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黒龍殺しの付与術師  作者: しきな かいどう
第2部 討伐遠征
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若い者には経験を

すみません。書き終わっていないモノが予約更新されていたので書き直しました。

「さて、行くぞ」


「?」


 鍛冶師はそう言って立ち上がるといましがた砕けた武器を魔導具の袋に詰め込み歩き出す。


 思わずその後を追いながら疑問を投げる。


「どこに行くんですか?」


 カイリは武具の素材を買う為に商店街へ向かうのかと思ったが、返答は全く違った。


「北じゃ」


「北?(この町の北は警備隊の詰所だ。

 いや、もしかしてその先か?)」


「カイリ、お前さんの付与剣を研究するには今の手持ちの素材ではいささか足りん。なら集めればいい、幸いワシの魔導袋は特に容量が大きい。一月程度の食料なら入っとる。まあなくなればそれこそ現地調達すれば良い」


「ん?」


「ニックスランドさん、言葉が足りてませんよ。カイリ君が戸惑ってるじゃないですか。北、つまり目的地方面へ二人で先行して向かうにしても一体どれだけ素材狩りをするつもりですか?」


 ルークは呆れながら問う。


「ふん、冒険者馬鹿のお主にそんな顔される覚えはないわい。進めるだけ進むだけじゃな。どうせ遠征の目的地に近づけば近づく程希少な魔物が増える。好都合じゃろ」


「それは今回の遠征の代表者のクラウスさんと冒険者代表のサイファーさんに許可を貰わないと」


「ふん、もともとワシは今回の遠征同行の要望は断っていたんじゃ。ヨウゼンの小僧がそれでもどうしてもというからいくつかの条件付きで了承した。

 条件は道中倒した魔物の素材の融通、ある程度の自由行動の確約。だから別に許可などいらん。さあカイリ行くぞい」


「いや、許可はいらなくてもせめて報告はしとかないと。ああ、もうこうなったら何も聞かないよなぁ。

 まあでもニックスランドさんが一緒なら問題はないか?僕はこの事をクラウスさん達に伝えて後で合流するから。それとカイリ君はこれを持っていって」


 ルークは懐から小さな袋を取り出すとその中から歪な形の魔石が2つルークの指につままれる。


「これは?」


「双頭鳥の魔石だよ。一体に2つの魔石を内包した珍しい魔物で、魔力を込めると距離が近づくほど光るんだ。方角を示すわけではないけれどあると合流しやすくはなるはずだ。片方を持っていって」


「ありがとうございます。お借りします」


「ほう、なかなか珍しいモン持っとるの」


「ニックスランドさん、素材として使っちゃ駄目ですからね」


「……最近耳が遠くての。さて行くかの」


 カイリはS級冒険者は変人しかいないのかと思いながらもニックスランドの後を付いていった。




 ルークは都市の役場へと出向く。

 窓口の女性に用件を告げると一室へ案内された。そこにはクラウスとヴァネッサ、サイファー、マキナ、市長この街のギルド支長、そして何故か聖女がいた。


「なんだ、ルークどうした?」


 サイファーの問いにルークは先程あったことを告げるとヴァネッサが渋い顔をする。


「確かにニックスランド殿の同行を願うにあたってそのような条件があることは聞いていますが……」


 今回の遠征では目的地に近づけば近づく程強力な魔物も増えてくるがその分希少な素材も手に入る。

 王国からの報酬以外に軍にとっての運営収入と冒険者にとっての遠征の旨みでもある。


 カイリはまだいい。局地的な力は別として実力的にはB級相当だ。魔物の乱獲などは出来ないだろう。だがニックスランドは全盛期を過ぎたとはいえ、未だにS級の実力を持つ元は単独(ソロ)冒険者だ。ヴァネッサ自身は噂でしか知らないが昔は素材収集でギルドだけでなく王国とも揉めたと聞いている。後に揉める可能性を考慮すればお目付け役を付けておいた方が良いだろう。


「へぇ、あのじいさんが狩りねぇ。ならバゼルも一緒に行かせるか」


 サイファーは“お遣い行かせるかぁ”的な口調で言うとマキナはそれを無言で睨む、がサイファーは全く意に介した様子はない。それどころか「ふん」と鼻であしらう。


「マレプランテ亜種の討伐でバゼルとカイリ、どちらが()()した?」


 サイファーはやれやれといった仕草をしながらマキナに問い掛ける。


「……」


「言えよ」


「それは、カイリくんでしょう」


 初撃で大きくダメージを与えた上にとどめを刺したのはバゼルだ。だがクエストの魔物の正体を看破しマレプランテの生体に沿ってあらかじめ眷族を減らし、本体接触前に仲間のコンディションも整えた。さらにとどめを刺すためのアシストもしている。


「バゼルは、攻撃力だけならA級相当だが、集団戦の役割が果たせていねぇ。それを今回本人もようやく自覚したはずだ。カイリと一緒ならやつはそのことについて考えるはずだ。鉄は熱いうちにってな。んでもって熱くさせる奴が近くに居ればなおいい」


