#5 密談
3軒目に訪れた金物問屋の主人は、まさにあのひし形に二本線の模様がついた着物を着ていた。
エツゴ屋というその問屋の主人に、おリンは料亭での話を尋ねる。
「手間とらせて悪かったな。あたいらは南町の岡っ引きで、あたいの名はおリンだ。」
「私がこのエツゴ屋の店主でございます。南町の方が、一体何の御用で?」
「昨晩、ニッシン橋の辺りの料亭に、お前さんいただろう。」
「ええ、いましたよ。昨日の晩、その料亭に。」
「そこには、旗本のニシノ様と家臣のタジマ様、そして別のお武家様にサノ屋の主人がいた。そして、あんたもそこにいた。間違いないか!?」
「ええ、その通りです。」
「じゃあ、あんたらがいた部屋を覗き込んだ店子が殺されたのは知ってるかい?」
「さて、初耳ですな。でも、それがどうかしたんですか?」
「同じ部屋にいたサノ屋って言う花火屋の主人が、おキョウって言うその店子を殺すよう、ならず者どもに依頼してたんだ。それを探っていたあたいらも、殺されそうになったんだよ!」
「ほう、それは大変でしたな。」
「大変でしたじゃねえ!おめえも何か、その一件に絡んでるんだろう!」
「はて?何のことですかな?」
「人払いをしてたとも聞いたぞ!そこを間違って覗いた人間が殺されたんだ!それが無関係だと思えねえってことくらい、あたいでもわからぁ!」
「人払いしてたのは確かです。そこを覗いてきた店子を、お武家様とサノ屋の主人がお叱りになったのは私も見ております。ですが、それとその店子の殺し、そして私との間に、何の関係があるのでございますか?」
「それ以外に、そのおキョウって店子が殺される理由がねえんだよ!だから尋ねてるんじゃねえか!」
「つまり、人払いした理由が、殺しに値するほどのものだから、その場にいたお武家様、そして私やサノ屋の主人におキョウとかいう店子の殺人に関わりがあるんじゃないかと、そうおっしゃりたいのですか?」
「おうよ、話が分かるじゃねえか。」
「では申し上げましょう。人払いしたのは、単純な理由ですよ。そのニシノ様に金子をお渡ししようとしていたからにございますよ。」
「なんだって!?金子を!?」
金子を渡す、要するに賄賂だ。賄賂を渡そうとする場を見られそうになったから、おキョウを叱ったと言うのだ。
「賄賂は確かにいいことではございませぬ。が、おエドではどこの旗本、大名、いやそれどころかあなたのご主人である同心ですら、手付金と称してなんらかの賄賂を受け取っているはず。別に知られたところで、何も口封じをするほどのことじゃありませんよ。」
「だけどおキョウは……」
「夜を歩く女子が襲われることは、このおエドでは珍しい話ではないでしょう。」
「だ、だが、なんで金物屋に花火屋が、護衛役の旗本なんぞに賄賂を渡す必要があるんだ!?」
「あなたの考えの及ばぬことまで、私どもは考えているのですよ。あなたから見て無関係な組み合わせだから怪しいと考えるのは、あまりにも短絡的ではございませぬか?」
「だがよ、おキョウがサノ屋にたくさんの花火を注文したと聞いてたぞ!実際に、そのニシノ様がおめえらを使ってたくさんの花火師や鍛冶屋を使おうとしてる話も聞いている!」
「それこそ、金子を渡した理由ですよ。理由はわかりませぬが、なんでもニシノ様がたくさんの金物が御入用だと聞きつけたので、わざわざあの店に向かわれたニシノ様に御目通り願い、便宜を図ってもらったわけですよ。サノ屋さんのことは知りませぬが、あちらも同じ理由で来たとのことで、偶然居合わせたのでございますよ。」
