3.
頬にアイシングはしているが、けっこう赤く腫れていた。
横で疲れて眠っている春花を見て、
「春花さんありがとう、1円でもためておきたいのに私のためにパンをありがとう。」
「町に出られたらなぁ」
聖羅は外出を許可されていない、休みもない、マスコミに知れるとまずいというのも理由の一つだ。半年前はかなり騒がれたから。
高台にある学校、店のある所まではバスで20分はかかる。
春花は、日曜日は基本休みだ、家族に会いに行たり、
中学の時の友人に会いに行っている。
聖羅は帰国子女で高校から日本で学んでいたため、この学校以外に友人も知り合いもいない。
学校にある売店では食事抜きの罰が下ると、聖羅にパンなど売ってはもらえなくなる。
外に出られない聖羅はどうしようもない。
しまいには最近現金も取り上げられて、本当に身動きが取れなくなっている。
春花がなけなしのお金で買ってくれる売れ残りの50円のパンがとてもありがたかった。
「そのうち死ぬかも・・・」
空き腹を少しでも紛らわせるため水を飲みながらつぶやいた。
「さて今日も行かなきゃ。」
みんなが寝静まった午前2時、聖羅は裏の林に忘れたように立っている祠に向かって行った。
ミッションスクールで高台全体を30年前から所有している「聖マリアンヌ学園」、ゆえに祠は誰もよりつかなく荒れ放題になっていた。
異変に気が付いたのは入学してすぐだった。
異様な気配と匂い、普通の人間にはわからないもの、聖羅も日本に来るまでは何も感じたことはなかった。
少し調べるとこの高台の林ではよく江戸時代以前頻繁に神隠しがあった。
数日後、数年後見つかった人もいるがほとんどが死んでいた。それも奇怪な姿で見つかっている。
江戸中期からは林に祠が立てられ定期的にお参りがなされた。
それからは殆ど無くなったと記されていた。
「定期的に封印がなされていたのね。」
聖羅はだまって祠に祈りをささげていた。
「私にこんなことができるなんてね。」
「文献では6月の夏至までの1週間祈りをささげ続けるって書いてあってけど、
今年も大丈夫かな?」
2年で、少しずつ手作業で修理をしていたが、お嬢さまの聖羅にできたことと言えば掃除と崩れたところに石を詰めることぐらいだった。
入学したとき、林に出かけた生徒が一人行方不明になり、聞くと毎年2人か3人行方不明になっていた。幸いにも数日後見つかって無事だったが、いなくなっていた間の記憶が無かった。
林は立ち入り禁止になっている。
それでも面白がって入る生徒はいて、毎年問題になっていたらしい。
祈りのことを園長先生に提案いたこともあったが、迷信じみたことなので取り合ってはもらえなかった。
聖羅が祈り始めてからここ2年はまだ林に入って神隠しにあったものは居ない。
「今年も明日が夏至」
祠まで歩いて15分、それほどでさほど遠くはないにせよ、疲れた体にはかなり堪えた。
「今年はまだ6月なのに熱いわ」
汗を拭きながら歩き、部屋にもどり短い睡眠を取った。