教団との邂逅
「前方に立っている方々は、各教団で代表巫を務める方々じゃ。」
全員が入室した後に入ってきたヘンゼルが固まっている生徒たちに声をかけた。
「司会よ。いざないの皆様方は全員入ったぞ。」
そう声をかけると脇の方から男性が入ってきた。どうやら司会者らしい。
「いざないの皆様。異世界より来ていただきありがとうございます。司会を務めるガズと申します。」
そういってガズは一礼をした。
「皆さまの為にささやかな食事を用意させていただきました。ですがその前にこれから皆様に「巫術」を教えることとなる教団のご紹介をさせていただきます。教団長の皆様どうぞ中へ。」
そうガズが声をかけるとステージの脇から老々たる方々が入室してきた。彼らはそれぞれ同じ教団だと思われる巫の横へたった。
「では、初めに私の方から軽く教団についての説明をしたいと思います。あと皆様、私は声を拡張する道具を使っていますが、念のために少し前の方に移動をお願いします。」
そう言われ、後ろに固まっていた生徒たちはそろそろと前の方に進んだ。
「はい、ありがとうございます。この世界にはいくつかの教団がありますが、その中でも特に大きい教団が前に立っている方々の教団になります。」
ここで教団の人たちが軽く礼をする。
「今回はとある理由に一つの教団がおりませんがご容赦ください。その教団をいれまして11の大きな教団を我々は『大自然教団」と呼んでいます。今回は皆様にこのエレメンツをご紹介します。」
一拍おき、
「エレメンツの教団にはそれぞれにシンボルがあります。それは、太陽・水・金・地・火・木・土・天・海・冥そして月となります。」
「(月!?)」
今まで静かに聞いていた京也は「月」と聞こえ目を見張る。
「よかったなキョウヤ、大好きな月があるぞ。」
横に立っていた治郎がからかうように言う。
「ああ、フレディさんが言っていた『月聖術』のことかな。まさかメジャーなものだったとは。」
「それにしても、水金地火木って太陽系の惑星の並びじゃねぇか。」
「ただ冥が入っているのがなんか懐かしい感じがするな。」
「だな!あと月が無かったら完璧だな。」
「月が入っているこの世界を元の世界より好きになった気がするよ。」
「あはは~。」
京也の相変わらずの感覚に、治郎は苦笑いをする。
「各教団の紹介に移ります。」
司会のガズが司会から見て一番奥にいるミファー達の方を見る。
「初めにエレメンツの中でも特に大きい『陽光彩紀団』です。」
「教団の長を務めるヨゼフだ。」
「巫を務めるミファーです!」
ヨゼフは威厳を漂わせる爺さんで、特に表情を変えずに挨拶を述べる。ミファーは『いざないの間」であった時のように元気よく挨拶を述べる。
「次に水のシンボルを持つ『止むことなき恵』です。
「教団長のシリです。」
「巫のノノゼルだよ。」
シリはほっそりとした銀髪のご老婦で、ノノゼルは中学生ぐらいの水色髪の男の子であった。
「金のシンボルを持つ『鉄鉱石同盟』です。」
「代表のエレメルだ。」
「巫のキャノメルですぅ。」
両者とも口元だけが無い仮面をかぶっていた。教団長はエレメルで高身長の黒髪の男性で、キャノメルは高校生くらいの金髪の少女で、かなり緊張していた。
こんな感じで続き、
「『有終の美』の長のリツです。」
「巫のナーメアです。」
冥がシンボルの『有終の美』の紹介が終わり、
「以上が今この場におられる教団の紹介でした。」
「月が無かった…。」
「今日いない教団って月だったんだな。」
かなり落胆する京也。
「今回、お越しできなかった月がシンボルである『双月の炎学団」より、メッセージを預かっていますので代読させていただきます。」
「なに!」
司会によるメッセージがあるとの連絡に、過激に反応する京也。治郎はそれを見て声を出さずに笑っていた。
「『いざないの皆様、この度はお目にかかれないこと大変お詫び申し上げます。代わりにメッセージを届けさせていただきました。私は「双月の炎学団」の巫女のララといいます。皆様とお月様について語れないことをとても残念に思います。代わりといっては何ですが、皆様がいらっしゃる中央宮殿で辺りでは今夜、お月様がとても綺麗にみることができるはずです。ぜひご覧になってください。ララより。』以上となります。」
