表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

勇者

 とある世界で勇者といえば勇職活動と言われている。


 より良い能力や武器をもってから勇職活動に臨み、教会から認定をもらう。 


 勇者になるための活動。また、勇者になってからの活動。

 その世界でも生きるためには金を稼がないといけない、つまりなにからしら職に就かなければいけないのだ。


 勇者になれば金貨や食料、土地を貰え、生涯安泰が約束される。

 その代わりに魔王を倒す、人々を救うなどの平和につながる行いをしなければならない暗黙のルール。

 だが勇者になれるのは強者。魔法能力、剣能力などが高い者にしか選ばれない。

 そんな勇者が特別な扱いを受けてきたのも昔の話。


 近年、勇者は資格を利用し悪事に染める者も多くなり、また強者ゆえに人々に恐怖を与えていた。勇者の力に恐れを抱いた王国は勇者の縮小、厳選を行うことになる。

 そして、魔法師、剣士、精霊師など大幅に拡大し、勇者という職業の存在意義もなくなっていた。そもそも勇者という職業はどういうものかという明確な答えはなく、世界や人々を救うなどの善行をする義務はないし、ただの強者といえる。

 だがそんな環境にも関わらず勇者を目指す者は多くいる。

 大金や領地の獲得が目的だからだ。

  

 勇者といえども善良な人格ではない。支配欲、金銭欲、性欲、怠惰、苦しみ、悲しみのある普通の人間だ。


 巨大な力を持てば勇者だけではなく、誰しもその力に取り憑かれる。

 そして、世界を恐怖によって支配する、殺戮を楽しむ、金を稼ぐというような欲望を満たす。

 欲望は人それぞれにある。欲望はますます巨大になり、それは大きな憎しみを生み出す。

 憎しみはあらたな欲望を生み出す。

 その連鎖は永遠に続くだろう。

 

 


 ただ強者こそが生き残り、弱者は朽ちていくだけだ。



 ある人は言う。


「私は、敵を倒した者より自分の欲望を克服した者をより勇者と見る。自らに勝つことこそ最も難しい勝利だからだ」



 そんな異世界。



 

 




ーー現代にどこにでもいる高校生が始める勇職活動



 




「アハハハ アハハハハ。俺はついに、はやぶさギルドで副団長まで上り詰めだぞ! アハハハハハ」


「あんた何時だと思ってんのよ!! うるさいわよ」

 一階の寝室から怒鳴り声が響く。何千何百といやそれ以上に聞いた声。

「分かってるよ」

 駆はだるそうな声で答えた。

 時計の針は深夜二時を回っていた。外は闇のように暗く、街灯の光がカーテンから漏れる。

 短髪、黒髪の逃足駆にげあし かける。身長は百六十センチ。青のTシャツに赤の短パン。どこにでもいる高校生。


 特に引きこもりというわけではない。学校には真面目に通っているし、コミュニケーションは苦手な割に友達はニから三人程度いる。自分なりに努力したつもり。

 学業の成績は中位ぐらい。勉強をもう少し頑張れば上位に食い込めるかもしれないという学力。

 いずれにしても家で勉強をすることは試験期間を除けばない、これからもするつもりない。

 単純に言えば勉強が嫌いだから。

 一般の高校生は学校から帰り寝るまでの時間帯、高校生にとって貴重な時間を趣味や勉強や部活仲間と皆それぞれ使っている。

 だだ貴重な時間を勉強には使いたくはない。

 いや、なにも勉強自体を否定してるのではない。勉強したほうが自分のためにもなり、勉強を使う場面が幾度もあるし、将来にも役立つだろう。

 勉強は大切。ぜび、皆さんには勉強をたくさんやって欲しい。

 ただ、勉強は嫌い。いや、勉強は苦手にしとこう。

 では、俺は貴重な人生を何に毎日使っているのかというと。

 夕方から朝方までオンラインゲーム【QOL】をプレイする日課だ。またモンスターを狩る類やFPS関係のゲームは新作が発売される度に購入しプレイしている。毎月毎月新しいゲームが発売され購入し、プレイする、の繰り返し。

 もちろん休日も一日中ゲームのしっぱなし。


 ゲームを楽しみに生きているし、これからもそうするつもり。

 だから家で勉強する暇などない。


 ところでさっき恥ずかしながらなぜ不気味に笑っていたのかというと。

 日々のたゆまぬ努力が認められ、ついに団長から副団長を任命されたのだ。所属先のはやぶさギルドは団員三十名。全ギルドの中で強いことが有名で、国内ランキングにも上位にランクインしている。

 だから、あまりの嬉しさに喜び、あの奇怪な声を発していたというわけだ。


 好きなことはゲーム。ゲームオタク。少々ゲームは得意。


 この豊富なゲーム知識を生かし、好きなことをしてお金を稼げればと思っている。がそんなに人生上手くはいかない。


 親は勉強しろだのうるさく言うが何が悪い。

 ストレスを発散するために家で暴れたことはないし、学校に通い卒業したら、ニートにならずに就職しますから。迷惑はかけません。


 おままかな自己紹介はこんなところだろう。

 短い人生の上にゲームぐらいしかやってこなかったのだから語る内容が少ないのだ。

 部活動で活躍した、友達や彼女がどうだどうしたとかとは無縁の存在。

 

 そんな青年期真っ只中の今まさにゲームを真剣にプレイしていた。

 なぜだか今日は頭が痛い。風邪のせいだろうかそれともゲームのやり過ぎか。それとも何かのフラグか。

 まあ時間が経てば治るだろう。

 



「はぁ……痛い。あ、そうだ!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