#2 料亭と謎の武士
おハチという男に連れられてやってきた先には、すでに誰かが来ており、先にその遺体を確認していた。
見るからに女性の遺体。比較的上物の着物を着たこの女性、それを見ていた男が、おリンに向かって言う。
「なんでぇ、南町のもんか。」
「なんだ、北町のタツか。」
「残念だが、改めさせてもらったぜ。こいつは入水自殺か、誤って水路に落ちて溺れた事故死のどちらかだ。間違いねえ。」
「なんでそう言い切れるんで?」
「見りゃあわかるだろう。ほれ、外傷もねえし。」
おリンはその遺体を見る。私は水死体を見るのは初めてだ。が、この水死体、どことなく違和感がある。私は言った。
「なんか、おかしいな。」
「ああ、おかしい。」
おリンも気づいたようだ。
「溺れたにしちゃあ、体が綺麗すぎる。予め殺されて、水路に放り込まれたんだろう。」
「なんでえ!何を証拠にそんなこと!」
「おい、見りゃあわかるだろう。普通水死体ってのはな、溺れる時にたくさん水を腹一杯飲み込んで、もっとブクブクな状態で見つかるもんだ。こんな綺麗な水死体は初めてみたぜ。」
「そうだろうな。私もそう聞いたことがある。確かに、この遺体はあまりに見た目が綺麗すぎる。」
「それによ、首筋をよーく見ると、なにか爪跡が見えるぜ。どう考えてもこれは、首を絞められて殺され、死んだ状態で水路に放り込まれた。だから水もほとんど飲んでねえ。この綺麗さからして、それほど時間は経ってねえ。それで、間違いねぇ。」
「おい!さっきからきいてりゃあ、俺の言うことを信用できねえって言うのか!?」
「ろくに死人の見聞もできねえんじゃ、岡っ引き失格だぜ、タツよ。」
「くそっ!勝手にしやがれ!」
そのタツという男は怒って、どこかへいってしまった。
「なんだ今のは?」
「ああ、北町奉行のとこの岡っ引きでよ、あたいとよく張り合うんだ。」
「なんだ、奉行というのは2箇所あるのか?」
「ああ、今は南町の番だから、北町のやつが見聞するのもおかしな話なんだけどな。」
「なんだ、南町の番って?」
「奉行ってのはよ、いろいろ仕事を抱えてるから、月ごとに当番があるんだよ。今月は南町奉行が事件を扱い、北町は溜まった書類を今、さばいているところだよ。」
なんだその不条理な制度は?北と南の2つのエリアで管轄が決まってるわけじゃないのか?
「おい!おハチ!」
「へぇ!」
「申し訳ねぇが、南町まで行って、タグチ様にこのことを知らせてくれ!」
「へい!合点承知!」
そのハチという男が走っていった。それにしてもこの女性、何故殺されたのか?
「うーん、服装からすると、どこかの店の店子だな。」
「店子?どこの店か、わからないのか?」
「これだけじゃな。しょうがねぇ。人相書きでも探して、この女の顔を描いてもらい、聞いて回るか。」
「なんだ、人相書きというのは?」
「まさかこいつの首をちょん切って、持って見せて回るわけにいかねえだろう!こいつの顔を描いてもらい、この人を知っている奴がいないか見せて回るんだよ!」
「なんだ、それならいい道具がある。」
「道具?なんだ、それは。」
私はスマホを取り出す。そしてその女性の顔を写真で撮った。
正直、遺体の顔を写真におさめるというのはいやだが、やむを得まい。私は撮った写真を、おリンに見せた。
「な、なんだこれは!?すげえ綺麗な絵だな。まるで見たまんまじゃねえか!」
「これはカメラという、風景や人物を撮影し取り込む機能だ。この写真を誰かに見せれば、すぐにわかるだろう。」
「おう!これだけしっかりした人相書きなら、すぐにでもわかるだろう!さ、サブ!早速行くぜ!」
「行くぜって、おい、この遺体、どうするんだ?」
「そのうち、近くの寺の坊主が引き取りにくるだろう。あとはそいつらに任せて、こっちはこいつの身元を明かさなきゃならねえ!」
そう言って走るおリン。って、一体どこに行くつもりだ?