彼の話には、一応筋が通っている。確かに賄賂を渡すのに、人がいては都合が悪い。だから人払いをした。でも、それくらいのこと、このおエドでは普通のことであり、それくらいのことで人を殺めることはない。エツゴ屋の主人が言いたいことは、そういうことのようだ。
「さ、話はそれだけです。これで満足でしょう。これ以上は商売の邪魔ですよ。帰った帰った!」
結局、何もたいした情報も得られず、そのエツゴ屋を後にする。
「あ~っ、くそっ!結局事件は振り出しかよ!」
「おリンよ、お前、あの話が全部本当だと思うか!?」
「うーん、分かんねえな。怪しいけど、筋は通ってるしな。」
「私はとても信じられないな。なぜなら、我々も殺されかけたんだ。その理由がたかが賄賂だなんて、信じられるか。それにだ。」
「なんだ?」
「もう一人の侍が誰かを言わなかった。旗本のニシノという名を使ったから、そのニシノ様に賄賂を渡したという話にすり替えて、肝心のもう一人の侍も存在をもみ消した。やはり、どう考えてもその場で思いついた作り話だろうな。」
「そうだ!その通りだ!くそっ!もう一度行って、とっちめてや……」
と、何かいいかけて、おリンはその場で座り込んでしまった。
「おい!どうした!」
「は、腹が減って……動けねぇ……」
そうだ、私もそういえば、あれから何も飲み食いしていない。事件やこの慣れない街にすっかり振り回されて、私自身も空腹であることを忘れていた。
「く、くそ……この近くの飯屋にでも行けばいいんだが……この辺りには飯屋がねえ……」
2人揃って、道端の石の上に座り込んでしまう。
そのとき、私はカバンの中の物にあるものを思い出した。
「そうだ、こういうものがあるぞ。」
私は、持っていたカバンからあるものを取り出す。
「なんでえ、これは?」
「非常用食料だ。これひと箱で、一食分のカロリーが取れる。」
「かろりぃ?なんでえ、それは。」
「まあ、いいから、食ってみろ。」
私は彼女の前で、その非常食の箱を開けてみせる。
中にはパックされた銀色の2本の非常食が入っている。その一つを、私は切り裂いて開けてみせる。
「なんでぇ、この周りの銀色のもんは……金物のような色してるくせに、やけに柔らかいぞ……中身は、なんだ!?」
中にあるのは、クッキー状の固形食料だ。
「まあいいから、食ってみろ。」
「あ、ああ、じゃあ、いただきます……ん!んめえ!」
どうやら気に入ってもらったようだ。私もそれを横目で見ながら、その非常食を食べる。あっという間に、1本を食べ終えたおリン。
「なんていうか、甘いな、これ。でも、こんなもん2本で本当に腹がふくれるのか!?」
「大丈夫だ。森や山中で遭難した場合でも、これ一箱、1食分で半日は動ける。」
「そ、そうなのか!?やっぱりすげえな、おめえんとこの物はよ。」
などと言って、その初めて口にする非常食の残りの1本をぼりぼりと食べる。
「はあ~っ!うまかったなぁ!だけどよ、もっとねえのか!?」
「いや、あるにはあるが、二箱は食いすぎだぞ。それにこれは、いざという時のための食料だ。あまりむやみに食べるものじゃない。」
「ちっ!ケチだなぁ!」
などと文句は言うが、空腹は収まったようで、動けるようになった。
