表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
居待ち月の夜に  作者: 峰丘 馨子
籠の乙女
52/88

第五十一話 再訪


 何故か、高天原の住民達は私を歓迎した。


 匂い袋捜しの折りに見かけた顔もあるようだったが、そうでない顔も多かった。そもそもこの住民達は、私と暁殿に対して冷ややかだったはずである。もしや、暁殿がいないから、態度を変えたのだろうか。そうであるなら、この歓迎ぶりは全く嬉しくない。


 「籠乙女の庭で演奏していたのは、お前さんだろう?」

 思いがけない言葉が、住人達の口から発せられた。


 「あれは良い音だった。実に晴れやかな気分になる」

 「もう一度聞きたいもんだね」

 と、皆が言う。


 篳篥の音は大きい。籠乙女の庭での演奏が、周辺に住まう神々の耳に入ったとしても、不思議では無い。彼等は、私の篳篥を聞いた感想を一通り言い終えると「暁に悪いことをした」と口にした。


 「橋姫がね、言いに来たんだ。『もう止めよう』って。私達は、もう十分あの子を責めた。あの子に全く関係の無いことで、理不尽に文句を言ったこともあった。酷いことをしたよ、私達は。その酷いことを、全部止めようって、橋姫が言うんだ。『口に触らなければ、それで良いんだ』って、そう言うんだ。素直に『ああ、そうしよう』と思えたのは、きっと、あんたの演奏を聞いたからだ」


 「母親が死んでしまって、あの子だって辛かったろうに。可哀想なことをしてしまった。思えば、あの子が我々に危害を加えたことは、一度も無かった。あんな目に合いながら、一度も。我々が気付かなかっただけで、優しい子だったのだね。君の演奏を聞いて、我々も優しくなれた気がするよ。ありがとう。これでもう、あの子を苦しめずに済む」


 そう話す住民達の顔は穏やかだ。きっと、彼等と暁殿の間に出来た溝は、決して浅くは無い。けれど、その溝が埋まるまで、さほど時間はかからないだろうと、私はおもった。


 私が籠乙女との再会を望んだ一番の理由。私はそれを彼女に手渡した。


 「これ、もしかして……」

 「碁盤と碁石です。私は二つもっているので、片方を貴女に」


 彼女には、私がもともと持っていたものを譲り、私の手元には、良成の遺品として持っていたものを残した。


 「紙で代用した時より、線が多いわね。それに、碁石が凄く綺麗だわ」

 新品でないのが申し訳無いと思っていたのだが、喜んでいただけたようなので、良しとしよう。

 

 「貴女が碁盤を持っていれば、私が訪ねた時、また対局出来ると思いまして」

 「ええ、ええ。いつでも遊びに来てちょうだい。もちろん、今日も遊んでいってくれるのよね?」


 皆が心配するので長いは出来ないが、ちょっとくらい大丈夫だろう。私は彼女と再戦した後、篳篥を演奏。籠乙女や、篳篥を聞きに集まった住民達に見送られ、私は都へと戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