ついたのは、繁華街というべき場所。大小さまざまな店が並ぶここは、このおエドで最も賑わう場所「ニッシン橋」というところらしい。
橋を挟んで、呉服屋、茶屋、米問屋……などが並んでいるが、表からはよく分からない店も多い。
その一つの店の前で立ち止まる。おリンは、私に言った。
「おい、おめえのさっきの……あのなんとかいうやつを出してくれ!」
「ああ、写真か。ちょっと待ってろ。」
スマホを出してその写真を表示すると、スマホを奪うように持っていき、その店の前にいる店子に見せる。
「おい!南町のもんだが、この顔に見覚えはねえか!?」
「えっ!?南町!?あたいの店が何か……」
「いや、この店かどうか分からねえから探ってるんだ!この顔に見覚えがねえか、どうなんだ!」
「は、はい!知ってますよ、この人!でも今日はまだ店においでではなくて……」
「殺されてたんだよ!この先の水路で、死んでいたんだ!」
「ええ~っ!?」
「で、ちょっと店の主人に会いたいんだ。多分、ここで何かあったにちげえねえ。」
「ですが、旦那様は……」
「つべこべ言ってると、南町の与力、同心が押しかけるぞ!とっとと主人を呼びな!」
「へ、へえ!ただいま!」
強引に店主を呼びつけるおリン。奥から現れたのは、いかにも料亭の主人という人物だった。
「何の用ですか?いくら南町の岡っ引き殿でも、むやみに私の店の前で騒ぎを起こさんでほしいものですな。」
「おう、時間はとらせねえよ。それよりも、こいつに見覚えがあるだろう?」
「ほう、随分と綺麗な絵でございますな。えぇ、確かにこの絵にあるのは、うちの店子に間違いありませんな。たしか、おキョウという娘で……そういえば、今日はまだ来ておりませぬが。」
「そのおキョウという娘が、殺されて水路に放り込まれてたんだ!」
「な、なんですと!?誠でございますか!ああ、なんということです……」
「でだ、ここんとこそのおキョウに、何かなかったか?」
「うーん、そうですねぇ……あ、昨日の夜、とあるお客様にこっぴどく怒られたと申しておりましたね。」
「怒られた?茶でもこぼしたのかい。」
「いえ、料理のお伺いに行っただけらしいのですが、どうやらそのお客様は、しばらく人払いを頼んでいたようで、そのことが私やうちの店子らに伝わる前に、おキョウが用事を伺いに行ってしまって、それで……」
「人払いした場所に行っちまったのか。明らかに怪しいな。で、そのお客とは?」
「お武家様が3人、商人が2人いらっしゃいました。お武家様の内1人は、よくご贔屓にされているカシマ様というお方でしたが、あとの2人は……商人の方も、私の知らない方でしたよ。」
「うーん、そうかい。分かった。いや、すまねえな。」
「いえいえ、また何かございましたら、是非お越しくださいませ。」
そういうと、店主と別れた。おリンは私にスマホを返す。
「役に立ったよ、ありがとな!」
「ああ。」
「にしても、お武家様か……ちいと厄介なことになったな。」
「なぜだ?そのカシマとかいう武士に事情を聞けばいいんじゃないか?」
「奉行は武士に関われねえんだよ。よほどの証拠がなきゃあ、相手にもしてもらえねえ。だから、刀持ちには手出しができねえんだ。よほどの証拠でもあれば別だがな。ただ……」
「どうした?」
「普通、お武家様が関わってんなら、首なんかしめずに、刀でバサッとやるもんだがな。どう考えても、殺しをやった下手人は武士じゃねえ。どっちかっていうと、残りの2人の商人っての方が気になるな。」
「そ、そうなのか。」
「あるいは、お武家様が自分で手を下すわけがねえからな、どっかの誰かに頼んで殺させたんだろうが……」
「おい、ところで、一つ大きな問題があるぞ。」
「なんでぇ。」
「なぜ、そのおキョウという女を叱った武士や、その場にいた商人が怪しいってことになるんだ?」
「いや、どうみても怪しいだろう。人払いしてるところに行っちまった結果、死んだっていうんだから、どう考えてもそいつらがおキョウを殺ったんだろう!」
いや、ちょっと飛躍しすぎだ。そんな話だけでは証拠にすらならない。別の事件に巻き込まれた可能性だってあるだろうに。
それに、その場にカシマという名前の武士がいたと分かっただけだ。その他には何も分からない。例え事件との関連性があったとしても、これだけではまったく情報として意味はない。
いきなり壁につき当たる。私の星の技術がふんだんに使えれば、もっと早く解決できるというのに。歯がゆいものだ。
だが、スマホの応答圏内には未だに味方はいない。駆逐艦の方では、私のことを捜索してくれているのだろうか?