司会のガズがメッセージを読み上げ終わると、みんながあれっ?となっていた。
ここにこれなくなった原因は?教団長の名前は?月のことよりも伝えることあるだろう!とみんな思っていたのである。
「大変すばらしい!!!!」パチパチパチ
変な空気の中ひとり盛大に拍手をし、感嘆の声をあげる人がいた。
「ああ、今夜がとても楽しみだ。ぜひとも月を見よう!!」
言わずもがな京也である。そんな京也を周りは若干引いた感じの目で見る。いつもクラスでは目立つことなく少しクールな人というイメージがあった故に、今は完全に浮いていた。
「ばかっキョウヤやめろって!」
京也の隣にいた治郎は慌てて拍手を止めようとする。
「どうして止めようとするジロー。会えないお詫びにと、とても素敵なことを教えてくれる心遣いを素晴らしいと思わないのか。」
「いや思うけど、思うけどその前にツッコミどころがあってそれどころじゃないよ。」
「ああ、できることならば、巫女様と月を見ながら月の入りまで語り合いたかった。会いたいのに会えない。これが月とすっぽんということか。」
「いやいや全然意味違うから!」
あほなことを言い出した京也にツッコミをいれる治郎。
「そういやキョウヤが厨二病だったの忘れてたぜ。」
そうつぶやき白い目になる治郎であった。
「あの~そろそろいいでしょうか。」
司会のガズが声をかける。
「あっはい大丈夫です!」
手で口を防ぎ強引に京也を黙らせ、治郎が返答をする。
「…では皆様お待たせしました。続きましてお食事に移りたいと思います。
生徒たちから小さい歓声が上がる。
「今回は皆様と友好を深めたいと思い、立食形式でご準備させていただきました。」
そうガズが言うと部屋の左右にある扉が開き、給仕らがぞろぞろと食事を運び込み、それと同時に飲み物も入ったグラスも配られる。
「これ、アルコール入ってるのかな。」
「飲めばわかるだろう。治郎飲んでみなよ。」
「その確かめ方アウトだから!」
「事前にゴロー様より、アルコールは駄目と伺っておりますので、皆様にはジュースをご用意いたしました。」
「ええ~」と少し生徒たちから文句の声が上がる。
「当たり前だろうが!お前らは未成年なんだぞ!」
それに対して吾郎先生が怒る。
「別にここは異世界だからいいと思うけどな。」
「んーまぁ確かにな。」
京也が先生を眺めながら言うと、治郎が同意する。
「皆さま。グラスは行きわたったでしょうか?」
ガズが確認を行う。
「よろしそうですね。では、教団庁の長であるヘンゼル様に乾杯の音頭を取っていただきます。」
ガズに言われヘンゼルがグラスを手に前に出る。
「異世界から来られたいざないの皆様に出会えたことと、親睦が深まることを願い乾杯!」
「「「「「乾杯!」」」」」
パーティーが始まった。ミファーたち教団側も壇から降り、生徒たちと混ざり合う。生徒たちは立食形式のパーティーは初めての人が大半であったが、一緒に参加している教団庁の役員や給仕に支えられ、無理なく会話などを楽しんでいた。
そんな中、京也はポツンと1人でいた。治郎はふらふらと見たことのないご馳走に誘われどっかいってしまい行方が分からず、周りも先ほどのことがあり、声をかけにくくなっていた。
「どんな月だろうか。」
まぁ、当の本人は思いふけっており気にしていなかったが。
「もし良ければお話しませんか?」
そんな京也に声をかける人がいた。
「あなたは…」
「私は『有終の美』の巫女、ナーメアです。」
冥の巫女ナーメアだった。
ここで出てくる教団はファンタジーの宗教でフィクションです。
一応無いと思いますが、現実との団体とかと一切関係ありませんのでご注意を
あと、巫女とか使っていますが神道系には作者は造詣があまり深くないので、細かいツッコミとかをしないでくれると助かります。




