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黒龍殺しの付与術師  作者: しきな かいどう
少年期
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第25話 実家にて 下

「師匠はギルとアリスに何の話をしてくれたんですか?」


「私が昔参加してた討伐隊の話とエルフの里にある昔話よ」


「討伐隊?」


「そう。

 在学中に強制参加させられてね。

 普通は軍属や冒険者が招集されるんだけど私の場合学生の時点で優秀過ぎたから」


「学生の頃じゃあもう結構昔の話しですか」


「昔じゃあないよ?

 ほんの10年以上前の話よ?」


「十年一昔って言葉しっ」


「最近の話だよ?」


「……」

「……」


 ……話題を変えた方が良さそうだ。


「…昔といえば昔話はどんなお話なんですか?」


「黒龍と勇者のお話」


「それってこの絵本のやつですか?

 竜にエルフの姫がさらわれて、それを人間の勇者が助けるっていう」


 棚にある絵本を手に取る。

 これは昔ゲインが俺のために買ってくれたものだ。

 文字の勉強に使ったり、今は寝る前にギルとアリスに読んであげているから内容は見なくても音読出来るくらいに読み込んでいる。


「そうだよ」


「へぇ、この国以外にも伝わっているんじゃ有名なお伽噺話なんですね」


「ん?

 お伽噺じゃないよ」


「創作じゃないんですか?」


「違う違う。

 それに発祥はエルフの里だし、竜やエルフの姫は本当だけど、勇者は人間じゃなくて本当はエルフだよ」


「実話なんですね。

 けど何で勇者だけ人間になってるんですか?」


「お国柄じゃない?

 その方が人間の国では売れるしね」


「なるほど」


「他にも違う部分はあるんだけど……まあだいたい一緒だよ」


 なんか妙な間が気になるな


「他の違う部分っていうは一一」

「もっと他のお話しも聞きたい!」


 相違を聞こうとしたときアリスが身を乗り出してソフィアにせがんだ。

 アリスは特にお伽噺や物語が大好きだ。


「もちろんいいわよ。

 じゃあ龍繋がりでこの世界に存在する天災とも言われる生き物の話」





 昔々、この地には何も、そもそも地面すらありませんでした。

 何もというのはナニもです。

 地もなく、空もない、海もありませんでした。

 しかし一つの存在が生まれました。

 その存在はやがて己の身を七つに裂き、それらはやがて地をつくり、空が広がり、海を注ぎ、森を生やし、火を灯し、光が落ちて、闇が浮かびました。

 その各々らから意思を持つ七つの生き物が生まれました。

 七つの生き物はその後生まれる生き物とは隔絶した力を持っていました。

 そして最後に生まれたのが人です。

 人は最初に生まれた七つの生命を『七つの原初』として崇めました。

 原初の“彼ら”の反応はそれぞれでした。

 加護を与えるもの。

 危害を加えるもの。

 共存するもの。

 いづれにしても人と関わりを持つ存在でしたが時が経つにつれて、“彼ら”は人に興味をなくします。

 そして大半が眠りにつくことにしました。

 すると人はどんどん増えて次第にこの地に溢れるようになりました。

 眠りについたものたちはそれを気にもとめません。

 次第に人は人同士で争うようになります。

 それに嘆いた存在がいました。

 “彼ら”のなかで唯一眠らなかった原初です。

 “彼”は人を好いていました。

 “彼”は人に争いをやめるように言いましたがその言葉は増えすぎた人に伝わることはなく、争いは続きました。

 “彼”は嘆きました。

 その嘆きは雷となって人に降り注ぎました。

 たくさんの人が死にました。

 同時に争いもなくなりました。

 “彼”も眠りにつくことにしました。

 “彼”には友人がいました。

 銀色の梟です。

 梟に自分の代わりに人を見ることを頼むと眠りにつきました。

 “彼”が眠りにつくとき、眠っていた原初たちは彼の雷で目を覚まし、人の変わりように驚きました。


 銀色の梟はそれから人の観察をずっと続け、起きた彼らも人に再び興味を持ちました。





「これが世に言う『創生の物語』だよ」


「よくわかんない」

「つまんない」


 ギルとアリスには難しかったようだ。


「師匠、それは……お伽噺なんてすよね?」


「う~ん、どうだろうね。

 全部事実かどうかは分からないけど七つの原初は存在するから、本当なのかもね」


「存在するんですか?」


「滅多に人前には現れないし、現れたら大抵は国の一つや二つは消し飛ぶしね。

 絵本の“黒龍”もその一つのだよ」


「へぇー、意外なところで繋がりが」

 ってか消し飛ぶってまじか。


「地域によっては原初を神として崇めている国もあるし、有名な話だよ」


「ん、最後に出てきた銀色の梟も原初なんですか?」


「うーん、違うんじゃない?

