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黒龍殺しの付与術師  作者: しきな かいどう
少年期
22/101

閑話 かくれんぼ ~前編~

 閑話は2部構成にしない。

 何故ならなんかそれセコイからと言いましたが2部構成になります。

 普段は1話3000文字~4000文字のところ何故か1万文字数をオーバーしてしまったので流石に分けました。

 後編は明日の朝に投稿予定です

 玄関の呼び鈴を受けドアを開けるとそこにはハーフエルフの少女が立っていた。


「カイリ!」


「ああ、レイラ。

 おはよう」


「アリスちゃんとギル君は大丈夫?」


 二人は二日前から風邪で寝込んでいた。


「まだ熱は下がらないみたいだけどそこまで高くないから大丈夫だよ」


「そう、それならよかった」


「心配してくれてありがとう。

 だから今日は遊ぶ予定だったけど二人の面倒を看たいし、それに――」


 すると後ろからアイリが顔を出す。


「あら、私が看るから大丈夫よ。

 カイリはレイラちゃんがせっかく来てくれたんだから遊びに行ってきなさい」

「今日はかくれんぼするわよ!」


「……」


「カイリ?」

「す・る・わ・よ!」


 先程から息の合った二人に押しきられて了承するしかなかった。

 取り敢えず村の広場に移動する。


「じゃあ最初は僕が探すからレイラが隠れて」


「広場の大時計で10分で見つけられなかったら交代ね!」


「……短くない?」


「そう?」


「レイラは隠れるの上手だから10分じゃ見つけられないよ」


「ふ、ふん!

 なら仕方ないわね!

 制限時間は30分よ!」


「……それくらいあれば読めるか」


「?」


「じゃあ始めよう」


 カイリが眼を閉じて100秒数え始めるとレイラは急いで駆け出す。

 隠れるエリアは村の広場。

 この広場には小さな教会や露店、林があり隠れる場所には事欠かない。

 レイラは露店のおばさんに声を掛け店の裏側に隠れる。

 活発で人見知りしないレイラは町のお店の人とだいたい知り合いだ。

 それにレイラの父親が色々な商品の仕入れを商いとしているので親子共に知られている。


「レイラちゃん、今日もカイリちゃんと遊んでるのかい?」


「うん。

 もしカイリが通っても知らないふりしてね」


 可愛らしく人見知りしないレイラを露店のおばあさんは孫を見るかのような眼差しを向け了承する。

 すでにこの店界隈の人達はレイラにだた甘だった。


 ~30分後~


 レイラは大時計の針が制限時間を示すと店の裏から出てスタート地点に戻るとカイリはちょうど教会から出てきたところだった。

 全く見当外れの場所を探していたカイリにレイラは得意気だ。


「カイリ!時間切れね!

 わたしの勝ち!」


「もう時間かぁ。

 レイラはどこに隠れていたの」


「ひみつ!」


 楽しそうに笑うレイラ。


「次はカイリが探す番だから!」


 大きな声で数え出すレイラ。

 カイリは焦った様子もなくその場を離れる。

 100数え終わって瞼を開けると眼を爛々とさせ走り出す。


 結果はあっけなかった。


「カイリ見っけ!」


 広場の近くの林の影に座って隠れているところを発見した。


「あー見つかっちゃったなぁ」


「じゃあ交代ね」


 そして再びレイラが隠れてカイリが探す、はずなのだが……。


 時計はまもなく20分を経過。

 レイラはふと疑問に思い店主に質問する。


「……ねぇ、おばちゃん。

 わたしが隠れている間、カイリこの道通った?」


「うーん、さっきもだけど一度も通ってないねぇ」


「……」


 レイラは時間前に広場に戻るとそこにはカイリはいない。

 近くの教会へと歩き、扉をそっと開ける。

 教会内を見渡すと誰もいない。

 いや、教会にいくつも並べられた長椅子の背もたれの上にちょこんと銀色の草が生えている。

 いや、草ではなくあれはアホ毛だ。

 レイラは足音をたてずに近づくと後ろから思いっきりそのアホ毛を引っ張った。


「いたっ!?いたたた!?

 抜ける!抜けるって!ってレイラ!?」


 アホ毛の正体は椅子に寝そべって本を読んでいた男の子だった。


「カイリ、みーつけた」


 レイラの口許は笑ってるが目が笑っていない。


「え、何で?俺が探す番でまだ時間も経ってないのに……」


「そうね?

 時間もまだ経ってないのに何でカイリが探さず隠れてるのかしら?」


「……あ!レイラみーつけた」


 ブチン


 教会の床に銀色の毛髪が一房舞い落ちた。







「どうしたの?

 そんなにプンスカして」


「なんでもない!」


 その後レイラは怒って家に帰った。

 家に帰ってからもレイラの怒りはおさまらなかった。


(せっかく、たまには二人で遊べると思ったのに!)


「カイリ君と喧嘩したの?」


「だからなんでもないっ!」


 その様子を母親のルーシが心配するでもなく楽しそうに見ている。


「ただいま~」


「お帰りなさいあなた」


「……おかえり」


「ん?どうしたんだレイラ?」


 父親のエドガーが帰宅し、いつもなら胸に飛び込んで迎えてくれるはずの愛娘の様子に不思議に思っているとルーシが教えてくれた。


「カイリ君と喧嘩したのよ」


 その言葉にふん!とそっぽを向く娘。

 父親のエドガーとしてはそんな態度も愛らしく、またいつもカイリの話しばかりで父親心としては複雑だったので少し嬉しかった。

 そんな心境を正確に見抜いているルーシは呆れ顔だ。


「なんで喧嘩したんだい?」


「……かくれんぼの最中に本読んでた」


「それはカイリ君が悪いな!うん!」


 ここぞとばかりに娘の見方アピールをする。


「何の本読んでたの?