「やっと動けるようになったな……が、もうすぐ夕刻だな。そろそろ奉行所に行かねえと。」
「もうそんな時間か。」
「ちっ!結局たいしたものは得られなかったぜ!仕方ねえけど、タナベ様に報告するか。」
しばらくニッシン橋の大通りを歩く。すると、目の前にあのひし形と二本線の着物を着た、エツゴ屋の主人が歩いているのが見えた。
「なんだ!?あいつ、どこに向かって歩いているんだ!?」
「そうだな、こんな時間に、どこへ行くんだ?ついていくか?」
「そりゃあそうだろう!ちょっとつけてみようぜ!」
とおリンが言う。ついさっき、ああ言うやり取りをした後だ。仕事の邪魔だと言って我々を追い出したくせに、外を出歩く余裕はあるというのが気になる。こっそり、後をつける。
すると、着いた先はあのサノ屋だった。番頭に招かれて、サノ屋の中に入るエツゴ屋の主人。
「なんでえ、怪しいなぁ。やっぱりこの2人の主人は繋がってんじゃねえか!」
「しっ!静かに!」
店の中に入るエツゴ屋の主人。我々は、その店の周りをぐるりと回る。
裏に回ると、垣根の隙間から座敷が見えた。ちょうどあの悪そうな顔をしたサノ屋の主人とエツゴ屋の主人が入ってきたところだ。2人で、何かを話し始める。
「ああ、くそ、聞こえねえな。もうちょっと近くに行って……」
「バカ、バレるだろう。ちょっとまて、いいものがある。」
「なんだ?いいものって。」
私は、カバンの中からあるものを取り出した。
「いろんなものが入ってんな、その包みの中は。で、それはなんだ!?」
「レーザー盗聴器というやつだ。まあ、見てろ。」
私は、レーザー盗聴器の先を、2人の話している床付近に当てる。2人の声の振動が、その板張りの床に伝わり、その振動による変位差をレーザーで読み取り、音に変えるというのがこの盗聴器だ。
早速、2人の会話が聞こえてきた。
『……ということで、あの岡っ引きにはそう話しておきました。なので、サノ屋さんも同じように口裏を合わせていただきたい。』
『おう、うめえこと言ったものだな。なるほど、賄賂か。そりゃあ人払いしても当然な言い訳だな。』
『でも店子を殺めたのは、ちょっとやりすぎましたな。ましてやあの2人を手下に襲わせるとは……ほっとけばよかったんですよ。でなきゃ、奉行所が嗅ぎつけることもなかったでしょうに。』
『しょうがねえだろう。花火を船に積み込むところの話を聞かれたかも知れねえと思ったんだ。万一にも、漏れちゃまずいからな。』
『それにしても手下の6人、大丈夫ですかね?ある程度事情を知った者共ゆえに、この際は生かしておくと厄介ですぞ。』
『なあに、あの方に頼んでおいた。今頃はこの世にはいねえはずだ、大丈夫だろう。それより、あの2人の岡っ引き、どうするよ!?』
『これ以上は動かない方がいいでしょう。放っておきましょう。それが確実です。いざとなれば、あの方に頼んで……』
『そうだな。ところで、おめえんとこの方はどうなんだ?』
『順調ですよ。今宵にでも最後の品をフナバシの港に運ぶ予定です。』
『そうか。こっちは昨夜、全部納めたぜ。』
『ふふ……ということは、明日の夜ですかな?』
『ああ、明日だな。』
な、なんだ!?明日、何が起こるというのだ!?意味深なことを言い出す2人。
しかもさっきの手下がどうとか言っていた。話の流れからすると、殺そうとしているのか?
