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異能×屍 -終末における俺の異能の有用性について‐  作者: ペリ一
輪生の章

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第2話

 俺が決心をしてから数時間後。


 赤嶺は外に食糧確保に出かけ、暇になった俺はこの仮住まいの中を探索していた。


 ギシ…  ギシ…


 軋む階段を上り、二階に到着する。


「この家、屋上無いのか…」


 分かりきっていた事ではあったが、俺は改めてその事実を確認し、落胆していた。


「…人間として生きる、とは言ったものの具体的に何をすりゃいいんだろうな」


 はぁ、と息を吐き、その場に座る。


 …家族で住んでいたのだろうか。

 自分が今もたれかかっている扉の向かいの部屋…

 そこに見える幼児用の玩具を見つめつつ、ぼんやりと考える。


「…父さんと母さん元気かな」


 薄らと考えはしていた事が頭を過ぎる。


「…」


 俺の両親は所謂、放任主義というやつだった。

 共働きでそうせざるを得なかったというのもあるのかもしれない。


 とは言え愛情が無かったか、と言われればそんな事はなかった。

 人並み…という言い方はアレだが…には愛情を注いでくれていたし、進路やら何やらの話も真摯にしてくれた。


 感性も一般的だった。


 そう。一般的だった。


 だからこそ育ててきた息子が得体のしれないモノだと分かった時、恐怖や嫌悪を抱いたのだろう。


 よくあるタイプの異能なら良かった。

 ただ俺の異能は当初正体不明であった。

 だから俺の近辺で何かおかしな事がなかったか、等の聞き取り調査が行われたらしい。

 そのせいである事無い事、噂をたてられた。


 両親はその事を真に受けたのかもしれない。

 それともその心無い中傷に心を痛め、ついにはおかしくなってしまったか。


 どちらにせよ、俺は入学が決まってから両親には会っていない。


 両親が俺に会いたがらない、という事に関して悲しみ、むしょうに会いたくなる。

 そんな時期もあった。


 だが今となっては自分なりに納得しているのだ。

 もう関わらないのが親の為だ、と。


 ただ、願わくば___


「青葉ぁ!」


「うおっ!?あ、赤嶺さんどうしt」


「幽霊!幽霊が…!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーー


「なるほど」


 軽い錯乱状態の赤嶺をなんとか宥め、何があったか詳しく聞いた。


「叩き切ってやったし暫くは出てこれないはずではあるんだけど…」


 幽霊を叩き切るとはどういう事なのか。

 というかゾンビをあれだけ狩りまくっておきながら幽霊への反応が初心うぶすぎる。


 …いやまぁ、初心な女子なら咄嗟に剣を振るう事なんてのはありえないのだが。


 とにもかくにも赤嶺の話をまとめると、こうだ。



 やっぱり青葉の分の食料も確保してくる、と俺の制止を無視して先ほどのコンビニに戻った赤嶺。


 コンビニで食料を物色していると、ふと背後に気配を背後に感じる。


 そして振り向いた先には半透明の男が立っていた。


 驚き思わず背負っていた剣でぶった斬ると、その半透明の男は苦悶の表情を浮かべ消失した。


「幽霊なのに物理攻撃が効いたのか……」


 その話を聞いた感想としては。


 ……異能じゃね?

 というシンプルなものだ。


 赤嶺は混乱していてその考えに至れていないようだが、まぁ時間と共に冷静になってすぐその考えに思い当たるだろう。


「……よくよく考えると、多分異能よね」


 冷静になるの意外と早かったな。


「だろうな。ただ、該当するような異能を俺は知らない」


 一瞬思い当たったのが透明化関連の異能だが、その場合その幽霊は死体としてその身を晒す事になるはずだ。


 となると、機密とされている異能か、新種の異能か。


「どちらにせよ一介の学生である俺が知り得るモノではない、か…」


 とにかく、死体が出ていないのであればその異能者は生きている可能性が極めて高い。

 そして斬られた恨みを晴らしにくる可能性も…かなり高い。


「晴らしに来たなら殺せばいいのよ」


 なんで赤嶺さんはそう発想が世紀末的なんですかね?

 いやもう世紀末ではあるんだが。


 どのタイミングかは知らないが、彼女の中で何かが吹っ切れたんだろうな。

 明らかに人格が過激になってるし。


「…とりあえず、今夜から寝る時は交代制だな」


「分かったわ」


 …目標も定まってないタイミングで謎の敵(?)の登場か。

 厄介な事になってきたな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーー


「ぐ、あ……畜生、いきなり斬るなんてよ……あんのクソアマ……ァ!」


 あまりの痛みに悶絶し、ベッドから転がり落ちる。


「……がぁ!?」


 落ちた衝撃で患部が刺激され更なる激痛が彼を襲った。


「う、ああ………畜生!!おい!柚子!!助けてくれ!!」


 男が鬼の形相で叫ぶと、ドタドタと慌てたような足音が近付いてきた。


「ど、どうしたんだい!?僕の結界は君みたいなイレギュラーでもない限り破れな…」


「違う……俺の霊体がぶった斬られたんだよ……あぁ、痛ぇ……」


 その男の額には冷や汗が浮かんでおり、息も絶え絶えであり、現在でもかなりの激痛が斬られた箇所を駆け巡っているようだった。


「不味いな……救急セットを取ってくるから君はそこで安静にしておくんだよ!」


 そう言い駆け足で部屋を去っていった少女をチラリと見、少し申し訳なさそうな顔をする。


(俺が一方的に押しかけたってのにな……なんでそこまでするんだか)


 フッ、と過去の出来事が再生される。


(……んだよコレ。走馬灯見るにゃまだはやいだろうが)


 再生され始めた走馬灯を頭を振り無理矢理打ち消す。




 調子に乗って霊体に実体を持たせた途端、このザマだ。


 だが久々に自分達以外の生存者……しかも異能者らしき者に会ったのだから、少しくらい羽目を外したっていいんじゃないのか。


 いやまぁ結果は失敗だったという事は変わりはしないのだが。



 そんな事を考えていると、ガチャリと再びドアが開く。


「患部を見せてくれるかい?病状が良く分からないからまだ何とも言えないが、応急処置程度なら出来るはずだ」


 少女はそう言うと応急箱をコトリ、と起きその男の着ているTシャツを脱がす。


「……ゲホッ」


 普段であればこの男はからかいの言葉の一つや二つ、かけていた所であろう。

 だが流石に罪悪感と激痛でそんな気は起きなかったらしい。


 ただぐったりとその身を少女に預けている。


「……」


 男はそこで、自分の視界が段々暗くなっている事に気が付いた。


(あ、やべ、気絶……)


「まずい」と思うも数瞬の後に男の思考は真っ黒に塗り潰され、意識は暗転した。





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