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〜プロローグ〜 期待しかない入学式

 桜の花が美しく咲く4月の某日、空野雅道は今、私立竜が丘高校の校門をくぐろうとしている。

 

 彼はこのきっと他の誰よりもこの日を待ち望んでいただろう。そして待ち望んだ理由も他の誰よりもシンプルで単純な理由だ。そう、誰もが一度は考えるであろう高校デビューだ。言ってしまえば彼は中学の頃、影の薄い存在、いわゆる陰キャだった。誰とも話さない休み時間、一人寂しく食べる昼食、修学旅行の班分けで余った班に入れられたときの地獄のような空気・・・

そんな日々が嫌になった彼はこの高校デビューに全てを賭けていた。その為に彼は毎日ジムに通う、眼鏡をコンタクトに変える、流行りのものを調べるなどやれることは全てやった。

 

 万全の体制で望む高校デビュー・・・彼にはもはや自身しかなかった。そして彼はいよいよ校門をくぐった。


 私立竜が丘高校は昨年改築工事を済ませたばかりで、とても広く、真新しい校舎だった。雅道は勿論そんな初歩的情報はおろか、各教室の場所、教員の名前や人数、更には購買部の売り物の種類まですべてを知り尽くしていた。これも全ては高校デビューのためだ。 

 校舎に入ると、既に多くの新入生が校舎内にいた。ここで彼の第一の作戦が始まった。雅道はすぐに近くにいた女子生徒に話しかけた。


 「ごめん!ちょっといいかな?」

 

 女子生徒はすぐにこちらを向いた。


 「俺『空野雅道』って言うんだけどさ、ここの学校広くて教室までの道が全然わからくって(汗)。よかったら一緒に探してくれないかな?」


 勿論教室までの道がわからない訳ではない。雅道はこの学校のことを全て知り尽くしているのだから。これこそが彼の作戦『女子生徒と初コミュニケーション作戦』だ。あえて道がわからないふりをして女子生徒と親交を深めよう、という作戦だ。この作戦は無事に成功した、と彼はこの時思っただろう。しかし、彼は後戻りのできない選択をしてしまった。まさかこの時話しかけた女子生徒が彼の高校生活に大きな影響を及ぼすとはこの時の彼が知る由もない。




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