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異能×屍 -終末における俺の異能の有用性について‐  作者: ペリ一
輪生の章

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第7話

この度、初レビューを頂きました!

ありがとうございます!






「問題は食料、か……」


 掘っ立て小屋の粗末な机の上で必死に帳簿に何かを書き込む男__北野。


「異能を使った漁業……いや、異能に依存し過ぎるのはまずい……だが頼らなければ今はやっていけないのは事実、か」


 どうしようもない現実に頭を悩ませつつも思考は止めない。


 ガサゴソと生存する生徒達のリストを取り出すと、それを見ながら再び帳簿へ何かを書き込み始めた。


「……都合よく、豊饒を与える異能、なんてのがあれば良かったんだけどね」


 だがそんな異能はこの場はおろか……

 これまでの歴史上にすら存在しなかった。


 植物の成長を促進する異能や植物を巨大化させる異能は存在した。


 が、その対価として相応の栄養素が要求されていた。



 その為促進させる異能や巨大化させる異能が行使された土地はやがて痩せ細り、砂漠化してしまったという例が幾つも存在する。


 だからこそ、青葉の異能は熱心に研究されていたのだ。


 おそらく異能界初の、栄養素を生み出す異能であったから。



「……まぁ実際はこんな状況にでもならないと役に立たないような異能だった訳だけど、ね」



 はぁ、と一つ溜め息をつくと名前や業務の内容が書かれたページをビリ、と破り小屋を出る。



「あまり根を詰めてやると良くないですよ」


 扉の前で待機していたのだろうか。

 女子生徒がこちらを心配そうな顔で見ている。

 いつの間にか秘書的な役割に収まっていたその生徒に先ほど破り取ったページを渡す。


「今後の食料確保の計画が書いてある……詳細については生徒代表同士の会議で決めてくれ……僕は少し寝る」


 そう言うと再び小屋の中へと戻っていった。



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「日本、か」


「はい、そうです」


「リーダーはどんな人間だった?」


「まぁなんというかハンサムな感じの……」


「容姿なんかどうでも良いんだよッ!」


 暗い室内、豪華な装飾を身に纏った青年が中年男へ怒鳴る声が響いた。


「異能だよ異能。行使してる所は確認できなかったのか?」


「そ、それが……貧相な小屋で何やら書類を作ってる事以外は何もしていなくてですね……」


「……ッチ。ソイツ、本当にリーダーなんだろうな?」


「確証は、そ、そのあるといえばあるし無いといえば…」


「あぁ、もういい。もういいよ。下がってろ」


 鬱陶しそうにその中年男を手で追い払うと、今度は虚空へ向け話しかける。


「おい、ハオラン。居るか?……いや、居なくても聞こえてるだろ?そうしろと指示したはずだ」


 だがその問い掛けに答える声は無かった。


「……クソが。どいつもこいつも自分勝手過ぎるんだよ……」


 明らかに怒気を纏わせる青年。


「ど、どうしましょう?」


「どうするもクソもあるか___いいだろう、俺が直々に出向く」


「い、移動はどうするおつもりで?」


「……クソが!おいハオラン!!!さっさと出て来い!!!」


 やはりその問い掛けに答える声は無い。


「……おい、確かあの拷問好きのキチガイ女が今転移系の異能者を確保してたよな?……回収しに行くぞ」


「え、あ、あの……」


「……何だ?何か言いたいことでも?」


「お、おそらくもう壊れて 「あぁアレ?もうとっくの昔に壊しちゃった」 ひぃ!?」


「……ステファニー。アレは俺が作る予定の国に必要な人材だと言ったはずだが?」


 扉を蹴り開け入ってきたその女__ステファニー・ボードインは、見下すような視線を青年に向けながら笑った。


「何言ってんのよ。必要なら操れば良いじゃない。死体は流石にとってあるわよ」


「転移系の異能はゾンビになると座標調整が困難になると言っただろッ!!」


「あらぁ、初耳」


 うふふ、と普通の男性であれば一瞬で魅了されてもおかしく無いような蠱惑的な笑みを浮かべるが、青年はそんな事を意に介さず言葉を続ける。


「だいたいお前は単独行動が多すぎる!少しは俺の指示を聞け!……ハオラン!お前もだ!」


「あらぁ?心配してくれるなんて嬉しい」


「……クソが。もういい……ジョゼフを呼べ。ハオランに強制的に念話を届けさせる」


「ジョゼフならまだあのライブハウスに居ると思うわよ」


「だから呼んで来いと……あ、おい!待て!」


「じゃあ日本に行く事になったら教えてねぇ。新しい玩具が欲しかった所なの」


 青年の制止の声も虚しくステファニーは部屋から出て行った。


 誰一人として協調性を持ち合わせていない。


 青年は自分の事を棚上げしつつ天上を仰ぎ見た。


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「よう青葉。良い朝だ。ちょっとジョギングにでも行かねぇか?」


 早朝。外で日光を浴びながら敷いたシートの上であぐらをかいていた俺に執斗が声をかけてきた。


「無駄なカロリー消費は控えたいんだが」


「何だよつれねぇな……生活習慣病にかかっても診てくれる医者はいねぇんだぞ?」


「……まぁ一理ある、か」


 正直面倒臭くて仕方が無いがたまにはこういうのも良いだろう。


「よしよし、そう来ねぇとな。柚子は一緒にやってくれねぇし赤嶺さんは体力が化け物過ぎてついていけなかったし……ま、んな事は良い。行くぞ」


 赤嶺さんを一度誘ったのか。

 勇者すぎる。


 心の中で執斗の評価を少しだけ上げ、走り始めた。



「……救世主さんは今の生活、どう思ってる?」


「だからその呼び名……はぁ……どう、って?」


「そのままの意味だよ。不満があったりはするか?」


 不満。


 漠然とした不安なら常々感じているが、こんな世界になってしまったのだ。

 それに関してはどれだけ安全が保障された場所にいようと無くなる事はないだろう。


 そう考えると……


「不満は、無いな」


「……そうだよな。……俺はさ、この生活をある種の理想だと思ってるんだ」


「理想……」


 理想の生活か。


「……そうかもしれないな」


「だろ?だから前までは二人だけで寂しさを感じる事もあったけどよ。お前等が来てから結構楽しいんだ……二人とも弄り甲斐抜群だしな」


「赤嶺さんにいつか斬られるぞ」


「はははは!」


 本当に楽しそうに笑う。

 青葉はその笑みを眩しそうに眺めていると……視界の隅に、チラリと何かが映った。


「……ん?何だアレ」


「あ?……え?どれの事だ?」


「アレだよアレ。…もしかして人が倒れてるのか?」


「マジかよ……しゃーねぇ、行くぞ」


 言うが早いか執斗は既にその場所へと駆け出していた。


 それに釣られて青葉も慌てて駆け出す。




 そして二人が到着した場所には。


 倒れたまま動かない人間と


 その人間へじりじりと迫る、屍の姿があった。



「マジかよ……やれるか?救世主さん」


「……やるしかねぇだろ」



 サプリのような物を口に放り入れる青葉と倒れた人間を眺めながら執斗は。


 停滞していたナニカが唸りをあげながら動き始めるような__そんな感覚を抱いた。

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