 サイファーはバゼルの成長の為だと言う。


「しかし、バゼル君ではお目付け役にはならないでしょう?」


「まあそれこそ乱獲しかねねぇな、馬鹿だから」


 ヴァネッサの問いにサイファーはカカッと笑い返し、マキナはそれに同調する溜め息を吐く。

 A級クラスの戦闘力があるといっても他は年相応の子供と変わらない。


「なら、僕がお目付け役になるよ」


 ルークが名乗り出る。


「ルーク殿にそのような役割をやらせるわけには…、()()()()()出しますので」


 ヴァネッサは軍の中から出す意向を口にするが、これには理由があった。一つ目はバランス。カイリはどちらでもないが冒険者のみの編成での先行は偏り過ぎていること。二つ目は魔物の生息情報の記録だ。今回の遠征は黒龍の討伐だが、王国及び周辺の魔物の種類や個体数などおおよそで良いので調査するように言われている。その為に()()に特化したまだ若い魔術師を連れてきていた。

 そしてもう一つ理由がある。


 ルークはヴァネッサから話を向けられても“カイリの付与魔法に興味がある”と言って同行の意志は取り下げなかった。

 だからといって軍から同行者を出さないわけでは無い、1人増やせば良いだけだ。


「ならこちらからも1人推薦したい人物がいます。エリオです」


「誰それ?」


 マキナが首を傾げる。

 マキナは冒険者側の交渉役として軍人枠の人物にも明るいが、“エリオ”という人物に関しては遠征の同行組の名簿で名前と性別を知っているだけで、人物はよく知らなかった。


「遠征の出陣式の時、確かいなかったわよね」


「ええ、少し遅れて合流したため紹介出来なかったので…。まだ13歳とかなり若いですがとても優秀な魔術師とクッカ導師から伺っています」


「へぇ、導師のお墨付きかぁ。凄いわね。それにうちのバゼルより年下。てっきりカイリ君の次に若いのはバゼルかと思っていたわ」


 若い、というよりは幼いと言った方が正しい年齢だと思うけど、とマキナは頭の中で付け加えた。


「はい、ですので導師からも魔術師としての能力は問題ないが、足りないところが多いので色々(キツイ)経験させてやってくれと言われてまして。カイリ君やバゼル君がいるなら彼女も年齢が近いし、ちょうど良いと思います。実践経験がまだ浅く今回の遠征でなるべく機会を与えたかったのですが」


 そう言ってヴァネッサはサイファーを見る。


「なんだよ」


「いえ、前衛組(戦士職)が出る魔物を瞬殺していくので、後衛組(魔法職)の役割が全く無いんですよ」


「うーん、まあそりゃあな、しょうがねぇんじゃねぇか?」


 それに関してはサイファーも思うところがあるのか苦笑する。


「ええ、まあ気持ちは分からなくもないのですが」


「どういうことですか?」


 それまでずっと黙って聴いていた聖女が首を傾げる。

 対して答えたのはルークだった。


「いや、みんな張り切りすぎちゃってね」


「それは、いいことでは?」


「張り切る理由がカイリ君でね。彼が常に前線に立って経験を積もうとする姿を見てみんな張り切ってね。しかも他の前衛が倒したときの動きを見て、色々質問してくるから嬉しくなっちゃったみたいでね」


「あら」

 それを聴いていた口元に手を当て微笑ましく笑み浮かべる聖女。


「まあ、それは冒険者だけじゃないようだけどな」


 チラッとヴァネッサの方をみやるサイファーに「うぉっほん」と咳払いを返す。


「まあ、騎士団側の若い者達は副団長とカイリ君の訓練を知っているので、なんと言うか可愛い後輩が出来た感じなのでしょう」


「そのわりには若手だけでなく中堅層も多かった気がするがな。」


「それは、似ているからで、いいえ、何でもありません」


「?」


 サイファーの指摘にある理由を返しつつもヴァネッサは一瞬クラウスを見るが彼は何も返すことなく話を聞いている。


 サイファーはそれを怪訝に思いながらも別に追求するほどのことでもないと話を進めた。


「じゃああとはルーク任せた」


「はい、任せてください。ではそのエリオという子も連れてニックスランドさんと合流してきます」


「お願いしますルーク殿。私はエリオに準備するように伝えてきます」


 ヴァネッサはそう言って部屋をあとにする。廊下を歩きながら余計な事を口にしかけたと少し自己嫌悪に陥る。


「(私は彼女(あの人)のことを直接知らないからこそどこまで踏み込んで良いのか……)」


 ()()()()になると副団長の副官として立ち振舞いにぎこちなさが出てしまう。

 これではいけないと頬を両手で叩き意識を切り替えると、後方から“タッタッタ”と足音が聴こえ振り返る。

 すると聖女が可愛らしく小走りをしていた。

 走るだけで可愛らしいとはどうやるのだと騎士団上がりの副官はそんなことを考えていると聖女は目の前に立ち止まり小さく一礼しながら一言。


「わたくしもカイリ様達と一緒に行ってきますね」


 にこやかに告げると返事を待たずに可愛らしくまた小走りで走り出す。

 あ~部屋の荷物を取りに急いでるのかぁ、という感想を抱きながらもアレ?っとヴァネッサは首を傾げる。


「…え、ちょ聖女様!?」

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[一言] 待ってた、更新ありがとう!!
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