自分のことも解決できていないっていうのに、いきなり殺人事件だ。どうなっているんだ、今日という日は。
「しょうがねえな、どうしたもんかな。」
「おい、ところであのおキョウという店子には、家族はいないのか?」
「あ!そうだ!それを聞くのを忘れてた!」
大急ぎでさっきの料亭に戻る。そこでおキョウの住む長屋の場所を聞いた。
おキョウは、母親と2人で暮らしていたらしい。そこで我々は、その長屋に向かう。
おリンの住んでいるところからほど近いところにその長屋はあった。おキョウの部屋に着くや、おリンが叫ぶ。
「おい!誰かいねえか!?」
すると中から、初老の女性が現れた。
「へぇ、どなた様で?」
「岡っ引きのおリンってもんだ。ちょっと聞くが、ここはおキョウの家か!?」
「へぇ、おキョウは私の娘です。」
「そうか……」
おリンは、おキョウの母親であるその初老の女性に、いきさつを話す。
「な、何ですって!?おキョウが殺された!?」
「ああ、さっきこの向こうの水路で見つかった。だが、溺れたわけじゃねえ。明らかに首を絞められた跡があってよ。」
「そんな……さっき、おキョウは店に行くと言って出て行ったばかりですよ!だいたい、おキョウは人様に悪さをするような者じゃねえですよ!なんだってそんなことに……」
泣き崩れるおキョウの母親。痛ましいことだ。唯一の肉親を、しかも我が子を亡くした母親の気持ち、私などには理解し得ないほど深い悲しみなのだろう。
「なあ、気持ちはわかるが、その下手人を捕まえるためだ。昨日、そのおキョウは、何かおめえさんに言ってなかったか!?」
「うう……そ、そんなこと言われても、特にこれといって……あ、いや、そういえば……」
ふと母親が何かを思い出したようだ。
「そういえば……妙なことを申しておりました。人払いされているのを知らず、お武家様と2人の商人がいる部屋に入ってしまって、こっぴどく怒られたと。」
ああ、その話か。それならさっき聞いた。目新しい情報ではないな。
「ところが、その商人の一人ってのが花火屋だったそうで、なんでもおエド中の花火師に花火を作らせ、どこかの港に集めるとか、そんな話をしていたそうです。」
「は?花火を港に集める?なんじゃそら?」
「その花火屋とは、ニッシン橋にあるサノ屋という花火屋です。こう言ってはなんですが、顔つきがあまりよろしいお方ではないため、この辺りでも有名なお方で……でも、お武家様と花火屋、妙な組み合わせだったと昨夜、おキョウは申しておりました。」
「ううーん、花火屋か……」
「これくらいのことしか、私は知りません。でもどうか、おキョウの仇をとってくだされ!」
「お、おう!おそらくおキョウは、この先のセンコウ寺あたりに引き取られていると思うから、すぐにいってやんな。」
「な、何もかもすまねえっす……うう……お、おキョウ……」
すすり泣きながら、その寺の方に向かう母親の背中を見守る。これからこの母親は、娘との最後の対面をすることになるのだろう。なんとも心苦しいことだ。
さて、問題はさらに複雑になった。武士だけでなく、花火屋ときた。確かにおかしな組み合わせには違いないが、これがまるで殺しに繋がるとは到底考えられない。
「まあ、いってみるか、そのサノ屋に。」
「行くのはいいが、殺しとなんの関係があるんだ?」
