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空の鏡に照らされて  作者: のこりごころ
一章 巫術を身につけて、異世界を知る
15/31

ドキワク!巫術適性検査!

「んん、」

 太陽が少し上りかけている頃に京也は目覚めた。昨晩は遅くまで月を眺めていたため、睡眠時間は短いはずなのだが、これも学校教育の賜物。いつも起きる時間に目が覚めた。異世界に行っても体内時計は正常なようであった。

「そうか。異世界かここ。」

 一瞬、自分の部屋でないことに困惑した京也だが、すぐにここがどこだか思い出した。

 京也は起き上がり、体をほぐし始めた。だいぶほぐれた後、きょろきょろと部屋を見渡す。

「あれ、ジローはどこだ。」

 治郎は昨晩に女子の部屋に行ったきり少なくとも京也が寝る前までは帰っては来なかった。もしかしたら女子の部屋で寝ているの中も知れない。

「まぁいいか。」

 そうつぶやき、京也は支度を始める。顔を洗い、服を着替えて、ベッドを綺麗にする。一通り終わったところで、治郎が部屋に戻ってきた。

「おはよーキョウヤ。」

「おはよう。」

「うっかり女子の部屋で寝ちまったぜ。」

「流石サル。」

「誰がサルだ!別に女子たちに何もしてないよ!」

 京也にからかわれ、心外だと怒る治郎であった。


 支度が終わった後、ゆっくりしていたら、昨晩ここまで案内してくれた人がやってきて、朝食の準備ができたと知らせてくれた。ぞろぞろとみんなが部屋から出て、係りに食堂まで案内された。

 朝食は昨夜と打って変わり、質素なものであったが、寝起きにはちょうどいいメニューであった。

 そして、朝食後には遂に適性検査が行われる。


 一同は昨日馬車で送られた中庭に来ていた。ここで適性検査が行われるらしい。

「おほん。いざないの皆様おはよう。」

「「「「おはようございまーす。」」」」

「流石いざないの皆様方元気が良いですな。」

 ヘンゼルの挨拶から始まり、適性検査の説明が始まった。

 適性検査は道具の都合上一度に3人までしかはかれないこと。適性といってもこれは先天性の素質を測るものであり、それしか使えないというわけではなく、力を身につけやすくなるだけということ。適性がわかったことですぐにでも巫術が使えるようになるわけではないこと。同じ適性であっても人によって強弱があるということだ。


