第14話 師弟
「いいえ、結構です」
「返事はやっ! ってか断るの!?」
「知らない人と話すなと親に言われているので、これで失礼します」
「さっきまで普通に話してたじゃない!?」
「……」
「無言はやめて!
それ地味に傷付くやつだから!」
「あ~、えっと、はい」
「とりあえず返事しました感丸出し!
それに徐々に距離取ってるよね!?」
ちっ、めんどくさいな。
「それにまだ何を教える師匠か言ってないし、気にならない?」
「魔法……ですよね」
「ほぅ、よくわかったね!君。
やっぱり私の魔法師としての風格で分かってしまうものかな?」
うぜぇ、しかもテンパってるときと調子に乗ってるときの口調が違うのもよりうぜぇ。
「(白のダサい)ローブと帽子でわかりますよw」
「そっか、あれなんか言葉の頭と最後に悪意を感じる?」
「あったばかりの人に悪意なんて持ちませんよ。
もう日が沈むので失礼します」
「え? え? 君は魔法に興味はないの?」
その言葉に足が止まる。
興味は、ある。
この世界で生きるならば覚えておくべきものだろう。
それにはゲインも言っていたがきちんとした指導者が必要だ。
彼女の服装はこの町では見ないかなり上等なモノ。
魔法師がどのくらい稼げるものか知らないがそこそこは出来る人なのかもしれない。
ただわからないのは、
「何で僕を弟子にしようと思ったんですか?
ちなみにうちは別にお金持ちじゃないですよ」
「お金なんていらないよ」
「じゃあ他の見返りですか?」
彼女はハッと笑いながら手を振る。
「見返りもいらないいらない。
タダ!無料だよ!」
「遠慮します。
タダより怖いものはないので」
「待って待って!
君、その歳でどんな人生歩んでいるのさ!?」
前世がろくでもなかったものでね。
「見返りが何もないということはないでしょう?」
彼女の目を正面から見返すと、うっと言葉を詰まらせた。
「……じゃあ正直に話すね。
実は私、少し前にあるところを卒業して一人前になったんだけど本来ならそれに合わせて弟子を取らなくちゃいけないんだよね」
「卒業してすぐに弟子なんて育てられるものなんですか?」
「まあ、普通は無理だよ。
私には出来るけど!」
腕を組み得意気に話す彼女のローブには多数のくっつき虫がついている。
「だから一般的には基礎的なものを教えるだけでいいんだ。
その中で才能ありと判断された弟子は師の推薦を持って国の運営する学院に入ることが出来るの。
ちなみに私は主席入学、主席卒業だけどね!」
「学院?」
「そう、騎士科と魔法科、あとは一般科の3つからなるこの国で最上の教育機関よ。
魔法科に入れば中級、上級、才能があればその上の魔法も学べるんだ。
まあ私でも教えられるけどね!」
さっきから最後の一言がうぜぇ。
「初めから学院で基礎教えれば師がつく必要はなくないですか?」
「それが出来ればね。
魔法は才能によるモノが大きい。
それを才能のない者含めて大勢を見て教えるなんて人も足らなければ時間もないのよ。
初級ですら習得にそれなりに時間がかかるからね」
「だから卒業した魔法師に才能のある者を見つけ出させて最低限の基礎を教えて学院に送り出せ、ってことですか」
「その通り。
魔法師の一定以上の才能は貴重かつ希少。
待ってるだけじゃ人材は見付からないからね」
「仕組みは分かりました。
それで最初の質問なんですけど、なんで僕なんですか?」
「美少女だかr」
「帰ります」
「待って冗談だから!」
「それに僕は男ですから」
「美少女の僕っ娘かと思ったら美少年だ、とだと!
……それはそれでi」
「本当に帰りますね」
「待って待って!
君の魔力量が一般的な子供の魔力量とは比較にならないからだよ!」
「魔力量が?」
「うん、才能で初めから多い人もいるけど、それでも君の魔力量はちょっと普通じゃないよ。
身体能力上昇によるもの、だよね?
君はいったい今レベルいくつなの?」
以前ゲインから聞いたレベルか。
「測ったことないです。
僕は魔法師でもないし、冒険者でもないですから」
「まあそりゃあそうだよね。
今歳はいくつ?」
「8歳」
「8歳じゃあ普通はレベルなんて上げる機会そうそうないはずだけど」
「あ、一応2年前から毎日父と剣と槍の稽古をしてます。
それとここ1年ほどは弓でこの山の鳥や猪なんかを狩っていますけど」
「いやいや、まって今まだあなた8歳よね!?
今の歳でも十分あり得ないけど、それを前から?
そう言えばこの場所も、大人でも登れないような崖を越えないと来れないはずだけど!?」
「はい、この山に住む猟師さんに教えてもらいました」
「いや、そういう意味じゃなくて!ってかあのじじいに教えてもらったの!?」
「はい、そうですけど?
知り合いですか?」
「ま、まあね」
急に歯切れが悪くなった。
「ちなみに弓も教わってます」
「マジかよ」
なんか驚いて口調変わってるし。
「あー、勘違いされやすいですけどおじいさん意外と親切ですよ」
「いや、あれを親切と言える君がすごいよ。
確かにあのじじいから鍛えられてれば猪くらいは狩れるか。
いや、猪くらい狩れなくちゃ教えてもらえないか?
ちなみに君の父君は何を?」
「ただの町の衛兵ですよ。
一応役職はついてるみたいですけど」
「この町の……。
お名前は?」
「ゲインですけど?」
「ああ、やっぱり。
少し納得出来たよ。
それでも君は非常識だと思うけど」
「??
父を知ってるんですか?」
「私が直接は知らないよ。
私の……そう友人と、あと職場の上司がね」
今日一番驚いた。
「あなた、働いていたんですか!?」
「君はいったいどこに驚いているんだい!?」
ん?
「そう言えばまだ名前聞いてませんでした。」
「そうだね。
結構話してたのにね」
彼女はそう言いながら笑う。
美人だけどすまし顔より笑い顔の方が似合う人だと思った。
「僕の名前はカイリです」
「私はソフィア。
じゃああらためて。
ねぇ、私の弟子にならない?」
俺は少し考える。
「それは僕が人より魔力量が多いからですか?」
「ごめん、魔力量が多いのは嘘じゃないけど、本当は違うの」
「……」
「君、起こしてくれたでしょ。
私が風邪ひかないように」
「そりゃあ誰だって起こすでしょう」
「そうかもしれない。
それでも君が優しいのには変わりない。
けどもっと単純に、起こしてくれた君を見たとき、あ、この子だ! と思ったの」
「勘ですか?」
「勘よ」
何故か自信満々に笑う彼女を見て、「まあいいか」と思った。
「分かりました。
お願いします。
師匠」
「うん。
よろしくね」
こうしてソフィアと師弟関係になった。