 銀色の梟は七つに含まれてないし。

 カイリはそういう話し好きなの?」


「そうですね。

 わりかし好きです」


 滅多に現れないから昔話なんだろうけど一応知っていた方がいいだろう。


「それならもし王都に行くときがあればそういう歴史を研究してる機関があるから行ってみるといいよ」


「そうですね。

 学院に入学出来たら行ってみます。

 あ、そうだ!

 父さん、母さん、王都の学院に入学しようと思ってるんだけど」


 すっかり伝えるのを忘れていた。

 するとゲインはどこか歯切れが悪い様子で


「……そうか、カイリはどっちで入学するつもりなんだ?」


「どっちって?」


「騎士科か魔法科か、……一般科ということはないだろう」


 そういえばそうだった。

 すると俺が答えるより早くソフィアが口を挟んできた。


「ゲインさん、私は息子さんに魔法を教えていますが、無理に魔法科に入れるつもりはありません。

 ゲインさんの手ほどきを受けているなら騎士科も十分狙えるでしょう」


「師匠、それだと弟子を推薦する義務が果たせないんじゃ」


「別にいいのよ。

 途中から君に教えるのが楽しくなっちゃって私自身忘れていたし。

 出来れば魔法の道を進んでほしいとは思うけどそれは君が決めることだから」


「父さんもカイリが決めればいいと思ってる」


 二人にそう言われれば義理立ては要らないだろう。


「なら魔法科にすすむよ」


「そうか」


 ゲインは残念がっているような、けれどほっとしたような表情を浮かべた。

 ソフィアはニコニコだ。


「父さん?」


「正直、騎士科は貴族や騎士団関係者の子供が多くて人間関係のしがらみがある。

 しがらみといってもまだカイリにはわからないかもしれないが、まだ平民の子供が多い魔法科の方が過ごしやすいと思って安心したんだ」


 どの世界に行っても学校にはヒエラルキーが存在するんだな。


「魔法科に進むということは魔法師団に入るのか?」


「魔法師団?」


「国の軍隊、騎士団の魔法版みたいなものよ」


 ソフィアが補足する。


「軍に入るのか?」 


「え、入らないよ。

 絶対嫌だけど。

 ん?国の学院に入るんじゃ強制なの?」


「そんなことはない。

 騎士科はだいたいが軍に入るが魔法科は冒険者になるものも多いし、魔法ギルドという研究機関に入るものもいる。」


「よかった」


「何かなりたいものでもあるのか?」


「いや、そういうわけじゃないんだけど」


 正直、見知らぬ他人のために命を張る仕事にはもうつきたくないと心の底から思うだけだ。


「お兄ちゃんどっかいくの?」


 さっきの話を聞いていたアリスが不安そうに聞いてくる。


「うん、王都にある学院で勉強してくるんだ」 


「……いつから?」


 アリスにつられたのかレイラも不安そうに聞いてきた。


「13歳から、ですよね師匠?」


「うん、それまでに初級魔法を3属性覚えるのが入学条件、というか推薦基準だからすでに2つ覚えたカイリなら余裕でしょ」


「カイリ」


「何?父さん」


「“あのこと”ソフィアさんは知ってるのか?」


 ゲインの質問にソフィアが首を傾げる。


 口での説明もなんなので昨夜と同じように皆で池に移動して“花火”を見せた。

 これにはソフィアも驚いたようだ。


「また君は常識外れな。

 中級が扱えるならこの時点で入学出来るよ」


 いや、呆れていたようだ。


 その後アリスにせがまれ花火を上げるとソフィアも合わせて花火を打ち上げ辺り一面に明かりか灯った。

 それにアリスが大喜びし、調子に乗ったソフィアが一発ずつ打ち上げていたところ同時に10発打ち上げた。

 さすがに俺にはまだ同時に魔法を放つ技術はない。

 すると轟音とともに村全体が照らされるような明かりにアリスが怯え、今日も夜勤だったミゲルが部下を引き連れ走ってきた。


「カイリ!またお前か!

 小隊長も!」


「ミゲルさん、今のは僕じゃないよ。

 こっち」


 そうい言って隣のとんがり帽子の女を指差す。


「カイリ!?師匠を売るの!?」


 その後ソフィアは延々とミゲルに尋問と説教をされ涙目になりながらもやっと解放された。

 その様子をゲインはなにやら微妙な顔でみていた。


「カイリ!

 よくも師匠を売ったわね!」


「師匠、誠に残念ですがアリスを怖がらせたので半径5キロメートルルールで」


「鬼!?」

 

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