2話
「……チッ、また俺の負けかよ。ジュディスお前、イカサマ使ってるんじゃないよなぁ?」
「そんな訳ないだろ。単なる暇潰しのゲーム如きで、イカサマして何の意味があるってんだ」
「そりゃそうか。……なんか、これも飽きてきたな。これだから正門の見張りは嫌なんだ。退屈で退屈で今にも死んじまいそうだ」
二人は手に持っていたカードゲームの手札を、机の上に無造作に放り投げた。
ジュディスと呼ばれた男は座っていた椅子の背もたれにグッと体重を掛け、両手で後頭部を抱える。
「こんな馬鹿でかい上に警備も厳重、ネズミ一匹入る事が出来ないようなこの城に喧嘩売るような奴なんて、この世界のどこにもいやしねぇってのにな。お偉方は何をそんなにビビってるんだか」
「全くだな」
二人は軽口を言い合い、ふんと鼻で笑った。
そんな時だった。
ドンドンと正門を叩く音が、二人が待機している場所まで聞こえてきた。
「ん?こんな時間に誰かが来るなんて、ジュディスお前、何か聞いてたか?」
「いや、俺は聞いてないが」
「……とりあえず、行ってみるか」
正門を開ける前に覗き窓から外の様子を伺う。
「……誰もいないぞ?」
覗き窓を覗きながらジュディスはそう言った。
「あの音は俺の気のせいだったか……?悪いなジュディス、ありゃ多分風だったんだろうな。部屋に戻ろうぜ」
「………」
しかし、ジュディスの反応はない。
「おいどうした……?ジュディス?おい!おい!!」
覗き窓に顔を張り付かせ、手足にはほとんど力が入っていないような状態のまま激しく痙攣するジュディス。男は慌ててジュディスの肩を叩く。
そこで初めて気が付いた。
木で作られた扉からミシッミシッと激しく軋むような音が鳴り、ジュディスの顔面が徐々にその扉にめり込んでいく。
扉の向こうにいる”何か”が、覗き窓を覗いたジュディスの眼を突き、そのまま引っ張っている。
そうとしか考えられない状況に戦慄を覚え、あまりの事に強ばる身体を必死に奮い立たせる。
そして男は、先程まで居た部屋に置いてある通信機器を使用して助けを呼ぶ為、急いで部屋へと戻って行った。