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黒龍殺しの付与術師  作者: しきな かいどう
少年期
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第26話 花を見に

 翌日、ゲインと朝の訓練を終え、朝食を食べるとレイラの家に向かった。

 昨夜にレイラと遊ぶ約束をしたから今日は久し振りに狩りも魔法の訓練も休みだ。

 レイラの家の前に行くとすでに玄関前に彼女が立っていた。


「どうしたの?

 こんなところに立って。

 中で待ってたらよかったのに」


「家の中だとママがにやにやしててうざいから外出たの!」


 喧嘩でもしたのかな?

 すると玄関のドアが開き、


「あらあらカイリ君、 レイラったら――」


 バタンッ

 開ききる前にレイラが閉めてしまった。


「早く行きましょ!」


「え?

 いや一応ルーシさんに挨拶を……」


「カイリはなんで知らない人には無愛想なのに、知り合いには律儀なの!?

 あとなんかうちのママには特に礼儀正しくない?」


「そうかな?」


 だってめっちゃ美人ですやん。

 そんなことを考えた瞬間睨まれた。


 ガチャッ

「あら?そんなところで痴話喧――」

 バタンッ

「早く行きましょ!」


 レイラに急かされてとりあえず町の方へ歩いて行く。

 そういえば昨日ソフィアだいぶ酔っ払ってたなと思い、様子が気になってきた。


「レイラ、師匠の様子見てきていいかな?

 ちょっと部屋掃除するだけだから」


「カイリはいつもソフィアさんの部屋掃除したりしてるの?」


 レイラは露骨に嫌な顔をしている。

 昨日もなんかよそよそしかったし、あんまり良く思ってないのかも。


「魔法教えてもらってるしこのくらいはしないと」


「そう。

 ソフィアさんには世話やくのね!」


「そうかな?

 けどレイラも僕に昔から世話焼いてくれるよね」


「それは……なに迷惑なの?」


 レイラが怒ったのか顔を逸らしながら聞いてくる。


「いや、むしろありがとう。

  いつも気にかけてくれて」


「な、あ、うぅ」


 今思えば俺には同年代の子供と遊ぼうという気はさらさらなかった。

 今世では遊びより訓練や勉強を優先していたからだ。

 まあ前世の後半がぼっちに慣れすぎていたせいもある。

 レイラには振り回されることが多いし、子供と遊んで何が楽しいんだと最初は思ったがなんだかんだ友達と遊ぶというのは楽しいものだ。

 ましてやこんな裏表のない子だと変に気を使う必要もない。

 だから気になった。

 なんか昨日から元気がない。


「ねぇレイラ、何かあった?

 元気ないよね?」


「そんなことない」


 嘘だ。

 いつものレイラなら一昨日逃げたことで昨日家に来た時点でボディに一発かましてるはず。

 なのにまだ俺の体にはアザがない。


「それより今日はどこ行く?」


 露骨にレイラが話題をそらした。

 あまりこの話題には触れて欲しくないようだ。


「山のふもとに花がたくさん咲いてる場所を見つけたんだ。

 そこに行こう」


「見たい!」


 結構珍しい花が群集で咲いてるので喜ぶだろう。

 その前に師匠の宿を訪ねた。

 シウバさんに挨拶をして2階へ上がる。

 レイラも手伝うと言っていたがあまり師匠の恥態(汚部屋)を晒すものでもないだろう。

 1階の食堂で待っててもらう。

 シウバさんがジュースを出してくれてたがレイラは顔がひきつっていた。

 シウバさん顔怖いからなぁ。


「師匠入りますよ」


 ノックして部屋に入るとソフィアが床で死んでいた。

 二日酔い的な意味で。


「みずぅ」


「はいはい、水貰ってきてますから。

 起きれますか?」


「ぅ、うん」


 ソフィアに水の入ったコップを渡し部屋を見渡すとそれほどちらかっていなかった。

 酔っ払って帰ってきてすぐ寝たのだろう。


「師匠、昨日言った通り今日はレイラと出掛けるんで修行は休みます」


 急にソフィアの雰囲気が変わる。


「デート……」


「デートって、

 だいたい俺とアリスは8才ですよ?」


「どこいくの?」


「山のふもとの花を見に行きます」


「デートじゃん! それデートじゃん!子供がふつう花なんか見に出掛けないよ!」


 う~んそうだろうか?

