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失意
「白――。」それ以外にこの状況を表す語彙を、僕は持ちあわせていなかった。初めて来た、見たこともない場所。しかし戸惑いはない。ここが何処か、なぜここに来たのかを知っているからだ―――――ここは死後の世界。どうやら僕は自殺に成功したようだ。
僕の家庭は一般の家庭に比べてやや貧しかった。衣食住に困ることはなかったが、ゲームや漫画等の娯楽はほとんど買ってもらえなかった。だが親は優しかったし、面倒もよく見てくれた。だから不幸だと感じたことはなかった。
中学からは部活でサッカーを始め、部活にうつつを抜かし勉強を全くしてこなかった僕はスポーツ推薦でサッカーの強豪校に進学。高校でもキャプテンとして活躍に活躍を重ね、私の順風満帆なサッカー人生は、クリスマスを過ぎてもなお成績の伸び悩む受験生に、卒業後にサッカー選手になれと神様が言っているのだと確信させるのに十分であった。
確信した翌日に交通事故で両足を失うとも知らずに。