「わかんねえけどよ、何かありそうな気がするんだよ。ちょっと確かめるだけ、確かめてえんだ。」
まあ、他に手がかりもない。無駄骨かもしれないが、行くだけ行くか。
「ああ、じゃあ、私も付き合う。」
「おう、またさっきのすまほってやつを借りるかもしれねぇ。頼んだぜ。」
どうやらおリンは、花火屋が怪しいと踏んでいるようだ。だが、武士が花火屋に花火を作らせて集める。花火大会でも開くつもりだろうか?そう考えると、そんな話のどこに、おキョウが殺される要素があるというのか?
ともかく、ニッシン橋の通りの先にある、そのサノ屋という店に着いた。
しかし、さっきから歩き通しだ。靴を脱いでワラジというやつに履き替えたが、これはあまり長距離を歩くのに向いているとは言い難い履物だな。足が痛い。
「おう!南町のおリンってもんだ!主人はいねえか!?」
相変わらず遠慮のないこのおリンという娘。そこにいた店子に、大声で主人を呼びつける。
現れたのは、いかにも悪そうな人相の男だった。過去に時代劇シリーズを見すぎたせいだろうか?どうしてもこいつが悪玉の一人に見えて仕方がない。
「なんでぇ、おめえは!」
「あっしは南町の同心、タナベ様のところで岡っ引きをしているおリンてもんだ。」
「その南町の岡っ引きが、うちに何の用だ!?」
「いやなに、ちょっと聞きてえことがあってな。」
「なんだ、わしは忙しいんだ!さっさとしてくれ!」
「おキョウってもんが、殺されたんだ。」
「おキョウ?誰だ、それは?」
「この先にある料亭の店子だったらしいが、なんでも、あんたらの話を聞いちまったとかどうとかで、怒られたと聞いてな。」
一瞬、険しい表情を見せるその店主。だが、涼しい顔をしておリンに応える。
「ああ、そんな奴がいたなぁ。人払いしてるっていうのに、やってきたもんだからよ。こっぴどく怒ってやったのよ。だが、それがどうしたっていうんだい!?」
「なんでも、あんたら花火屋へ、おエド中の花火師に花火を作ってもらうよう頼んでいたお武家様がいたとかどうとか、そんな話を聞いたらしいがな。」
「な、なんでぇ。確かにそういう話をしていたが、それがどうした!?わしらもよくは知らねえが、おおかた上様のため、盛大に花火でもあげようってお考えだったんじゃねえのか?」
「じゃあ、そのお武家様の名前を教えてもらおうじゃねえか!一人はカシマ様だと分かってるが、もう2人いたらしいな!誰なんだい!」
「そんなこと、おめえには関係ねえ!とっとと帰りな!」
急に怒り心頭のこの店主、そこに置いてあった桶を投げつけてきた。
「ちっ!今日のところは勘弁してやらあ!」
「ふん!勝手にその殺し事件に巻き込みやがって!縁起でもねぇ!二度とくるんじゃねぇ!」
といいながらその店主、今度は塩をまいてきた。
「くそっ!結局何も得られずか……」
私とおリンはニッシン橋の通りを歩く。ともかく、おキョウを弔おうということになり、あの死体発見現場の近くにあるというセンコウ寺へ向かうことになった。
その途中、誰もいない裏通りに入る。と、その時、目の前に3人の男が現れた。
明らかに怪しい3人だ。私とおリンは道を変えようと、後ろを振り返る。すると、後ろにも3人現れる。右は蔵、左は水路。我々は6人に完全に挟まれた。
「何者だ!」
