第13話 ポンコツエルフ ■
この穴場の薬草の採取場所は山奥にあり、おじいさん以外の人を見るのははじめてだった。
「ってか生きてる?」
仰向けに寝る女性に近付くと、控えめな胸の上におかれた白色とんがり帽子が上下していた。
Bか。
この世界に偽装の技術はおそらくないはずだ。
べつに偽装が悪いと言ってる訳ではない。
何も偽らずともそのままの姿でいいのだ。
有名な歌でもそれを肯定している。
それに以前Dが好きと言ったが他が駄目なんてことは決してない。
胸に貴賤なし!
それこそ差別野郎はクズ野郎だと思う。
いや、話が逸れた。
どうやらBさんは寝ているだけらしい。
女性の容姿は17歳前後、身長160後半に細身、群青色の長い髪をしていた。
服装はよくゲームの中で魔法使いが着ているようなローブ。
それも白色で所々細やかな刺繍が入っている。
全身白色……。
「……だせぇ」
ピク
一瞬女性の耳がぴくりとした。
一番目を引かれたのはその耳だ。
レイラと同じように、いやそれよりも尖っている。
尖っている耳を見るとエルフよりも毎回ナメッ○星人を思い浮かべてしまう。
関係ないことを思い浮かべていると、風が吹き、鮮やかな色の髪が流され煌めく。
その下の顔があらわになると、こちらの息が止まるくらいの美しさだった。
前世を含めた乏しい人生の中、今まで見たもので一番綺麗だと感じた。
心なしか顔まで輝いて見えた。
ん?
より近付いて見ると、輝きはヨダレだった。
それも結構溢しておられる。
「さて、さっさと薬草摘もう」
俺は何も見ていない。
もとからここには誰もいない。
ブチブチ
もくもくと薬草をちぎっていく。
「すーすー」
はっきりと寝息のようなものが聞こえたが何も聞こえない。
ボリボリ
痒いのか尻を掻きだしたが何も見ていない。
「すぅこぉ、すぅごぁお、ごぉああ」
……シカトシカト。
「ごぉああ、ごぉああ、あぐっっ!!・・・ぶはぁ、こぉぉ」
うぉ!?
びっくりしたが無視だ!
「んっ、ふぁ、ふぁ、ふぁ、はっく……すぅ」
くしゃみせんのかい!
はっ無視だ無視。
「ん、ふぁ、ふぁ、ふぁ……」
……。
「わっしょいっっ」
「御輿か!」
思わずつっこんでしまった。
「ずびっ、ずー、すー」
……起きない。
気付けば日も落ちはじめ、やや気温も下がってきた。
最近は夕方になると一気に寒くなる。
……はぁ。
「起きて下さい。
風邪ひきますよ」
「すー、すー」
このままほっとくのも後味が悪いので仕方なく肩を揺するも起きる気配はない。
イラッ
「風邪ひきますって!」
「すー、すー、すー」
さらに強く揺するもまったく起きる気配はない。
イライラッ
「起きないのなら」
イラつきといたずら心で女性の鼻を押さえる。
びちゃっ
さっきのくしゃみの鼻水が手についた。
しかも結構黄色いのが。
ガシッガシッ
白いとんがり帽子にそれをなすりつけた後、
ガツッ
頭を殴る
「痛っ!? ??」
「おはようございます」
俺は満面の笑みで挨拶する。
「え??おはようございます?
ぃつー?
なんか頭痛いんだが……君何か知らないか?」
「知りません。冷えてきたんで風邪ひいたんじゃないですか?」
「いや、風邪とか内部の痛みじゃなくてもっと外部からの衝撃を受けたような……ねぇ」
「知りません」
俺はまた満面の笑みで返す。
彼女はどこか納得いかない顔をしながらも、まあいいかと立ち上がった。
俺もそれにつられて立ち上がる。
「君が起こしてくれたのか」
「冷えてきましたし、くしゃみもしてましたよ」
「えへへ、ありがとう。ん?」
見た目よりも幼い笑顔でそう言うと、今度はこちらの顔をまじまじと見つめ始める。
「なんですか?」
「君、私の弟子にならない!?」
これがポンコツエルフとの出会いだった。
やっと登場させられました。
あらすじ詐欺になるとこでした。
今後このポンコツが関わってきますので読んでいただけたら幸いです。




