第20話 カイリ~レイラ視点~
カイリは私の幼馴染みだ。
カイリのママに似て、銀色のツヤツヤした髪にキレイな紫色の目をしている。
カイリを知らない人はみんな女の子と勘違いする。
女の子扱いされると「僕は男です」と一言必ず言っていたのに、最近はめんどくさくなったのか一度言った事のある人には信じてもらえなくてもまた間違われても否定しなくなった。
ただそんな時はどこか遠い目をしている。
そんな女の子扱いされるカイリは変わっている。
暇があれば木でできた剣や槍を素振りしている。
よく他の男の子が格好つけて振り回すのとは違ってとても真剣に振っている。
以前カイリのパパがうちのパパと家でお酒を飲んでいたときに、朝稽古をつけていると話していた。
「カイリは俺なんてすぐ越えるかもしれない。
部下のミゲルよりもう強くなった」
「また息子さん自慢ですか?
ミゲルさんより強いんじゃ、ゲインさんを入れなかったらこの町で一番強くなっちゃいますよ。
ミゲルさんも聞いたら気を悪くしますよ」
「普通そう思うよなぁ。
けどこの前ミゲルをうちにメシに呼んだとき、試しにカイリと手合わせさせたんだ」
「まさか本当にカイリ君が勝っちゃったんですか?」
「いや、勝負にならなかった。
カイリのやつ、攻めずにミゲルの攻撃を木刀で受け流してたんだけど、途中から木刀も使わずにギリギリでかわし始めてな。
ミゲルも実力が違うと気付いて勝負を切り上げたんだ」
「それは…またすごいですね。
けどカイリ君は何で攻撃しなかったんですかね?」
「俺も後で気になって聞いたら『父さん以外の剣筋って知らなかったから、他の人のをちゃんと受けてどこまで対応出来るか確かめたかったんだ』だとさ」
「・・・・・うちの子と同じ8歳ですよね?」
「いや~まいったね。
大人に気を使ったり、調子に乗って手を抜いた訳じゃないんだもんな。
俺がミゲルレベルの大人に勝てるようになったのは12歳のころだったし、その時は調子に乗って後で酷い目に遭ったしな」
「ああ、あの話ですね」
「やっぱ知ってるの?」
「この町の武勇伝ですよあの話は。
ぜひゲインさん本人から聞かせてもらいたいですね」
「やだよ。
大体そういうのは尾ひれついてるもんだし、何より若気の至りだ。
それに今までも酒の席で“あの人”と一緒になると必ずいじられてきたんだ。
勘弁してくれ」
とそんなことを話していた。
つまり大人じゃないと入っちゃいけない山もカイリならなんの問題もなく入れるのだそうだ。
カイリは一年前から午後は山で過ごすようになった。
山で薬草をとったり動物を狩ったりしているらしい。
毎回、獲物を持ち帰ってくるから町の猟師も顔負けとママ達が話してた。
うちにもたまに持ってきてくれる。
基本午後は山で過ごすようになったカイリだけど、私が前もって約束した日は山に行かず一緒に遊んでた。(むかつくことに三回に二回は断ってくるけど)
だからだろう。
カイリは山の地形に詳しい。
私がこの間、家出したときもカイリが一人で探しに来てくれた。
誰よりも先に見つけてくれた。
あのときの事を考えると何故か胸が痛くなって顔が熱くなる。
しばらくはカイリと上手くしゃべれなかった。
ようやく普段通りにしゃべれるようになり遊びに誘いに行くといつもいない。
全然会えない。
他に友達ができた?
う~ん、あのカイリが?
カイリは愛想が悪い・・・わけじゃないんだけど、他の子供と遊ぼうとしない。
私とカイリの弟たちを抜いたら遊ぶ人はいない。
それを気にしてる様子はないし、一人になったら剣を振ったり、狩りをしたり、本を読んだりするのだろう。
やっぱり変わってる。
そんなカイリに友達?
想像出来ない。
けどもし私に黙って他の友達と遊んでいたときは・・・何発入れれば気が済むかな。
そういえばママが『男が行動に不審があれば女を疑え』って近所のおばさんと話してた。
・・・女の子だったら一緒に遊べばいいんじゃないかな?
なんだろ?
モヤモヤする。
私はそんなモヤモヤが嫌でカイリに直接聞けば解決すると思って朝ごはんを食べたあとすぐカイリの家に向かった。
カイリの家の前に到着するとちょうどカイリが家を出るところだった。
「カ、カイリ!今日は何する予定なの?」
うっ、少し噛んじゃった。
なんでまた緊張してるの?
「ああ、おはようレイラ。
ごめん今日は用事があって出掛けるんだ」
「そうなの。
じゃあ遊びましょ」
最近わたしと全然遊んでないじゃない!
