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黒龍殺しの付与術師  作者: しきな かいどう
少年期
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第19話 弟子~ソフィア視点~

 学院を卒業してそれなりの時間が経った。

 その間に「仕事」を言い訳に弟子をとらずに逃げ回るのにも限界がきていた。

 そろそろあのババァが本気で怒り出すころだろう。

 そもそも弟子を育てる事がまずめんどくさかった。

 さらに私が優秀過ぎたのも事態をややこしくしていた。

 成績が優秀で卒業した魔法師には貴族がこぞって子供を弟子にと申し込んでくる。

 魔法は才能に大きく左右される分野だ。

 貴族の子供に才能があればいいが、なければそれは教え方が悪いと言い出す。

 しまいにはろくに魔法を使えやしないのに学院へ推薦しろと喚く始末だ。

 推薦したところで入学試験に落ちるし、万が一通ったところで進級出来ないだろう。

 そしてそんな弟子を推薦した魔法師は魔法師のコミュニティで笑い者にされる。

 自分が決めた弟子の結果なら何も気にせず受け入れられるが、押し付けられたお荷物で恥をさらすのはごめんだ。

 雲隠れのつもりで久しぶりにこの町を訪れてツテを頼ったところ、にべもなく追い払われた。

 まあ予想はしていた。

 すぐ町を離れる必要性もないし、昔の記憶を頼りに山を散策してまわった。

 そこで懐かしい場所にたどり着く。

 天気も良かったし、魔物避けの結界を張り、子供の頃のように寝転がって昼寝をした。


 そしてあの子と会った。





 弟子をとった。

 昼寝をする前まで、まさか自分が弟子を取るとは思っていなかった。

 けどかわいい子だったので後悔はしていない。

 弟子のカイリと喋ると変わった子だと思う。

 本人は8才と言っていたが、見た目のかわいさに反して大人びていてチグハグな印象を受ける。

 以前、1度だけ師匠の真似事で子供に魔法を教えたことがある。

 その子も同じかわいい子だったけど性格は全然似てない。

 カイリはちょくちょく敬語で嫌みを、気付いていないかのように師匠である私にいい放つ。

 あれは間違いなく確信犯だ。

 問い詰めるとニコニコしながら可愛い顔で「気のせいですよ」と言うのだ。

 人のことは言えないけどなかなかいい性格してる。

 それでもいい子なのだと思う。

 見ず知らずの私を風邪引かないように起こしてくれたり、宿を紹介してくれたり、掃除をしてくれたり本人は認めないだろうけどお人好しだ。




 とんでもない子を拾ったかもしれない。

 修行初日でいきなり魔力感知をやってのけ、さらに拙いながらも魔力操作もやってのけた。

 当時、私が5才のころは魔力操作を含め3日掛かった。

 それでも周囲からは天才だ非常識だ等と言われた。

 それもそのはずで通常は魔力操作が出来るまで2月は掛かると言われている。

 この子の才は私を越えているかもしれない。

 ただ、修行に取り組む姿勢に危うさを感じた。

 必死過ぎるのだ。

 普通は子供が魔法と聞くとはしゃいだり(私は面倒くさがったが)、ましてや才能があると言われれば受かれたりするものだが、この子にはそれがない。

 一体何を焦る必要があるのだろう。

 普段はふてぶてしさを見せるくせにたまに壊れ物のような雰囲気を纏う。

 ほっといたらいけないと思った。

 いや、この子は私がほっといてもやっていけるだろう。

 わたしがほっときたくないんだ。

 人と深く関わらないようにしてきた私にとってこんな感情は初めてだ。

 けど悪くない。

 師匠と弟子なのだ。

 少しあのババァの気持ちが分かった気がする。




 修行をはじめて1月が経った。

 その期間でカイリは火属性の初級を習得してみせた。

 普通、最初の属性魔法は1年以上掛かると言われている。

 しかも私と同じ無詠唱で。

 無詠唱は私が知る限り、出来る者はほんの数人しか知らない。

 詠唱を大幅に短縮する短縮詠唱なら熟練の魔法師で出来るものはいる。

 けれども無詠唱、つまり詠唱破棄は違う。

 魔力操作とイメージ力が重要と言われているが本当のところはわかっていない。

 ただ言えるのは熟練度の問題ではなく、いわば特別な感覚を必要とすること。

 出来ない者には研鑽しようが知識を積もうが無理なのだ。

 これは魔法に携わるものにとっての残酷さであり、無詠唱は憧れと同時に嫉妬の的になる。

 この子の魔法感知と魔力操作の素質ならと試しにやらしてみたら出来てしまったのだ。

 そしてカイリはそれに気付いていない。 

 私がはじめに木属性の魔法を無詠唱で使ったのでそれが普通だと思っているのだ。

 子供にしては達観した様子をみせるけど、常識的な部分がたまに抜け落ちている。

 本当に面白い。 

 次は何を教えよう。

 一体いくつの属性を習得出来るのか楽しみだ。




 帰りに一度、カイリに“今”について話した。

 この子は既に自分の考えを持っていて、人の意見にたいして聞き入れる柔軟性はあるけど、ある一定のラインを越えると絶対譲らないところがある。

 私との話はカイリにとってどう受け取って貰えたのかわからない。

 ただ真剣に聞いていてくれたことはわかった。






 早くも二ヵ月目で水属性魔法を習得し、第三

 属性の修行に入った。

 魔法習得の要領を得たようで、さらに風属性はどうやらカイリに合っているためか一月もかからず習得出来そうだ。


「師匠、今週末何か用事ありますか?」


「ないよ。

 何?

 ピクニックする?!」


「いや、しませんけど」


「なんだ」


「しませんけど、良かったら夕飯うちで食べていきませんか?

 両親にもお世話になっていること説明したいですし」


「うーん、いやぁ、お邪魔するのは悪いし、やめておくわ」


 めんどくさい。

 カイリの両親ならいい人なんだろうけど、それとこれとは別だ。

 私は人嫌いではないけれど人付き合いは嫌いなのだ。

 ものぐさなだけとも言うが。


「めんどくさいだけですよね」


「うっ」


 この子にはなぜか内心を見透かされる。

 8歳児に見透かされる自分の心理構造をちょっとどうかと思う。


「そっ、そんなこと、うん、今度お邪魔しようかな~」


 誤魔化しながら吐いたこの言葉が、まさか後日すぐに実現するとは思っていなかった。  

 

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