表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒龍殺しの付与術師  作者: しきな かいどう
少年期
29/101

第24話 実家にて 上

 翌日、宿に向かいソフィアの部屋を訪ねた。

 ドアを開けた瞬間酒の匂いが漂ってくる。

 床には酒瓶が倒れ、その上にびしょびしょの布が放り出されていた。

 おそらく酔っぱらって瓶を倒し、拭いたまではいいのだろう。

 そして途中でめんどくさくなりやめたと。

 これはまたシミになるなぁ。

 部屋の主はというとベッドの上で大の字で寝ている。

 毎回どうやったらここまで着崩せるんだというくらい服が乱れ、白い肩や太もも下着も見える。

 見た目は良いんだよなあ。

 ..いやいや、何考えてんだ。

 昨日言われた裸の女というワードのせいで変に意識してしまってい、頭を横にぶんぶん振って変な考えを振り払いながらソフィアを起こした。

 というかいい加減自分で起きてほしい。

 ベッドからをたたき落とし、服をちゃんとさせ一階の食堂で朝飯を食べてくるよう指示、その合間に部屋を掃除しておく。

 なんか俺通い妻みたいになってんなぁ。

 ソフィアが戻ってきたところで両親がきちんとあってあいさつしたがっている旨を伝えると


「今日は用事があるから無理」


 即答だった。


「俺が起こさなかったら一日中寝てるのに?」


「うっ···起きた!起きれたもん!」


「そうですか、じゃあ明日から自分で起きて自分で部屋掃除してください。

 ちなみにシウバさんが『これ以上部屋を汚すなら追い出す! 修繕費もきっちりとったうえで追い出す』だそうです。

 そこの床またシミになってますよ」


「ふぁぁぁ!?」


 指差した先のびしゃびしゃのタオルを持ち上げるも遅い。

 布の体積以上の酒溜まりの上に置かれた布きれは吸収しきれずぽだぽとアルコールの液体を垂らしている。


「あのぅ…今後ともよろしくお願いします。

 あとこのことは内緒に」


 これじゃあどっちが師弟だかわからない。





 ソフィアをつれて自宅へ帰ると両親が出迎えた。


「カイリがいつもお世話になっています。

 父親のゲインとこちらが妻のアイリです」


 するとソフィアは、


「ご挨拶が遅れ申し訳ありません。

 ソフィアです。

 勝手ながらご子息の魔法の師を勤めさせて戴いてます」


 と洗練された所作でお辞儀をした。

 口調もいつもと違う

 誰これ?


「クッカ導師から聞いたお話と大分違いますね」


 ゲインの言葉にソフィアの表情が固まる。


「あのババァ…っじゃなくて導師をご存じで?」


「ええ、お名前はもちろん、私の元上司が懇意にしてましてその関係で何度かお酒をご一緒になりました」


「その上司の方のお名前を聞いても?」


「グレン様です」


「やはり三本槍のゲイン殿でしたか」


「いや、やめてください。

 私にその肩書きは過度なものです。

 それに今は田舎町のただの衛兵の小隊長です。

 殿もやめてください」


「わかりました。

 ではゲインさんもあたしのことは()()に接してください」


「いえ、そういうわけには……」


「この町にあたしはカイリの師匠として居ますので、それ以上でも以下でもありません」


「わかりました。

 今後ともよろしくお願いしますソフィアさん」


「はい、こちらこそよろしくお願いします。

 あ、あとゲインさん、もし導師に何か言伝てがあれば」


「では酒もほどほどにして体を御自愛くださいと伝えてください」


「導師もよく酒の席でグレン様とゲインさんの話をされていたので喜ぶと思います」


 なにやら急に込み入った話のようだが何の事だかわからない。

 ゲインとソフィアに共通の知り合いがいることと、ゲインに戦国武将の二つ名みたいなのがあることくらいか。

 ゲイン昔は偉かった?