 もしかしてレイラにはつまらない提案したかな?


「8才の子供でもデートしてるのにあたしは何もない、休みに何もない……」


 ソフィアの様子がさらにおかしくなる。

 二日酔いのせいか今日はやけにダウナーだ。


「まあまあ、師匠はもともとこの町の人問じゃないんですから。

 そりゃあここには友達や恋人はいませんよ。けど師匠も王都に帰ればそういう人いるでしょ」


「いない」


「……」


「いない」


 なぜ2回言った。

 部屋の空気が重くなる。


「えっ、ああ今はいないってことですよね」


「いままでも恋人いないわよ!

 なに!?

 恋人いる人はそんな偉いの?!だいたい人前でいちゃいちゃしてんじゃねぇよ!横にならんでちんたら道歩きやがって!てめえらのs」


 俺は何か踏んではいけない地雷を踏んでしまったようで急いで部屋を出た。

 まだ何かしゃべっていたがこちらには気付いていない。

 とりあえずレイラをつれて宿を後にする。


「なんか騒がしかったけど大丈夫?」


「僕は大丈夫。

 もう片方はなにかトラウマ思い出したみたいだけど」


「とらうま?」


「時間が立てば落ち着くよ」


 きっと今にソフィアにもいい人が見つかるはずだ。

 見た目は良いのだから。

 見た目だけは……。

 無理かなぁ。


 レイラを促しいつも行く山のふもとへ案内する。

 その辺り一面に黄色い小さな花が咲いている。


「すごい。

 こんなにいっぱい花が咲いてるの初めて見た。

 きれい……」


「この山に住む猟師さんから聞いたんだ。

 この時期の昼間。

 日が一番高い時に咲くんだって」


「カイリ、連れてきてくれてありがとう!」


 レイラは嬉しそうにしゃがみこんで花を観ている。


「どういたしまして」


「……決めた。

 私も王都の学院に入る」


「?」


「だから私も13才になったらカイリと同じ王都の学院に入る!」


「ん、うん?」


「嬉しくないの?」


「?」


 レイラが立ち上がり右足を半歩引く。


 バシッ


 レイラにローキックをくらった。


「急に何??」


「ふん」


 さっきまで笑っていたのに今度は頬を膨らませてそっぽを向いてしまう。


「将来のことだからレイラが自分で決めたことなら応援するよ?」


 レイラはとても残念なモノを見る目で俺を見てきた。


「はぁー。

 もういい。

 私は私のやりたいようにやる」 


「?」


「カイリ、この花が咲く時期になったらまた連れてきてよね!」


 レイラは腕組みするとちょっと高飛車に、それでいてもう一度笑いながら言った。



 それから一週間後レイラは急に王都に引っ越していった。

 あとからアイリに聞いた話だとレイラの親父さんは今の商売を王都で拡大するのだそうだ。

 しかし、レイラがこの町に残りたがってたから、親父さんとずっと喧嘩していたらしい。

 元気が無かったのはその為か。

 だがレイラが急に学院に入るために勉強したいと申し出たところ、なら王都の学舎(塾のようなところ)で受験勉強した方がいいということでうまく話がまとまったそうだ。

 ただ、一言くらいお別れの挨拶してくれてもよかったのにとレイラに愚痴を思った。





 レイラがいなくなってからも俺は変わらずソフィアと魔法の修行に明け暮れた。

 修行の休憩中にソフィアが質問してきた。


「ねぇカイリ。

 レイラちゃんいなくなって寂しい?」


「はい?

 本人にやりたいことが出来たのならいいことですから僕がとやかく言うことじゃないですよ」


「そういうことじゃないんだよなぁ」


「?」


 あの時のレイラと同じ目で見られた。


「まぁ友達はレイラだけでしたしね。

 あんなに俺に世話を焼こうとするのはレイラだけでしたから寂しい気持ちはありますよ」


 自分で口にして寂しいと思っていたことに少し驚いた。


「そのレイラが頑張ってるんだから俺ももっと頑張らなくちゃ」


「カイリってたまに一人称変わるよね」


「ん、そうですか?」


 あまり意識していなかったから言われて初めて気付いた。


「そんなことよりそろそろ修行再開しましょうよ」


「ん、じゃあ次は新しい属性魔法ね」


 まあこれが最後の別れじゃない。

 あと5年して学院に入学すれば会えるのだから。

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