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ガラガラガラ・ドンッ・ガラガラ
かなりの時間がたった
馬車はかなり乗りごごちが悪く、さびた鉄の格子もがたがた言っていた、体が大分動くようになった聖羅がゆっくりと体を起こし格子の外の景色を見る。
「聖羅さん大丈夫?」
やさしく声をかけてくれる香奈
「大分いいみたい」
聖羅を支える香奈の手は震えたままだ、そっとその手を握り返した、見つめてぽろぽろの涙を流す香奈だった
不安で不安でしょうがない分陰気は馬車全体を覆っていた
すすり泣く声のみが馬車の中を流れていた
格子の外は建物が増え人の声がしてくる
しかし香奈達は何を言っているのか分らないようだ
「さっき私達をここに入れた兵士の人の言葉は分ったのに?何故?」
さらに不安が立ち込めた
馬車は大きな建物の中に入ったようだ
がちゃがちゃと鍵を開ける音がすると扉が開き、聖羅達を馬車に押し込んだ兵士が
「降りろ抵抗すればその場で切り捨てるぞ」
「@、#&”5%)&%#”$&&’()#%!」
「分かっておる、王の意に、逆らことは無い」
横の別の兵士と会話を居ているが香奈達は、横の兵士の言葉はやはり分からないようだった。
私にはわかった
「@、#&”5%)&%#”$&&’()#%!」(おい、王は無傷で連れて来いと!)
変な汗が背中に流れるのが分かった、建物の中から流れる威圧・威厳
兵士に案内され暗い通路を歩いている、ひ弱な女子供と思っているのか、枷をされないのが不思議には思った、
横を見ると、私にしがみつく香奈と有紀、傍から離れない春花が居た
『大丈夫』と言ってやりたかったがその保証は無いので黙って居た
一歩先に佳織と、取り巻きのさおりと真奈美と凜々子、さらに前に理事長の美智子と妹の副理事長の幸子、そしてメイド頭の松本佳苗が歩いて居る、11人の足取りは重い
通路から出ると一気に視界が広がった
天井と後ろ上部はガラス張りで日の光が差している
中央には綺麗な泉があり蓮の花に似た植物が浮いていて、とても綺麗な室内庭園だった
しかし、それに似使わない声と悲鳴が建物内に響き渡っている
『ぎゃー』
『ぐぇっ!』
『ぎゃっ!ゆるしてぇ~痛い~』
『たずげでー』
「何?これ・・・」
皆蒼白になった
悲鳴は、泉の向こうに大きな壁があり、その向こうから聞こえていた
さらにその向こう正面の5段ほどの階段の向こうには豪華な椅子の上に優美な女性がひじをついてその声のほうを見ている
泉を囲むように大理石の綺麗な床がぐるっと囲んでいるのだが
その豪華さに相俟って、ぼろぼろの服をまとい、足に枷を付けた人たちがに壁に向かって並んで座っていた
皆表情は蒼白で目が泳いでいるものも居る
「順番が来るまで座っていろ!」
兵士がそう言って私達を座らせると抜刀したまま横に付いている
「此処はどこですか?」
私は兵士に聞いた、ギロッと睨まれたが
「此処は重犯罪者の断罪の間だ、王自ら鉄槌を下して下さる、心して待て!逃げようとしたらそのまま切り捨てるぞ」
「「「ひっ」」」
誰がが鳴いた
カタカタカタカタ
皆震えている
影になっていて気がつかなかったが、よく見ると泉の向こうの壁にに鉄の鎖が下がっており、
何人かがつるされて背中に鞭を打たれている
されている方はもう微動だにしていなかった
「聖羅さん、あ・・・あれ」
「うん、たぶんもう死んでるんじゃないかな?あの血の量からして」
ぎゅっと腕を掴んでくる香奈
「斬首」
そう聞こえたかと思うと、泉正面の壁の向こうでザシュという音が聞こえて、その後火柱が上がった
「ひっ」
周りで恐怖の声がする
半面、妙に落ち着いている自分が居た、周りを観察する
各罪人に一人から二人の兵士が付いておりどれも抜刀している
罪人は本当に悪そうな顔や底意地の悪そうな顔をしていて、皆拷問でもされたのだろうか傷だらけだ
正面の王と思わしき女性・・・見覚えがあるような
右に罪人名簿だろうか本を片手に刑を言い渡している男性、時折王が何か言ったことを書きながら刑を下しているようだった
左に豪華な剣を持ち控える少年、段の下には数人の護衛らしき兵士
順番がどんどん迫ってくると壁の向こうが見えてきた