表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒龍殺しの付与術師  作者: しきな かいどう
少年期
44/101

第38話 副ギルド長

 部屋には大きな丸テーブルと複数の椅子、そして一人の寂れたおっさんが座っていた。

 自分達が部屋に入るのに気付くとひどく取り乱している。


「誰?」


 ソフィアがイケメンさんに尋ねると困った顔で


「それも含めて説明しますんでどうぞ座ってください」


 と席を進められた。

 とりあえずソフィアと共に席に座る。

 ここで困ってしまったのは受付嬢だ。

 えっ、私も座るの?

 と立っているとイケメンに笑顔で促される。

 なかなかに嫌そうな顔して座ってるけどそんな顔に出していいのか?思いっきり偉い上司だよ?


「さて、あらためてお久し振りですソフィアさん。

 それとはじめましてカイリちゃん。

 冒険者ギルドの副ギルド長をしていますヨーゼンです。

 よろしくお願いします」


 ソフィアがニコニコ、いやニヤニヤし出した。


「えっと、すみません僕は男です」


「え、あ、ごめんねカイリ君」


「いえ、気になさらず」


「まあカイリは可愛いから仕方ないね」


 そう言って頭を撫でようとしたのでソフィアのその手を思いっきり叩き落とす。


 バシッッ


「いったーっ!?」


「あ、すみません。

 うざかったのでハエかと思いました」


「ひどくない!?

 なんか遠征黙ってたときからあたしに対してひどくない!?」


「……」


「ほらー絶対怒ってる!」


「怒ってませんよ。

 うざいと思っただけで」


「それもひど!

 ゼン、あたしうざくないよね!?」


「……ではそろそろ本題に入りましょうか」



 話をそらすヨーゼンさんに未だにぶーぶー言うソフィアを置いて話を聞く。



「こちらの彼はこの町のギルド支部長です」


「あ、そりゃあどうもー。

 この度はお世話になりました」


 ソフィアが支部長に挨拶するもおっさんは気まずそうにペコペコ頭をさげている。


「ん、ゼン?この人なんでこんなキョドってるの?」


「彼はやましいことをしたので挙動不審なのでしょう」


 そう言ってヨーゼンさんは支部長を一瞥する。

 それに合わせ青ざめる支部長。

 すると閃いたとばかりにソフィアが声をあげた。


「あっ、わかった」


 ビクッ


「駄目だよ、おじさん。

 不倫?

 いやーすけべそうな顔してるもんね!」


 ポンコツエルフはナチュラルに失礼なことを言い放つ。

 その言葉で支部長に軽蔑の目を向ける受付嬢。

 いや、たぶん違うから。


「師匠、それなら自分達は関係ないから呼ばれませんよ」


「あ、そっか。

 あたし達は関係ない…し…?」


 そう言いながらもしかしてとポンコツが受付嬢を見る。

 受付嬢は首をぶんぶん振った。


「違います!

 こんないやらしいハゲありえません!」


 いや、仮にも上司ということをこの娘は忘れているんじゃなかろうか?

 あーけど言葉の節からもしかしたらセクハラはしてたのかな?

 もしくはソフィアの前の言葉に引っ張られたか。


 ヨーゼンさんが訂正する。

「不倫じゃありませんよ。

 ソフィアさん達と関係のあることでこちらの支部長が違反行為をしましてね。

 上司として謝らなければいけないことがあって来ました」


「謝ること?」


「はい、今回こちらのギルドでソフィアさんのお弟子さん達の能力解析をしました。

 しかしこれは特例としてです。

 本来許可するのは13歳から。

 実際に解析を受けるのは15歳からが多いですね。

 なぜだかカイリ君はわかりますか?」


「確か身体が成熟しないと能力解析を行う際に魂の器に負担がかかるからとか」


「そうです。

 しかし、解析を受けるものが魔力操作にある程度慣れたものなら負担は問題になるようなものではありませんし、問題が起こったとしても魔力の流れに軽い支障をきたして一週間程寝込む程度のものです」


 いや、それって軽いのか?


