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黒龍殺しの付与術師  作者: しきな かいどう
少年期
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第9話 息子2 ~ゲイン視点~

 カイリに稽古を頼まれて2年がたった。


 カイリは今8歳だ。

 それでも結果だけ言えばこの町でカイリに勝てるのは俺だけだろう。

 そのくらい、強くなった。


 2年前にカイリから、「父さんみたいに強くなりたい」と言われたときは嬉しくて気軽に引き受けた。

 カイリはよく女の子に間違われたりしているがやはり男の子だなと感心したのだ。

 今はそれだけではけっしてないと感じている。


 稽古量がおかしいのだ。


 あの歳の子供につける稽古にしては自分でいうのもなんだが十分過ぎるほど厳しくしている。

 それでもカイリは納得しない。


 負けて当たり前の模擬戦でも悔しがり、同じ負け方はしない。


 わからないことがあればしつこいくらい聞いてくるし、俺が仕事の間、一人でも時間があれば木剣や杖を振っているらしい。


 また、子供の癖に勝負の駆け引きにやけに長けていた。

 いわば勝負勘というやつだが、稽古を始めた6歳の時点で子供が部下以上のモノをもっているのだから驚いた。

 この子は天才だと思った。

 勝負勘はセンスによるものと経験によるものがある。

 カイリの年齢を考えればセンスのはずだ。

 が、実際に手合わせをすると違う、と感じた。

 うまく口では言えないが閃きよりも反復と工夫、そして経験によるものとだと感じた。

 それが余計に不可解だった。


 スキルや魔力、ステータスの伸び方次第では10代の子供がベテランの騎士や冒険者を凌ぐ力を持つ事はごく稀だが“ある”。


 仕事柄、身近にそういう人達を見てきたし、指導をしたこともある。


 しかし、カイリは……別だろう。


 はじめは騎士団の副団長やSランク冒険者に並ぶ天才だと思いつい喜んだが、次第に違うと気付いた。

 本当の天才というのは成長速度とその強さを間近で見る者達に自分達とは“違う”と絶望感を植え付ける。

 実際に一度だけ副団長の戦いを見たことがある。

 実際に目の当たりにしても、とても人間のなせる技ではないと信じられなかった。

 後にSランク以上の冒険者になった者とも子供時代に関わりがあったが、その時も“違う”と思った。

 

 しかしカイリにはそれがない。

 秀才ではあるかもしれないが、それすらもこちらが呆れるほどの努力と工夫によるものだ。


 天才ではないが、稽古量と質によってカイリのステータスと技術は同年代どころか俺の部下よりも強くなっている。


 一度、なぜそんなに頑張るのか聞いたが、


「頑張れるときに頑張っているだけだよ」


と返してきた。


 なぜか生き急いでいるように感じ心配になった。

 この子にただ戦い方を教えるだけでいいのか、もっと他に伝えていくべき事もあるんじゃないかと悩むようになった。

 

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