 カイリ君に読んでもらって一緒に楽しめば良かったんじゃない?」


 そんなんで娘の好感度は上がらないわよと夫の無駄な行いを横で見ながらルーシが提案する。


「絵本じゃなかったもん。

 何か文字ばっかりびっしり書いてあってつまんなそうだった」


「ほう、何かの参考書かな?」


 商売柄、本も扱うことがあるエドガーの興味は自然とそちらに移った。

 また、娘と同い年の男の子の教養に驚きを隠せなかった。

 世間では識字率はそれほど高くない。

 貴族や商家など必要性がある者が覚え、一般家庭において必要な職業に就くことを目指した際に覚えるものだ。

 なので覚え始めるのは12歳くらいからが一般的なのだった。

 それをまだ8歳の子供が絵本でなく字で埋め尽くされた本を読む。


(ゲインさんはカイリ君を将来どうしたいのだろう?カイリ君なら商人という道も十分ある)


 エドガーはカイリという少年を認めていない訳ではない。

 単に娘と仲が良いのが羨ましいという嫉妬があるだけで、むしろ娘と結婚するのならカイリのように教養と武術をあわせ持った者が良い。

 今回は本に夢中になりレイラを怒らせてしまったようだがエドガーにも似たような経験はある。

 ましてやカイリは子供なのだから好奇心を抑える方が難しいだろう。


(はて、カイリ君は数字の計算は出きるのだろうか?商売に興味はあるかな?)


 と完全に仕事方面に考えがいってしまっておりさらにルーシは呆れ顔からため息を吐く。

 エドガーははっとして意識を戻すとレイラもジト目で見ていた。

 エドガーの悪癖というか職業病は親子で買い物に行った際、お店の商品の希少性や流通価格等が気になりしょっちゅう起こり、その度にレイラに注意される。


「ところであなた、言わないの?」


「今日は……やめとこうかな」


「そう言ってもうすぐ1週間経つけど?

 先方にも返事はしたんでしょ?」


「う、うん~」


「ねぇ、何の話し?」


「実は……」






「パパなんて嫌い!」


「レイラ……」


「男の人はいつもそう!

 家族の為だと言っておいて結局は自分の事を優先するのよ!」


 そう言い放つと家を飛び出してしまった。


「レ、レイラ!そんな言葉誰に教わったんだ!??」


 もちろんご婦人方の世間話からである。



 一方その頃、カイリは自宅のリビングで自分の頭頂部をさすっていた。


「どうした?コブでも出来たか?」


「父さん」


 カイリは仕事帰りのゲインを見上げる。

 正確にはその頭部を。


「父さん」


「なんだ?」


「母さんの家系に頭皮が薄い人っている?」


「いや、母さんのご両親や祖父母はみなフサフサだぞ?」


「なら父さんの家系は?」


「うちは親父方の家系が薄かったかな?

 何でだ?」


「ううん、何でもない。

 ありがと。

 ……母さん似だから大丈夫かな?

 でも年をとってから急に来る人もいるって言うし」


 ブツブツ言いながら子供部屋に向かう。


 入れ替わるようにアイリがリビングに入ってきた。


「何かカイリがブツブツ言ってたけどどうしたの?」


「い、いや?よくわからない。

 …………なあアイリ?」


「なあに?」


「俺、別に髪の毛薄くなってないよな?」


「全然大丈夫よ?

 もしあなたの頭がツルツルになっても愛せるから」


「ありがとう……」


 それはどっちの大丈夫なのだろうと思いながら素直に喜べないゲインだった。

 すると玄関から呼び鈴が鳴る。


「はーい」


 アイリが返事をして玄関に向かおうとしたところを遅い時間であることからゲインが手で制止して、代わりに玄関へと向かう。

 扉を開けるとそこには息を切らしたエドガー夫妻がいた。


「おお、エドガーか……何かあったか?」


「はぁ、はぁ、うちの、娘、来ていませんか?

 夜分、すみません」


「レイラちゃんか?

 来てないな。

 確か昼間はうちの息子と遊んでいたはずだが」


「はい。

 一度帰ってきたのですが少し私と揉めてしまい出ていってしまったのです」


「それは、心配だな。

 今日の当直と非番の連中に村の周囲の捜索を当たらせる。

 エドガーはレイラちゃんが行きそうな知り合いの家を尋ねろ!

 ルーシさんはレイラちゃんが帰ってきたときのために自宅で待機してください。

 アイリは子供達がまだ風邪で寝ているし、レイラちゃんがうちに来る可能性も十分ある。

 家で待っていてくれ。

 俺は念のため山に一一」


「僕が行く」


 ゲイン達が振り返るとそこには既にコートを羽織り右手にランタン、左手に短剣を持つカイリがいた。


「山なら僕の方が詳しい」


「いや、しかし子供には危険だ!

 ありがとうカイリ君。

 気持ちだけで一一」


「僕が、行きます」


 頑として譲らない少年にエドガーは圧倒されていた。

 エドガーは、外見が女の子のようで礼儀正しいカイリしか知らない。

 剣の腕前などはゲインから聞いていたがその容姿からいまいち想像出来ていなかった。


「カイリ、昼と夜の山は違うぞ」


「知ってる。

 楽観もしていないし、調子に乗っているわけでもないから」


「……ならこの懐中時計で3時間で戻ってこい。

 見つからなくてもだ。

 その約束が守れるなら、いいぞ」


 ゲインはカイリの言い方に引っかかるところがあるものの、条件付きで許可した。


「ゲインさん!?」


「カイリなら問題ないし、時間がおしい。

 俺は山の周囲の森を探す」


 こうして家出少女の捜索が始まった。

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