「なので子供は一般的には能力解析は受けられません。

 冒険者ギルドではギルドに所属するものには格安で、冒険者として初めて登録するものには無償で行っています。

 これは騎士団や魔法師団も同じです

 ではカイリ君のように冒険者や魔法師団員になるわけでもないものはどうやって能力解析をするのか。

 一般的には受けられません。

 では受けるためには、

 それはお金です。

 お金を払えば解析を受けることが出来ます。

 もちろんこれは本来の業務規定に違反する上に場合によっては解析結果を情報として売られるリスクが伴います」


「正規のルートなら解析結果は流出しないんですか?」


「絶対とは言えません。

 恥ずかしながらそれで小銭を稼ごうとする輩もいます。

 ですが、管理責任を担当者に問うことが出来ますのである程度の抑制にはなります。

 何より冒険者ギルドは冒険者のサポートを生業とします。

 そんな者が冒険者の貴重な情報を漏らすというのは矜持に反しますので」


 まあそんなことした者がおおっぴらになったら仕事は続けていけないと。

 場合によっては冒険者から闇討ちとかくらいそうだ。


「では僕の場合はどうなんでしょう?

 正規ルートではない僕の能力解析はやはり問題があったんでしょうか?」


「いえ、カイリさ達は先程言ったとおり特例です。

 能力解析はきちんとした手続きを受けています。

 幼いとはいえ魔力操作が出来ますので副作用問題ありませんし、書状として導師から依頼を受けています。

 ただし、このような手順を踏む方が珍しいと言えるのです。

 なのでこれに関心を持った者達がちょっかいを出してきてしまって」


「関心を持った者達?」


「あー騎士団の純血派ね」


 そこでソフィアが答えた。


「純血派?」


「まあ騎士団の役職付きはあらかた貴族だからね。

 カイリのお父さんは平民出身で入団してすぐ頭角を現してね。

 純血派とは思想を逆とする家柄でなく実力に重きを置くべきという改革派に気に入られてたのよ。

 それがますます純血派のひんしゅくを買ってしまって辺境の地に左遷させられたのよ」


 今この人、人の故郷を辺境の地とか言ったよ。


「でその息子である僕の情報も知ろうと?

 いくらなんでもただの子供の能力に大袈裟じゃありません?」


「それはソフィアさんの弟子っていうのが一番大きな理由ですね。

 導師の秘蔵っ子と呼ばれる才を持ち、王立学院魔法科を主席で入学及び卒業しながらも長年弟子を取ろうとしなかった天才が初めて取った弟子。

 導師とソフィアさんを知る者で気にならない訳がない」



「つまり師匠のせいですか?」


「優秀過ぎるのも困り者だね!」


 てへっと舌を出しているのがよりうざい。


「ん?長年って……」


「具体的には一一」


「ゼン!」


 ソフィアが顔色を変えて遮った。

 あれ、確かソフィアって今20歳って言ってたっけ?

 見た目は17か18くらいだけど……


「あー、話がそれてしまいましたね。

 本題に戻ります」


 うん、ヨーゼンさんにあとで必ず聞いておこう。


「つまりここにいる支部長は君の能力の詳細を純血派の騎士団に横流ししたわけです。」


 するとソフィアの目付きが変わった。

 それと同時に室内に重い魔力が立ち込める。

 ヨーゼンさんは顔色ひとつひとつ変えないが、支部長と受付嬢は顔を真っ青にしてガクブルだ。

 俺が魔狼に怪我を負わされた時は心配の方が勝っており、ここまで敵意を表面に出したソフィアは初めて見る。

 その圧力は魔狼の比じゃなかった。

 けれど気になることが一つ


「ヨーゼンさんがここにいるということは、それが前もってわかってたということですか?」


 するとヨーゼンさんがこちらを見て感心した顔をする。

「ええ、その通りです。

 事前に繋がりは知っていました。

 なので解析班には嘘の解析情報を支部長に握らせました」


 その言葉に支部長が驚く


「ああ、あなたには情報を横流ししたことを知っているとしか言っていませんでしたね。

 泳がせていたんですよ。

 きっちり取り締まると巧妙にやりだす人間もいますから、こちらを騙せてると思い込んでる人間の方がやりやすいですからね」


 支部長はそこでガックリと項垂れた。


 ソフィアもプレッシャーを解き顔はドン引きしている。


「ちなみに情報の横流しした責任を受付嬢のメルヴィさんに押し付ける手筈の様でしたのであなたにも来てもらったのです。

さて、あなたも支部長とグルですか?」


「ち、違います!」


「ええ、でしょうね。

メルヴィさんのは一応確認のために呼びました。」


 その言葉に受付嬢のメルヴィさんは驚くと共にすぐ怒った顔に変わる。


「ふざけんなこのハゲー!