 そういえば以前ミゲルが小隊長はこんなところにいていい人じゃないと言ってたな。



 なにやらゲインとソフィアが真面目な話をしていたが待ちきれなくなったのかギルとアリスが隣室からやってきた。

 いかにも魔法使いといった格好のソフィアに興奮気味の弟と妹。

 しかしこのふたり意外と人見知りなので話し掛けれずにいる。

 なので紹介しようとしたところ俺よりも早く席を立ったものがいた。

 ソフィアだ。


「かわいい!! 双子!? ねぇ双子なの!? どっちが上なの!? 君がお姉ちゃん? それとも君がお兄ちゃん? そう! 君がお兄ちゃんでこっちが妹ちゃんなんだ!かわいいね。

 どっちも可愛いね! ほんとに! くぅわいぃね☆ 今いくつ? お名前は? あれ ? なんで後ずさるの? お姉ちゃん怖い? 大丈夫お姉ちゃん怖くないよ? そうだ? お姉ちゃんって呼んで良いから呼んでね! せーのおねーちゃーっんべっ!?」


 俺はソフィアの頭にチョップを打ち下ろした。

 その間にギルとアリスが俺の後ろに隠れる。


「お兄ちゃん、あの人こわい」

「…………」


 ギルが恐怖を訴え、アリスにいたっては無言で俺の服を掴んで怯えている。

 ソフィアは二人を怯えさせたことにショックだった様でうなだれた。


「もし次に弟たち怖がらせたら家の半径5キロ圏内接近禁止ですからね!」


「それって私の泊まってる宿も含まれてるよね!?

 速まわしに町から出てけってことよね!?」


「大丈夫ですよ。次怖がらせたらですから」


「弟子の目が本気だぁー」


 そのやり取りを見ていたアイリは


「カイリ?女性に手を出したら駄目よ。

 謝りなさい」


「いや母さん、今のは師匠が」


「カイリ?」


「……師匠すみませんでした」


 あの笑顔の母さんの迫力には勝てない。

 ソフィアは俺が素直に謝る姿とアイリを交互に見て


「すごい!」


 なにやらアイリに尊敬の眼差しを向けている。

 まあソフィアにはない迫力や威厳持ってるからね母さんは。


「私の方こそ取り乱してすみませんでした。

 双子ちゃんもごめんね。

 お姉ちゃん怖がらせちゃったよね。

 仲直りしてくれる?

 わたしの名前はソフィア。

 二人のお名前はなんていうの?」


 やっと冷静さを取り戻し、二人に仲直りを求める。

 すると


「ギルです」

「アリス」


 とおずおずとしながらも自己紹介した。

 その姿にソフィアが身悶えて手をワキワキさせているがなんとか自制する。

 タイミングを見計らったかのようにアイリが


「ソフィアさんよかったら夕飯食べていってください」


「そんな、悪いですよ」


「いえ、今日は夕食を作りすぎてしまって」


「すみません、ではお言葉に甘えて」


 トントン


 そんなやり取りが交わされると玄関を叩く音かする。

 扉を開けるとそこにはいつもの金髪ツインテールをほどき、肩まで髪をおろしたレイラがかわいらしい緑のワンピースを着て立っていた。


「レイラ?」


 こんな時間に何でレイラが?

 そういえば昨日レイラから逃けたことを思い出しパンチに身構える。


「いらっしゃいレイラちゃん」


「母さん?」


「私が呼んだのよ。

 いつもギルとアリスの面倒をみてくれるからお礼にご馳走しようと思って」


 レイラの登場にソフィアが色めき立ち先ほどの焼きましのように近づこうとしたとき、レイラが怯えるように一歩下がった。

 その様子にしゅんとうなだれるソフィア。

 まあまだ何もしてないのにびびられるとかショックだよなと思うもまず何かしようとするなよと先ほどの反省が活かされない繰り返す女ソフィアをジト目で見る。

 けどあんなので怯えるとかレイラらしくない。


 いつもよりも人数が増え席が足りないので机を足して席に座る。

 するとソフィアとレイラが俺を挟んで席に着いた。


「じゃあ今日はソフィアさんもレイラちゃんもいっぱい食べてね」


 母さんの言葉で食事が始まった。

 食事が始まってもしゃべらないレイラ。

 反してギルとアリスはようやく慣れてきたのかソフィアから魔法の話や冒険譚を聞いて夢中になっている。

 するとレイラはなぜか落ち着きなく小さな手提げをバッグひざの上に乗せそわそわしてる。

 トイレかな?