『ではサノ屋さん、私はもう帰ります。ところで明日の決行前は、ニシノ様のお屋敷に集まるということでいかがでしょう?』
『おい、そりゃあいくらなんでも、まずいんじゃねえのか?』
『いや、料亭の方がまずいでしょう。また勘ぐられてしまうやもしれない。それよりも、お武家様であるニシノ様のお屋敷の方が確実です。むしろ、さっきの賄賂の話とも辻褄が合います。我々2人がニシノ様の屋敷に行っても奉行所の奴ら、商売の話でもしにいったのだろうと思うだけでしょう。』
『そうだな。じゃあ、あの方にもニシノ様の屋敷に来ていただくか。』
話を聞くと、「あの方」とはニシノという旗本のことではないようだな。まだもう一人、別の人物が絡んでいるようだ。おそらくそれが、料亭にいたという3人の侍のうちの、最後の一人らしい。
そしてこの会話から察するに、その人物こそがこの中で最も偉い身分の人、つまり首謀者のようだ。
「おい、そろそろ奉行所へ行こうか。」
「ええっ!?今からあいつらをとっちめるんじゃあ……」
「そんなことをしても無駄だろう。今踏み込んでいったところでとぼけられる上に、住居侵入でこちらを訴えてくるだろう。それよりもだ、このことをタナベ殿に知らせた方がいい。」
「わ、わかった。すぐに行こう。」
私とおリンは、南町奉行所へと向かう。ニッシン橋を越えて、お武家様の屋敷街のようなところを抜け、いかにも奉行所という場所に着いた。
「おお、二人とも、ちょうどいいところに来やがった!えらいことになっちまったぞ!」
その門の前で、数人の同心が話している。その中の一人、タナベ殿がこちらに気づいた。
「なんかあったんですか、タナベ様?」
「ああ、あの6人の下手人だが、番屋に連れて行く途中、突然現れた連中に斬り殺されたんだ。」
「ええーっ!?な、なんてことですか!」
「こっちの捕手もろともそいつらに斬られて、重傷を負っちまった。」
「なんてこった……やはりサノ屋のいう通り、誰かに頼んで始末させやがったんだ……」
「どういうことだ、おリン!」
「実は……」
おリンは、先ほど盗聴したサノ屋とエツゴ屋の主人の会話をタナベ殿に話す。
「なんだって!?あの方に頼んだって、どういうことだ!?あの方とは、誰だ!?」
「いや、それがあたいにも……」
「おリン、もうちょっと別の場所でその話をしないか?ここは人の往来がある。周りに聞かれるとまずい。」
「ならば、奉行所内に行くか。その辺りの話、他の同心や与力のミヤモト様も入れて聞きたい。」
「承知しました。」
私とおリンは、タナベ殿ら他の同心とともに奉行所に入る。門から入り、奥の建物の一室に、一同が集まる。
そこに、さらに威風のあるお侍が現れた。おそらくこちらが与力のミヤモト殿というのだろう。
同心一同、そしておリンも正座したまま、頭を下げる。土下座というやつか。私も彼らに倣い、頭を下げる。
「おキョウ殺害の一件が、とんでもない話になってきたそうじゃないか。」
「はっ!あろうことか、その鍵を握る下手人6人も途中で殺されてしまい……」
「一体、何が起こっているのだ?」
「その辺りを、この2人の岡っ引きが調べてまいりました。」
「おお、おリンか。もう一人は……誰だ?初めて見る者だが。」
「はっ!一言で言えば、異国の者。いや、異国といっても、星の国の者だそうです。」
「なんだと!?星の国!?」
まあ、いきなりそんなことを言われても、同心も含めぽかんとしている。にしても、タナベ殿、案外口が軽いな。しばらく私のことを黙っておこうと言っていたのに……
そこで私は再び、不時着したときのこと、スマホを使いこのおエドのある地球の映像などを見せながら、自分のことを話す。
「……というわけで、そんな最中に殺人事件に巻き込まれたのです。それで、おリンとともに行動しておりました。」
「ううーん、ちょっと信じられない話ではあるが……確かにその『すまほ』と申す物、わしらには見たことも聞いたこともない物ではあるな。」
「それよりもミヤモト様、この事件の話でございます。彼らはこれまで、かなり色々と調べていたようです。」
「はい、では少しまとめて、お話いたしましょう。」
まず、おキョウがニシノという旗本とその子分、そして謎の侍に、サノ屋、エツゴ屋の主人がいる場に現れたことで、口封じで殺されたようだということ。