 おい、ハゲ!

 聞いてんのかこのハゲ!」


 ハゲを連呼されている支部長は机に突っ伏している。


「じゃあ渡った情報は偽物ってことですね」


 一旦話を戻すのに聞いた内容の確認をする。


「ええ、エキストラ及びユニークスキルなし、能力値はあなたの年代では平均より少し上、魔力値は高めで設定してあります」


「疑問なんですけどそんな一一」


 こちらの話している間もずっとメルヴィのハゲ!このハゲー!と罵声が聞こえる。

 ヨーゼンさんは手をパンッと叩くと部屋に屈強な男二人が入ってきて支部長を連れていった。

 その後をメルヴィも付いていきずっとハゲ!何か言えハゲ!と罵声を浴びせる。

 男二人も戸惑いながらも取り敢えず部屋を出ていき罵声の声も徐々に遠ざかっていった。


 部屋には俺とソフィアとヨーゼンさんの三人になった。


「疑問なんですけど能力がバレるというのはそんな問題なんですか?

 冒険者や騎士をしていれば周りに能力大体わかってしまうものなのでは?」


「ええ、その通りです。

 パーティーを組む場合メンバーの能力把握が優先事項ですから。

 それでも一線級の者にはなればなるほど奥の手というものを隠しているものです。

 それにカイリ君の場合ユニーク以上のスキルが3つ、しかも一つは未発見のスキルですからね。

 むざむざ情報をくれてやることもないでしょう。

 軍だけでなく冒険者も対人戦闘は珍しくありませんからね。

 相手に情報を渡さないというのも戦略の一つですよ」


「なるほど、偽の情報を渡すのも戦略の一つですね」


「その通りです」


 ヨーゼンさんと俺はそう言ってにっこり笑い合う。


「うわ、なんかあんたら似てるわ~」


 ソフィアが何か言ってるがシカトする。


「ところでカイリ君、君は将来どうするのかな?」


「どうするとは」


「父親と同じように騎士団に入るのか、ソフィアさんと同じように魔法師団か、それとも冒険者か?

 もし冒険者になってくれるのなら僕が後ろ楯となって色々サポートさせて貰いますがどうでしょうか?

 あなたなら現状でC~Bランク程の実力があります。

 いきなりは無理ですが各ランクのクエストを数回こなして貰えれば昇級試験無しでCまで、クエストに僕の知り合いのベテラン冒険者をつけますので内容次第ではBまでランクをつけることをお約束します。

 もちろん冒険者として必要な知識と認識は同行者からの指導付きです。

 いかがでしょうか?」


「ちょ、ちょっとゼン!

 ここで引き抜きはずるくない!?」


「至れり尽くせりでありがたいのですがまずは弟子として学院の魔法科に通うつもりです」


「それはそうですね。

 けれど学院生と冒険者を両立させている者もいますので考慮してみてください」


「分かりました」


「ゼン、ここぞとばかりね」


「そりゃあ学院に入れば王都で会えますが、私も雑務が多くてなかなか王都を離れるのは難しいのですよ。

 せめてギルド長が自分の仕事しっかりやってくれればこんなに忙しくもならないのに」


「ああ、王都にいたとき、あのおっさんはよく場末の酒屋で見たけど確かに仕事してるイメージはないわ」


「師匠、よく見るってことは場末の酒屋頻繁に行ってたんですか」


「ギルド長があなたにキープしてたボトル勝手に空けられたって怒ってましたよ」


「う~ん、結構話し込んじゃったし少し休憩しない?」


 誤魔化してきたよこの人……


今回の話で10万文字達成しました。

1話から読んでくれた方はおよそ200分ほど使ってくれたことになります。

その時間が少しでも楽しいモノであったのならば幸いです。

今後もよろしくお願いします。







 ……ブックマークや評価等いただけると励みになります(小声)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