 まあ俺は察せる男なので小さな声で


「お手洗いは正面の扉開けて突き当たりを右だよ!」


 と伝えると


「ちがうっ!」


 と顔を真っ赤にして怒られた。

 難しい。

 そのとき、ソフィアの冒険譚も佳境に入ったようでギルとアリスが大はしゃぎしてる。

 正直あのものぐさソフィアがわざわざ冒険をするとは思っておらず意外だ。

 ましてや冒険仲間などいるとは思えなかった。

 話し終えたソフィアが俺の視線に気付いた。


「カイリ、今何か失礼なこと考えなかった?」


「いえ、何も」


「そうだ。

 もともと渡すつもりだったから今日渡すわね」


「何をですか?」


 そういうと袋を机に置き中からグローブを引っ張り出した。

 何気に使っているあの袋だが見た目に反して内容量が異常に広い魔道具だ。

 とても貴重なものでダンジョンから発掘されるか特殊スキル保持者が製作しないと手に入らないらしい。

 巷ではめったに出回らなく、店に並んだとしてもとても一般人が買えるものではないということだ。

 でそんな貴重な魔道具は持ち主の趣向のせいで主に酒蔵と化しており あとはいつ使うかもわけらないものがとりあえずぶちこまれる。


「君は魔法を放つ際に二本指を目標に向けるでしょ。

 そのとき手を狙われたりすると危ないと思って。

 特殊な魔物の素材で作られているから普通の刃物なら狙われてもチョンパされることはないよ」


「ありがとうございます。

 でもいいんですか?

 こんな貴重そうなのもらっても」


「私は使わないしね。

 それに君ならすぐに必要なくなると思うよ。

 動作なしで無詠唱使えるようになるだろうから」


「けどあれ魔力を集めるイメージもしやすいので便利なんですよね」


「甘えない。

 ノーモーションで放てたほうが時間短縮になるしなにより相手に狙いがばれにくいんだからら」


「そうなんですけど、師匠ははじめから使えたんですか?」


「はじめからだね!

 もともと構えをとるつもりもなかったし」


(この人はどこまでものぐさなんだ)


「ん?何?」


「いえ、師匠はやっぱり天才なんだなって感服していたところです。」


「えっやっぱり? えへへ。

 カイリは素直じゃないから褒められると照れちゃうな」


 ちょろいなぁ、この人。

 するとソフィアがまた袋をごそごそしだし古そうなワインを取り出した。


「ゲインさん、ご馳走になってばかりもわるいのでコレ空けちゃいませんか?」


「そのワインはローエンスの幻!」


「私が学院を卒業したお祝いにババァっ…導師からパクっ…頂戴したものです」


 それ頂戴の意味ちがうよな。


「アイリさんもよろしければどうですが?」


「じゃあ私もいただこうかしら」


 大人達が酒盛りを始めるとそわそわしていたレイラが意を決したようにこちらに向き直った。


「カイリ、あの、ごめん」


「ん?何が?」


「ソフィアさんとのこと……私が勘違いしてママ達に話したの」


「そうだったんだ」


「ごめんなさい……」


「ん、別に謝る必要ないよ。

 心配して話してくれたんでしょ」


「……」


 子供が知らない大人と普段入らない宿にいたら心配するだろう。


「……ごめん」


「だからいいって」 


「あのね、お詫びじゃないけどこれあげる」


 そう言って青い紐を渡してきた。

 レイラが髪を纏める際に使っているのを何回か見たな。


「これ、レイラのお気に入りでしょ。

 普段も汚れるのがいやであまりつけてなかったじゃん」


「うん、けどあげる。

 カイリ髪伸びて鬱陶しいって言ってたでしょ?」


「うん、髪短く切ろうとすると母さんもアリスも駄目って言うんだよ」


「私もやだ。

 カイリの髪艶々で綺麗だからもったいないもん」


「レイラまで」


「ふふっ」


 その日はじめてレイラが笑った。


「ねぇカイリ後ろ向いて。

 縛ってあげる」


 レイラに背をむけるとその小さな手で髪を後ろに束ねて三つ編みを作ると青い紐で縛る。

 男がする髪型では無いが纏まってる分気にならない。


「出来た」


「ありがとう。

 だいぶすっきりした感じするよ。

 よく三つ編みなんて出来たね。

 難しそうなのに」


「うん、たくさん練習したから。

 カイリもすごく似合ってる」


 そう言って嬉しそうにレイラは笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