「では、早速始めよう。どなたからやる?」

 ヘンゼルにそう言われ、顔を見合わし変に譲り合う生徒たち。

「私が初めにやってもらっていいだろうか。みんな、私が手本になろう。」

 それを見かねた吾郎先生が声をあげた。

「うむ、ではこちらへ。」

 ヘンゼルに促され前に出る吾郎先生。

「この水晶に手を置いて下され」

 吾郎先生の目の前には人の頭くらいの水晶がおいてあった。吾郎先生が手を置く。

「!?」

 水晶が輝き、水晶の中に黒色、水色、緑色の玉が現れた。

「おお、三つも!ゴロウ殿は地、水、木の適性があるようだ。特に地の輝きが強いのう。」

「なるほど。地、水、木ですか。これで終わりですか?」

「うむ。こちらのメイドから適性をメモした紙を受け取って下され。」

「ありがとうございます。」

 吾郎先生が紙を受け取りみんなの方を向いた。

「こんな感じみたいだ。さぁ、みんなもやるぞ!」

 生徒たちが吾郎先生に促され3つある水晶に並び始める。


「俺らも行こうぜ。」

 治郎が京也に声をかけ、列に並ぶ。


「なぁ、お前何だった?」

「俺は水と火と太陽」

「私4つも適性があったわ。」


 順調に検査が行われていく。


「こ、これは!ありえん!」

 いきなりヘンゼルが声をあげた。京也が列から前の方を見ると、陽太の手を置いた水晶にはかなりの光の玉が灯っているのが見えた。

「まさか、全適性持ちとは、初めてみたわい。しかも、どの光も強い!」

 ヘンゼルが目を丸くして言う。

「ヨウタくん凄い!」

「ヨウタはいつも変なところで驚かせてくれますね。」

「めっちゃきれいなんですけど!」

「ヨウタ、欲張り過ぎじゃない?」

「ヨウタ。流石。」

 陽太の友人たちも大はしゃぎだ。

「はははは、なんでだろうな。」

 陽太も照れながら答える。

 驚きはそれだけで終わらなかった。

「この子は適性が8つもあるぞい!」

 陽太の友人たちも、全部とまではいかぬが、他の生徒の倍以上適性があったのだ。

「なんであいつらだけ」

「いいなぁ。」

 これには他の生徒も羨ましいやらなんやらで騒ぎ出す。

「おほん。確かにヨウタ殿らは凄いが、皆様方も十分凄いのですぞ。それに先ほども言ったようにあくまで素質であって、最終的な巫術の技術は本人の努力次第になるのじゃ。」

 ヘンゼルが妬む生徒らに慌ててフォローする。

「さあ、残りの皆様も検査をやりましょうぞ。」

 止まっていた検査が再開する。


「あれ?」

 前の人の水晶を見ながら、京也はあることに気がついた。

「(ヨウタたちを除いて、天、海、冥の素質を持つ人がかなり少ない。)」

 京也は適性に偏りがあることに気が付いた。ここで京也は昨日ナーメアが言っていたことを思い出す。

「(多くの人と仲良くなっても意味ないって、素質を持つ人が少ないからって意味なのか?)」

 そんなことを考えていると。」

「キョウヤ!俺終わったから、次京也の番だぜ!」

 検査を終えた治郎が声をかけてきた。我に返り前へ出る京也。水晶にたどり着き、手を置く。

 水晶が輝き、水晶に4つの光の玉が灯る。色は、緑、赤、紫、黄色であった。

「!!?」

 言葉が出ない京也。

「ふむ、おぬしは、木、火、冥、金の素質があるようじゃ。冥が出るとは珍しい、良かったのう。」

「…。」

「?どうしたのじゃ。」

 無言の京也を不審がるヘンゼル。

「…なんでもありません。」

 そういって、適性が書かれた紙を受け取り去る京也。

「4つしか無かったのが不満だったのじゃろうか?」

 これまでに数が少ないことを嘆く生徒がいたため、京也もそうかと思うヘンゼルであった。


「キョウヤ!どうだった…あっ。」

 戻ってきた京也に声をかける治郎であったが、京也の醸し出す雰囲気に察する治郎。

「もしかして、月が無かったのか。」

 ほぼ確信しているが尋ねる治郎。

「…」

 黙って、適性が書かれた紙を治郎に渡す京也。治郎はそれを受け取り見る。

「やっぱり、…まぁ、落ち込むなキョウヤ。ヘンゼルさんが言ってたじゃないか、身に覚えが早くなるだけだって。つまり素質が無くても月の巫術は身につけられるってことだろう?それに、冥の素質があるじゃないか。天、海、冥ってレアらしいぞ。素質も4つあるし、俺なんか3つだぜ。」

 京也をフォローするように早口でいう治郎。

「わかってるさ。でも、どうせならあってほしかった。」

「まぁ、そうだよな。」

 京也は、自分の好きなものに対して向いてないと言われたような気分であった。治郎も分かるような気がして頷いた。

「ジローはどうなんだ?」

 少し気分が戻ったのか治郎の素質を聞く京也。

「俺は、水、土、天だったぜ。」

「ジローもレアな素質持ってんじゃん。」

「ま、まあな。」

 治郎はレアな素質があって嬉しそうだった。が心の中では、

「(しかし、自分に月が無くて良かった~)」

 と安堵していた。もし自分に月があったら京也にどう接すればよいのかと思う治郎であった。


「皆さん、終わったようじゃな。やってない者はおらぬか?」

 ヘンゼルの確認に無言で返す生徒たち。

「よろしそうじゃな。では、これからは皆様にはそれぞれの巫術を知ってもらいたい。宮殿内に教団ごとのブースを設けてある。自分の気になるブースを自由に回ってもらい、ひとまず1つメインとして学ぶ巫術を決めてもらいたいのじゃ。では、適性用紙の裏に地図が書かれておるから、それを使って行って下され、もし道に迷ったら近くの召使たちに聞くがよいぞ。」

 今から巫術を見る時間の様だった。

 生徒らは仲がいい者と相談しながら散っていった。

 

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