その事実を知った我々をサノ屋がゴロツキ6人を差し向けて、同じく口封じをしようとしたこと。
だが、それに失敗するや、サノ屋が今度は「ある方」に頼んで、その6人を殺したようだということ。
6人を殺したのは、明らかに腕の立つ浪人だったという。あれだけの者らを、そこらの旗本がすぐに集められるとは考えにくいとタナベ殿は言う。おそらく、いざという時のためにあらかじめ雇っていたのだろう、と。
とすると、それなりの財力のある人間がバックにいることになる。それが誰なのか?そこが問題だ。
「『あの方』というのも問題だが、一体彼らの目的はなんなのだ?」
「そうですね。これを聞いていただきましょうか。」
私は、レーザー盗聴器を取り出す。それを見た与力のミヤモト殿が私に尋ねる。
「なんだ、それは?」
「レーザー盗聴器と申しまして、遠くの人の会話を拾い、その言葉を収めることができる機械です。」
「なんと、そのようなものまで持っているのか!?」
「先ほどのサノ屋とエツゴ屋の会話も収めております。お聞きください。」
元々、未知惑星の探索では、見知らぬ住人に出会う前に、その文化や言語を知る必要がある。
このため、先行隊としてやってきた我々は、初期段階ではその住人のことをなるべく接触せずに遠く離れた場所からでも把握できるようにするために、このレーザー盗聴器や双眼鏡に暗視鏡など、様々な機材を持っている。
まさか、それが事件解決のために使われることになるとは思わなかった。私はその盗聴器の再生ボタンを押す。
『……ということで、あの岡っ引きにはそう話しておきました。なので、サノ屋さんも口裏を合わせていただきたい。』
『おう、うめえこと言ったものだな……』
先ほど収集した会話が、その場で流される。突然、人の声が流れ始め、一同は驚く。
会話の一部始終を聞き、与力のミヤモト殿は腕を組んで考え始めた。
「うーん、何かを企んでいるのは間違いないな。それにしても気になるのは、『あの方』がだれかということと、明日に何かが起こるというようなことをほのめかしていることだ。しかし、一体それはなんだ?」
「これだけでは、全く分かりません。ですが、重要なヒントが残されています。」
「ひんと?」
「ええと、手がかりと言う意味です。この会話に出てくる『フナバシの港』というのがそのヒントになりそうかと。」
「うーん、そうなんだ、それなんだがな。それが実は一番問題なんだ。」
「どういうことです?」
「『フナバシ』という港など、このおエドはおろか、この周辺にもない。だから、我々が踏み込もうにもどこへ行けばいいのかがわからんのだ。」
「ええーっ!?『フナバシ』って言うのは、地名じゃないんですか?」
「おそらく、なんらかの隠語なのではないか?聞かれても分からないよう、架空の名前で呼びあっているのかもしれぬ。」
「で、では、おエド中の港を改めれば……」
「この百万の民の住むおエドに、どれだけの港があると思っている!海沿いだけでも40はある!とてもじゃないが、我らだけでは全部は調べきれない。」
「うう……ということは、手がかりなしということですか?」
「いや、そうとばかりも言えない。それだけの言質があれば、サノ屋とエツゴ屋を奉行所に引っ張ることくらいはできる。明日にでもとっ捕まえて、その内情を暴いてやるか。」
ミヤモト殿は言った。が、そこにタナベ殿が反論する。
「ミヤモト様、明日と言わず、今日にでもとっ捕まえたほうがよろしいのではないですか?」
「そうはいかない。相手が商人だけなら、この町奉行だけでなんとかなる。が、事はどうやら侍、それも旗本以上の大物が控えているようだ。そうなると、わしらだけでは手が出せぬ。」
「それもそうですが……」
「だから、今宵のうちにお奉行様と共に、ミヤザキ様に会いに行こうと思っている。」
「ミヤザキ様?」
「幕府の目付のお方だ。旗本以上のお武家様が絡む事件は、目付が取り締まる事になっている。今の話をして、なんとか今夜中に協力を取り付けるのだ。」
「はっ、承知しました。ならば我々同心は、明日の捕り物に備えることにいたします。」
「うむ、頼んだぞ。」
そういって、ミヤモト殿はお奉行様のいるという、奉行所の奥へと向かっていった。
「そう言うわけだから、明日の朝、ここに集合だ。」
タナベ殿はそう言い残し、同心一同と私におリンはこの場で解散となった。