おリンは叫ぶ。すると、男の一人がつぶやくように言う。
「まったく……また一人殺さなきゃならねえなんて、しかも今度の相手は岡っ引きかよ……」
そう言いながら、奴らは短刀を抜いた。
「あの店子相手なら、こんなもの入らなかったけどな、さすがに十手持ち相手に、素手は無理だろうからな!覚悟しな!」
「なんだと!?てめえ!」
十手を抜き、構えるおリン。だが、前後の6人が、一斉に短刀を抜いて襲いかかる。
「おリン、ちょっと失礼!」
「は?な、何しやがる!?」
「いいから、何があっても私から離れるな!」
私は左腕でおリンを抱き寄せる。そして、右手で腰のスイッチを押した。
6人が一斉に我々2人に短刀を向けて飛びかかる。
そして、猛烈な火花とともに、6人が弾き飛ばされる。
「は!?な、なんだ、今のは!?」
私の腰には、携帯用のバリアが取り付けてある。半径70センチに入ろうとする干渉物を排除する仕掛けだ。その仕掛けで、6人の刃物はあっけなく砕け散り、そしてそれを持った6人は吹き飛ばされる。
6人中、4人はその場で気を失った。短刀だけでなく、腕も火傷を負っている者もいる。大体、我々の持つビーム銃でも弾き返す威力の防御兵器だ。短刀ごとき、敵うわけがない。腕が吹き飛ばなかっただけでも、運が良かったと思ったほうがいいだろう。
「な、なんでぇ……おめえらは!?」
一人が逃げようとする、私はすかさず右手を腰に当て銃を取り出し、一発放つ。
バンッ!という音とともに、逃げる男の前の地面をえぐり取るように吹き飛ばす。それを見た男は、腰を抜かしてその場で倒れこむ。
おリンがその男に叫ぶ。
「おい!なんでおめえ、あたいらを襲ってきたんだ!?」
「そ、それは……」
「今度はその頭に、この鉄砲を食らわせられてえのか!?」
「ひ、ひぃ!そ、それだけは勘弁を!」
「じゃあ、正直に言え!誰に頼まれた!」
「さ、サノ屋の主人に頼まれたんでさあ!昨日も店子をやれって、突然言われて……」
「おい、あたいらはサノ屋に昨日のその店子の話を聞いただけなんだよ!なんであたいらが殺されなきゃならねえんだよ!」
「し、知らねえよ!俺はただ、頼まれただけだ!」
どうやら、おキョウを殺った人物でもあるようだ。だが、実行犯ではあるが、真犯人ではない。
話だけ聞くと、真犯人はあの花火屋のサノ屋の主人ということになる。だが、殺される理由が皆目見当がつかない。
と、そこに、黒い着物を着た人物が現れる。
「おう、派手にやってるな。」
おリンに声をかけるこの人物。一体誰だ!?
「あ、た、タナベ様!」
えっ!?タナベ様!?ということは、こちらが彼女を雇っているという同心か。
「つまり、こいつらはおキョウを殺った下手人ということか。よくまあこれだけの人数相手に、張り合えたものだな。」
「いえ、タナベ様。あたいじゃありません、このサブという者が……」
「サブ?」
「へえ、この大柄な男でございます。」
「ほう、あんたがやったのか。」
「はい、私がやりました。」
「見させてもらったよ。6人の脇差をまとめて吹き飛ばす怪しげな技、ご禁制の鉄砲、そして、明らかに異国のものと思われるその頭髪。おめえ一体、何者だ!?」
その同心の左手は、刀の鍔にかけられていた。まさに、一触即発の状態。私も、腰のバリアに手を掛けた。