「えっと・・・レイラさん、だから今日は用事かあっt」
「じゃあ一緒に行くわ!」
「・・・あ!あんなところにUFOが!!」
「ゆーふぉーって何よ?」
「・・・・・!」
カイリはワケわからないことを叫んで空を指差して黙り込んだ、と思ったら急に走り出した。
そう、そんなに私をのけ者にしたいのね。
2年前まではカイリより私の方が足が速かった。
カイリパパと特訓するようになってすぐ抜かされた。
今はもっと速い。
あっという間にカイリの背中が小さくなる。
追い付きたくて必死に足を前に出すけどどんどん遠ざかる。
もっと速く足を動かそうとするもつれて体が浮いた。
気付いたときには転んでいた。
カイリはわたしが転んだことに気付かず走り去ってしまう。
「うう・・・絶対泣かす!」
服の汚れを払いながら立ち上がって膝を見ると血は出ていないし足首も捻ってはいないようだった。
カイリの姿はとっくに見えない。
けど、向かった方角からだいたいの検討はつく。
「町中かな?」
歩きながらカイリのことを考える。
カイリは愛想はないけど、私のことを避けるようなことはなかった。
そういうときは本当に用事があるのだ。
だから今日も本当に用事があるのだろう。
私の約束があるときは約束を優先してくれるし、弟や妹のこともちょっと気持ち悪いくらい可愛がってる。
けど用事が先にあるときに私を優先してくれたことはない。
それがずっと不満だった。
町中に入るとパン屋や肉屋、道具屋さんが建ち並び賑わっている。
わたしのパパは商人で王都にもよくお仕事に行っている。
パパが言うには王都はこの町の10倍以上賑わってるらしい。
私にはちょっと想像がつかない。
さらに歩くと宿屋の前で怖い顔のおじさんが入り口を掃除していた。
見かけによらず細かいところまで丁寧に掃いている。
なんとなく目がひかれ、その様子を見ているとカイリの声が聞こえてきた。
「早く起きてくださいよ」
宿の二階の窓からカイリが見える。
「今日は午前中からの約束でしょう?」
「あと少しだけ~」
「シーツ引っぺがしますよ」
「う~」
「う~じゃなくて起きてください」
「起きるからシーツの端を掴まないで!?」
すると下着姿の大人の女の人が見えた。
青い髪でとてもキレイな人だ。
「 」
言葉に出来なかった。
わからないけどショックだった。
ただここにはいたくなくて、来た道を戻った。
カイリは愛想は悪くはないけど良くもない。
けど優しい。
私がパパとケンカして家出したときも私を最初に見つけてくれた。
帰ろうって言われたけど帰らないって言ったら一晩山の中一緒に居てくれた。
次の日の朝、パパとママとカイリパパや衛兵さんに見つかって怒られた。
けど一番怒られたのは何も悪くないカイリだった。
カイリはカイリパパとの約束を破ってでもわたしと居てくれた。
怒られた後も同じようにわたしと居てくれると言った。
わたしのことを大切と言ってくれた。
笑いながら帰ろうって言って手をひいてくれた。
あのときのことを思い出しながら歩いているといつの間にか家に着いていた。
家にはママとカイリママがいた。
「あらレイラ遊び行ったんじゃなかったの?」
「・・・・・」
「どうしたの?」
「どうしよう?」
「何が?」
「カイリが・・・」
もう我慢出来なかった。
涙が溢れて止まらなかった。
「他の女の人とあってて、私より、その人と、」
言葉かうまく繋がらない。
「でもそれがやで、」
「あらぁ、ついにライバル登場しちゃったかぁ。
カイリ君優しいしかわいいからね~」
「まったく、うちの子もこんなかわいい子ほっといて何してるんだか」
ママ達がニヤニヤしていたけど、わたしはそれどころじゃなくて泣いていた。
私のモヤモヤはカイリを独り占めにしたかったんだと気付いた。
好きなんだと気付いた。
「カイリはわたしのこと大切って言ってくれたけど、わたしがカイリのこと大切にしてなくて、よく怒ったりしてたらから、」
「レイラちゃんは優しいわよ。
カイリだけじゃなくてギルやアリスの面倒も見てくれて。
それに好き勝手やってるのはカイリなのにいつもカイリを構ってくれてるんだもの」
カイリママが優しく抱きしめてくれた。
大きな胸で包んでくれた。
そこでわたしは思ったのだ。
「わたしじゃダメなんだっ、カイリ、大人っぽいし、やっぱり大人の人じゃないとダメなんだっ」
「「?」」
「すごいキレイな人だった、う~っ」
「「??」」
「胸もカイリママほどじゃないけどうちのママよりあったし」
「ちょ、レイラちゃん?
カイリはどこでどんな女の子と遊んでたの?」
「宿屋で大人の裸の女の人といた」
「「!?」」




