳じゃありません。

 それで成長するスキルもあるけれどおそらくカイリ君のは技術系統だと思います」


「技術系統?」


「そう。

 おそらくこれは出来るんじゃないかなと手探りで新しいことに挑戦して適正があればそれを熟練させることでものにすることが出来ます」


「手探りですか」


「僕のスキルもそうだったけどカイリ君のスキルも他に例のない未発見のスキルだから前例から効果を知ることは出来ない」


「それって見付けられるんですか?」


「エクストラスキルやユニークスキルがなぜ能力解析で判明するのか。

 それは魂の器に刻まれているから。

 つまり適正があって初めて扱えるモノなんだ。

 だから自分の中でなんとなく試す候補があるんじゃないのかい?」


「そうですね。

 いくつか試したいことは実は浮かんでいます」


「ならそれを何度も繰り返して使えるか試すしかありません。

 ちなみに僕のエクストラスキルは身体強化系で効果を上昇させるもの。

 そして成長させてわかったのが強化する際の魔力量を増やすことで更に効果が上昇するというものです」


 確かに俺の多重付与に似ている。


「とにかく試行錯誤で身に付けるしかない」


「わかりました。

 ありがとうございます」


「あ、そう言えば魔狼の素材はゲインさんが持ってるんですか?」


「恐らくは」


「なら王都に僕が懇意にしている鍛冶屋があるからそこで直接素材を売って装備を整えるといい。

 魔狼の素材なら丈夫な装備が作れるし、何より余った素材でも十分お金になるから作成代金もまかなえるはずです」


「ゼン、それはギルドが仲介に入らないってこと?」


「はい、今回実害は出なかったとはいえ部下が迷惑をかけたのでそのお詫びです。

 ギルドを通すと手数料が掛かりますからね」


「けど黙っていたら私とカイリにはわからなかったことじゃない?」


「う~ん、それでも導師には伝わりますからね。

 後で導師に吹っ掛けられるくらいならここで借りを返しておきたいです。

 それに鍛冶屋には貴重な素材を優先しておろしたっていう貸しが作れますからね」


「なんか君は役職ついてから益々したたかになってない?」


「それだけ苦労が多いと思ってください」


「そういうことならゼンの案に乗っていいと思うけどどうする?」


「そうですね。

 そうさせてもらいます」


「ならギルドの輸送馬車を手配しておくからそこに預けてください。

 もちろん輸送費は取りません」


「ありがとうございます」


 話も終えたのでヨーゼンさんに挨拶をすませ、ギルドを後する。

 外に出ると既に日が暮れていた。


連続投稿です

今度はホントです

そしてお昼過ぎにさらに投稿予定です

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