5話
けたたましい音量で鳴り響くサイレンと赤色灯、城内を慌ただしく駆け巡る兵士達によって現場には未だかつてないほどの緊迫した空気が張り詰める。
現在、連絡が途絶した部隊は全部で七つ。
その中で、最後に連絡があったのは第7部隊。その通信員が、今にも息絶えそうな弱々しい声で『白塗りのマスクを付けた化け物』という無線を残し、以降通信が完全に途絶えた。
これほどの犠牲を出しても尚、現時点で把握出来ている侵入者の情報はこれのみである。
しかし、各分隊の無線があった地点を繋いでいく事によって、この先必ず通るであろう通路に先回りして待ち伏せを行う。
分厚い頑丈な木製の扉を閉め、簡単な造りの鍵を掛けた。兵士の数が揃うまでの時間稼ぎで考えていたものだった。
しばらくすると凄まじい力で扉を殴りつけているような鈍い殴打音が、扉の向こうから一定のペースで聞こえてきた。
敵がすぐそこに来ている。
「総員、戦闘準備!」
人数はまだ十分に揃ってはいない。
繰り返される激しい攻撃に、ガチャリと音を立てて鍵が完全に破壊された。その瞬間、殴打音はピタリと止まり、周囲の異様な静けさが待機する兵士達に襲い掛かる。
攻撃の構えを扉に向けている兵士達の額に汗が滲む。
次の瞬間、扉がキィと音を鳴らしてほんの僅かに開いた。そこから最初に見えた姿は侵入者ではなく、兵士の戦闘服と連絡の途絶えた第7部隊の隊員が腕に取り付けているワッペンだった。
「攻撃中止!攻撃中止!」
それらを確認した指揮官が中止の合図を出す。
扉に駆け寄る隊員達。あの惨劇の中を生き抜いた唯一の生存者かもしれない。
その生存者から話を聞く事が出来れば、これ以上の被害を食い止める事が出来る。さらには侵入者を倒す為の大きな手掛かりとなるに違いない。
兵士達に大きな希望が生まれた。
――その希望は、目の前に迫り来る絶望を覆い隠してしまうほどに大きかった。
兵士が扉のドアノブに手を掛けて回し、慎重に中へと入る。
すると、その扉のすぐ近くにうつ伏せに地面に倒れ込む兵士を見つけた。
「大丈夫か!」
倒れ込む隊員を仰向けにする。
そこで駆け寄った兵士がある事に気付いた。
「こいつ……息をしていない」
青ざめる兵士達の背後に、所々に返り血の付いたハロウィンマスクの侵入者が完全に気配を殺して天井から降りてくる。
その手には大量の犠牲者の血に塗れた洋包丁が、異様な輝きを放っていた。