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黒龍殺しの付与術師  作者: しきな かいどう
少年期
36/101

第31話 療養期間 ■

 魔狼を撃退してから2週間が経った。

 あれから同種の魔獣やそれに準じた危険な魔獣が現れることもなく、警戒体制は通常に戻り、ゲインも家に帰ってきた。  

 さてと。

 アイリから聞いているだろうが俺からもククルのことを話しておこう。


「父さん、母さんから聞いてると思うけどククルのことなんだけど」


「ああ、母さんがいいと言うならいいんじゃないか?」


「……」


 やはりウチの実権はアイリにあるようだ。

 ククルだが今はソフィアの世話に行ってもらってる。

 ククルもはじめはソフィアの生活のだらしなさ、部屋の汚さにひいていたが、すぐに慣れたようで難なく世話と相手をしている。

 おとなしそうな印象があったので意外だったが今では部屋をちらかす主にお説教をしていると聞いた。

 しかしその主は小さな女の子から説教を受けてホクホクらしい。

 なんとも業が深い・・・。


「父さん、変なこと聞くけど初めて人を斬ったときどうだった?」


「ん、人を斬ったときか?」


 ゲインは少し戸惑っていたがこちらが遊び半分で聞いたわけじゃないことに気付くと答えてくれた。


「父さんが初めて人を斬ったのは17才のときだ。

 騎士団への入団が決まっていてな、正式には入団していなかったが隣国との小競り合いにかりだされて戦った。

 国を守る覚悟よりも死にたくないって気持ちのほうがその時は強かったな。

 だから人を斬ったあとも、いや、殺した後も生き残った安堵しかなかった」


「そう」


「罪悪感があるのか?」


「罪悪感は、少し。」


 直接命を奪ったのは魔獣だけど、動けなくしたのは俺だ。

 あの場面で助けに行くほど善人でもお人好しでもない。


「そうか、剣の稽古やめるか?」


 まさかそんなことをゲインから聞かれるとは思っていなかった。


「どうした?驚いた顔して」


「いや、情けないこと言うなって叱られると思ってた」


「叱らないさ。

 お前は俺と違って頭の出来がいい。

 その年で字も書ければ計算も出来る。

 商人への道だってある。

 どうする?」


「稽古は、やめない。

 将来のことは別として、

 戦うときに戦えないのは後悔するから」


「そうか」


「ただ……剣以外の武器、槍の他に昆棒の使い方もわかれば教えて欲しい」


「棍棒か?」


 刃はあまりにも簡単に命を奪える。

 戦えないのも殺すのも嫌だなんて自分のことながら甘いと思う。


「棍棒でも人は死ぬぞ。

 相手を殺さなくちゃいけない状況になったらどうする?」


「その時は迷わないよ。

 身内の命の方が僕にとって重い」


「わかった。

 なら剣と棒術両方覚えろ。

 それでいざというときは戸惑うな。

 躊躇しながら武器を振るう方が危ない」


「うん。

 よろしくお願いします」


「ああ、だがまずは怪我を治してからだな」







 ~ゲイン視点~


 カイリから悩みを聞かされるのは初めてだ。

 あの子は大体のことは自分で決めてしまう。

 そんな息子から相談されるのだから今回の事件は息子自身にとってよっぽど大きなことだったのだろう。


「斬ることへの戸惑いか」


 そんな迷いはあの子が優しいからか。

 いや、優しい子だがその割りきり方は子供とは思えないほど出来る子だ。 

 強くて余裕があるからこそ盗賊たちに対して殺さないという選択肢があった。

 だから迷ったのだろう。

 贅沢な悩みだと思う。

 普通は生きるのに必死なのだ。

 俺だって戦争に駆り出された17才のときには既にその辺の兵士にはまず負けることはなかった。

 けど命の奪い合いになれば選択肢なんてない。

 必死だからだ。

 さっきもカイリは他人の命より身内の命の方が重いと言った。

 言い切った。

 そこに嘘はないのだろうがその考えにあっさりと至る子供に、自分の子供に戸惑いを覚えた。

 この子の考えはいったいどこで身につけたのだろうか?

 ソフィア殿のことは導師から聞いていたが彼女の考え方ではないと思う。

 ではいったいどこで?

 またもう一つ疑問が浮かんだ。

 “重い命”に自分の身をちゃんと含んでいるのかが疑問だった。

 当たり前のことすぎて聞けなかったがそこがなぜか引っ掛かったのだ。


 ~ゲイン視点END~








 コンコン


 扉を叩く音

 そもそもこの家でノックするのはククルだけだ。


「どうぞ」


「ただいま戻りました」


「お帰り。

 師匠の様子はどう?」


「えっと、あの、相変わらずですよ?」


 ククルは困った顔で笑う。

 相変わらずの駄目エルフということだろう。


「それより包帯変えちゃいますね」


「ありがとう」


 前世では包帯やテーピングは自分でよくやっていたので他の人の手を借りるまでもないのだがククルが譲らないのだ。

 それに俺の世話をしている姿が楽しそうだった。

 今も大きなフサフサの尻尾をブンブン振っている。

 お人好しの世話好きなのだろう。


「あの、カイリさん」


「なに?」


「私もソフィアさんから魔法を教わりたいと思います」


「急にどうしたの?」


「私は人さらいにあったとき、これからどうなってしまうのだろうと不安でいっぱいでした。

 けどすぐにそれも薄れました」


「なんで?」


 いや、本当はわかっている。


「諦めたんです。

 両親と祖母がいなくなって私の世界はつらいだけのものになりました。

 そこに私の居場所はありませんでした」


「……」


「失意の中、荷馬車に揺られていたときにカイリさんが助けてくれたんです。

 魔獣が現れたときも身を呈して助けてくれました」


 あれは成り行きでああなっただけだ。

 純粋な善意でもなければ自己犠牲でもない。


「カイリさんの戦う姿を見て、わたしも戦えるようになりたいんです」


 ククルは真っ直ぐこちらの目を見てくる。

 ソフィアはククルを気に入っているが弟子を取るとなると、どうだろう?

 今まで彼女は弟子を取るのを避けていたらしいし。


「わかった。

 もし師匠が断ってきたら教えて。

 僕からも頼んでみる」


「ありがとうございます!」


 翌日。

 はてさて、とうなるかと思っていたところククルが頼んだら即オーケーがもらえたらしい。

 交換条件付きだが……







挿絵(By みてみん)



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 出したいキャラがたくさんいるのに中々話が進まない……

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